毎年開催される、世界最大級のモバイル技術の見本市「MWC Barcelona 2022」(Mobile World Congress)を主催するGSMA(GSM Association)は、2月28日に開幕するバルセロナでの展示会において、一部のロシア企業の出展を禁止することを明らかにした。
しかし、この記事の執筆時点では、通信事業者団体であるGSMAはまだロシアのプレゼンスを認める意向だ。
米国時間2月24日早朝にウクライナに侵攻したロシアのMWCへの出展は、GSMAによって一部制限されるという。
本稿執筆時点では、空、陸、海からの砲撃に続いて、ロシアの戦車と武装勢力がウクライナの首都キエフに迫っていると報告されている。
GSMAの広報担当者は、通信キャリアを含むすべてのロシア企業のMWCへの参加が禁止されるかどうかについては明言を避け、Reuters(ロイター)が先に報じた、2022年のイベントにはロシアのパビリオンはないとする声明を参照するよう促した。
「GSMAは、ロシアに対する国際的な制裁措置に引き続き協力する意向です」と広報担当者は付け加えた。
GSMAのウェブサイトに掲載された声明の全文は以下の通り。
GSMAは、ロシアのウクライナ侵攻を強く非難します。状況は刻々と変化しており、各国政府がロシアに対してより広範な制裁を検討していることも理解しています。このような新しい状況に鑑み、また悲劇的な人命の損失を考慮すると、この状況下ではMWCは重要ではないように思われます。MWCは、モバイルエコシステムを招集し、接続性によって人々、産業、社会の繁栄を確保する方法と手段を進歩させるというビジョンを持つ、人々を1つにするイベントです。
GSMAは、今回の事態に起因するすべての政府の制裁および政策に従います。MWC22にはロシアパビリオンはありません。イベントのセキュリティは常に見直され、情報が出るたびに調整されます。
通常、MWCの国別パビリオンでは、多くの中小企業が密集して展示される。
だが、通信事業者のVEON(ヴェオン、旧VimpelCom Ltd.)などロシアとつながりのある企業を含む大規模な出展者は、GSMAにお金を払うことにより展示フロアの一等地を独占的に占めることができるかもしれない。
そしてGSMAは、制裁措置が強制されない限り、こうした裕福なロシア企業を締め出す用意はないようだ。
欧州理事会の外務理事会は現在、ロシアを対象とした第二次制裁措置について合意を得ようとしている。この制裁措置は「不可欠な」技術へのアクセスを含む、ロシア経済の戦略分野を対象とすると、欧州委員長は25日に述べている。
#FAC | EU foreign affairs ministers will meet in Brussels today to proceed with the adoption of further restrictive measures in response to Russia's military aggression against Ukraine.
The new sanctions against Russia were agreed yesterday at the special #EUCO.
More info
— EU Council (@EUCouncil) February 25, 2022
「私たちはロシアの産業界を、未来を築くために今どうしても必要な技術から切り離す必要があります」とUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォンデアライエン)欧州委員長は述べている。「私たちの措置は、同国のエリート層が最もお金を稼ぐ重要な分野で、ロシアの技術的地位を弱めることになるでしょう。これは、ハイテク部品から最先端のソフトウェアに至るまで多岐にわたります。これはまた、将来的にあらゆる分野でロシア経済を深刻に衰退させるでしょう」。
GSMAのCEOであるJohn Hoffman(ジョン・ホフマン)氏は米国時間25日、Reutersとのインタビューで、ヨーロッパでの戦争勃発を受けてMWCを中止または延期する計画は今のところないことを確認した。
制裁についてホフマン氏は「一握り、数社」のロシア企業とその幹部が参加を禁止されると述べたが、制裁リストは変化し続けているとし、名前の提示を避けた。
「私たちは国際的な制裁措置に導かれており、制裁リストに記載されている企業もいくつかあるということで、それらの企業は参加禁止となります」と同氏は付け加え、GSMAは米国の制裁措置やその他の制裁措置に厳格に従うと述べた。
米国はすでに、厳しい輸出規制を含む一連の制裁を発表しており、これによりロシアの世界的な技術へのアクセスが大幅に削られることになると述べている。
Reutersによると、米商務省が発表した規制は「海外直接製品規則(Foreign Direct Product Rule、FDPR)」の劇的な拡大に依拠しており、米国のツールを使って海外でハイテク製品やローテク製品を製造する企業は、ロシアに出荷する前に米国の許可を求めることを余儀なくされるという。
ただし、家電製品などの消費財、人道物資、飛行安全に必要な技術については、例外が設けられている。
また、Reutersの報道によれば、携帯電話などのコンシューマー向けコミュニケーションデバイスは、ロシア政府の職員や特定の関連会社に送られない限り、制裁の下で許可されているとのこと。
MWCに話を戻すと、この通信業界の見本市が近年、苦境に立たされているのは間違いない。
2020年2月、欧州で新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことを受け、同カンファレンスは全面的に中止された。
関連記事:MWCの開催中止が決定、主催者のGSMAが新型コロナウィルスを懸念
2021年の展示会は、例年の春先の開催から夏まで延期されたが、コロナ禍の影響が残っており、対面イベントの参加者はパンデミック前と比較して激減した。
2022年のカンファレンスは、MWC2021と同様に、対面セッションとストリーミングセッションの両方が利用できるハイブリッドショーとして提供される。
GSMAによると、2022年のイベントには183カ国から1800以上の出展企業と参加者を見込んでいるという。
画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch
[原文へ]
(文:Natasha Lomas、翻訳:Den Nakano)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/02/26/2022-02-25-mwc-2022-limits-russia/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Natasha Lomas,Den Nakano
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