マイクロソフトが1月に「Surface Duo 2」というモバイル端末を発売しました。OSはAndroid 11で、プロセッサーはSnapdragon 888。ふたつのディスプレイを搭載し、折りたたんで携帯できます。価格は18万4580円(8GB RAM + 128GB SSD)〜と、割と高めです。
折りたためるスマホといえば、サムスンの「Galaxy Z Fold」シリーズを思い出す人も多いかと思います。ドコモとauから発売されている最新モデル「Galaxy Z Fold3 5G」は、Surface Duo 2と同じくAndroid 11とSnapdragon 888を搭載。こちらは折り曲げられるディスプレイを搭載し、閉じた時に使えるサブディスプレイも備えていることが特徴。価格はドコモ版が14万2560円で、au版が15万8125円。
▲左がSurface Duo 2、右がGalaxy Z Fold3 5G。Surfaceは折りたたみ時は画面が隠れる
▲左がSurface Duo 2、右がGalaxy Z Fold3 5G。Galaxyはつなぎ目のない大画面を利用可能
「どうせ買うなら最先端のスマホが欲しい!」という人は気になるであろう、このふたつのデバイス。徹底的に使い比べてみました。
■スペックは近いが、コンセプトが異なる
まずは、基本スペックの違いを押さえておきましょう。
▼Surface Duo 2
[プロセッサー]Snapdragon 888 5G
[RAM(メモリ)]8GB
[ストレージ]128GB、256GB、512GB
[ディスプレイ]5.8インチ(1344×1892ドット)有機EL ×2画面
[アウトカメラ]広角(1200万画素/F1.7)+望遠(1200万画素/F2.4)+超広角(1600万画素/F2.2)
[インカメラ]1200万画素/F2.0
[バッテリー容量]4449mAh
[閉じた時のサイズ]145.2×92.1×11.0mm
[開いた時のサイズ]145.2×184.5×5.50mm
[重さ]284g
▼Galaxy Z Fold3 5G
[プロセッサー]Snapdragon 888 5G
[RAM(メモリ)]12GB
[ストレージ]256GB
[メインディスプレイ]約7.6インチ(2208×1768ドット)有機EL
[サブディスプレイ]約6.2インチ(2268×832ドット)有機EL
[アウトカメラ]広角(約1200万画素/F1.8)+超広角(約1200万画素/F2.2)+望遠(約1200万画素/F2.4)
[インカメラ]約400万画素/F1.8
[カバーカメラ]約1000万画素/F2.2
[バッテリー容量]4400mAh
[閉じた時のサイズ]約158×67×14.4mm
[開いた時のサイズ]約158×128×6.4mm
[重さ]約272g
Surface Duo 2は、開くと2画面が現れる仕組みで、折りたたむと画面が隠れます。画面が見えるように反対向きに折りたたむこともできますが、片手では操作しづらく、スマホというより “折りたためるタブレット” といった印象です。
▲Surface Duo 2は開くと8.3インチ相当のスクリーンが使える
▲画面を外向きにして折りたたむこともできるが、背面のカメラが出っ張っているため、分厚くなる
▲折りたたんでいても時刻を確認できたり、着信がわかったりする
一方、Galaxy Z Fold3 5Gは、折りたたみ時の横幅は67mmで、サブディスプレイがあり、片手でも操作できることが利点。おサイフケータイにも対応し、“折りたたむとスマホ、開くとタブレット” という趣向の端末です。
▲Galaxy Z Fold3 5Gは折りたたむとフツーのスマホのように操作可能
▲約7.6インチのメインディスプレイは、右上に搭載されたインカメラも目立たないように隠れる仕組み
■Galaxyはウェブページが大画面に最適化されて表示
まずは、フルスクリーン表示でのWebの見やすさを比べてみました。
▲左がSurface Duo 2、右がGalaxy Z Fold3 5G。Galaxyのほうが画面専有率が高く、画面幅に最適化されて表示されることも利点
Surface Duo 2は独立したふたつの画面を搭載しているので、左右に開いてフルスクリーン表示にすると、中央で分断されてしまいます。しかし、本体を横向きにして上下に開いて表示すると、分断はさほど気にならず、実質8.3インチの広い画面でWebページを閲覧できます。
Galaxy Z Fold3 5Gは、フレキシブルディスプレイを搭載し、折り曲がる部分の凹みも気になりません。画面サイズは約7.6インチで、Surface Duo 2よりもひと回り小さいのですが、ベゼルが細く、画面占有率が高いことが特徴。また、多くのWebページはGalaxy Z Fold3 5Gの画面に最適化されるので、縦向きでも横向きでも見やすく感じました。
▲Galaxy Z Fold3 5Gはサブディスプレイでウェブが見られることもアドバンテージ
■ドキュメントの作成・編集はSurfaceのほうが効率的
続いて、Excelファイルを編集してみました。
▲左がSurface Duo 2、右がGalaxy Z Fold3 5G。Surfaceには、Surfaceに最適化されたOfficeアプリがプリインストールされている
Surface Duo 2は、Office、OneDrive、Teamsなど、マイクロソフトのアプリがプリインストールされていて、初期設定時にMicrosoftアカウントの登録が促され、すぐに使えるようになっています。
ExcelやWordを使ってみたところ、スピーディに起動でき、サクサクと作業できました。Android向けの通常のアプリとは異なり、Surface Duo 2に最適化されているようで、初期設定のままで見やすいように表示されました。半開きにして卓上に置き、PCライクに操作できることも利点でしょう。
マイクロソフトのアプリはGoogle Playストアで配信されており、Galaxy Z Fold3 5Gでも使えます。メールなどで共有されたファイルを見たり、修正したりといった作業はスムーズに行える印象。しかし、イチからドキュメントを作成するとなると、画面が狭く感じられました。
なお、Surface Duo 2、Galaxy Z Fold3 5Gともに、別売のペンでの入力に対応しています。それぞれ、ただ文字や絵を描くだけでなく、便利な機能を備えており、あったほうが、より活用できそうです。
▲Surface Duo 2は「Surface スリムペン 2」に対応。ペンのトップをノックすると「OneNote」が起動したり、スクリーンショットが撮れたりする設定が可能
▲画面が広いので、紙の手帳のような感覚でペン入力ができた
▲Galaxy Z Fold3 5Gは「Sペン」に対応し、多彩な用途に活用できる
■マルチタスク操作はSurfaceがシンプルで使いやすい
Surface Duo 2は、ふたつのディスプレイで異なるアプリを起動して、同時に使えます。どちらの画面も見やすく、Webを見ながらメールを作成したり、ドキュメント作成中にカレンダーをチェックするといったマルチタスク操作がスムーズに行えます。
▲Surface Duo 2はそれぞれの画面で異なるアプリを起動でき、連携した使い方も可能。どちらかの画面を中央にドラックすると、フルスクリーン表示に切り替わる
スマホの操作において、3つのアプリの同時起動が必要になる場面はそんなにないはずなので、Surface Duo 2の2画面は非常に使いやすいというか、理にかなっているように思えました。
Galaxy Z Fold3 5Gのメインディスプレイは最大3つに分割して、異なるアプリを同時に使うことが可能。アプリの表示エリアは直感的なスワイプ操作で調整でき、分割画面の上に、さらに電卓などのアプリをフローティングで表示させることもできます。
▲Galaxy Z Fold3 5Gは3分割表示が可能。それぞれのアプリの表示範囲は境界線を動かして調整できる
機能としては、Galaxy Z Fold3 5GがSurface Duo 2を上回っていますが、実際には3つのアプリを同時に使う機会は少なく、それぞれのアプリの表示エリアも狭くなってしまいます。フルに使いこなせる人は限定的かもしれません。
■電子書籍はSurface、電子雑誌はGalaxyが読みやすい
▲左がSurface Duo 2、右がGalaxy Z Fold3 5G。どちらも電子書籍を読むには適している
画面が大きい両デバイスは、電子書籍との相性が良さそうです。「Kindle」アプリを用いて、読みやすさを比べてみました。
▲Surface Duo 2は、紙の文庫本のような感覚でページをめくれる
Surface Duo 2は文庫本に近いサイズで、実際に紙の本を読んでいるような感覚でページをめくって読み進められます。
Galaxy Z Fold3 5Gは、2画面ではなく、境目のない広い1画面に表示して読めることが利点。半開きではなく、完全に開いてフラットな状態で読むのが良さそうです。
▲Galaxy Z Fold3 5Gは広い画面に1ページずつ表示するのが◎
ここに載せた写真だけを見ると、Surface Duo 2のほうが使いやすく見えるかもしれませんが、電子雑誌や電子コミックを読むには、Galaxy Z Fold3 5Gが適しているように感じました。
■Surfaceは卓上の動画プレーヤーとしても最適続いて、「YouTube」や「Netflix」などの動画を見比べてみました。
▲Surface Duo 2は、自由な角度で立てて動画視聴を楽しめる
半開きにして、卓上に立てて視聴できるのが便利なSurface Duo 2。5.8インチのディスプレイは、数値を聞くと小さく感じますが、アスペクト比が13:9なので画面が広く、「Netflix」の映画や海外ドラマなどを見るにはちょうどいい印象。ベッドのそばのサイドテーブルに置き、横になって見たいときに重宝しました。
▲動画を見ながら、他のアプリを起動して使うことも可能
フレキシブルディスプレイを搭載するGalaxy Z Fold3 5Gは、開くと大画面で楽しめて、半開きで画面を分割し、他の作業をしながら視聴することも可能。
▲Galaxy Z Fold3 5GでYouTubeをフルスクリーン表示にした例
ただし、7.6インチ画面でフルスクリーン表示にすると、左右が大きくトリミングされてしまったり、分割画面では動画の表示サイズが小さくなってしまったりと、不満を感じたりしました。「Netflix」は分割画面に対応しないなど、アプリによって使い勝手に差が生じることも気になりました。
▲半開きにしてスタンドにすると、動画の表示サイズはかなり小さくなる
■カメラの使い勝手はGalaxyに軍配
Galaxyはカメラの性能にも定評があり、Galaxy Z Fold3 5Gにもハイスペックの3眼カメラを搭載しています。そしてSurface Duo 2も負けず劣らずのスペックのカメラを搭載しています。
最後にカメラの使い勝手と撮影画質を比べてみました。
▲左がGalaxy Z Fold3 5G、右がSurface Duo 2。どちらもトリプルレンズカメラを搭載。Surfaceのカメラのほうが出っ張っている
Surface Duo 2は閉じたままでは撮影できず、開く必要があります。片手では撮影できず、突然撮影したい場面に遭遇した場合はシャッターチャンスを逃してしまうかもしれません。撮影した画像をすぐに確認できるのは便利でした。
▲Surface Duo 2のカメラで撮影した画像はすぐに左側のディスプレイで確認でき、編集したり、共有したりできる
▲Surface Duo 2で撮影
▲Surface Duo 2で撮影
▲Surface Duo 2で撮影
Galaxy Z Fold3 5Gは閉じたままでも3眼カメラで撮影できることが利点。開くと大画面で細部まで確認でき、半開きにすると画面がモニターと操作パネルに分割されるという便利な独自機能も備えています。カメラアプリの使い勝手では、圧倒的にGalaxy Z Fold3 5Gに軍配が上がります。
▲Galaxy Z Fold3 5Gは折りたたんだ状態でもメインカメラを起動でき、片手でシャッターが切れる
▲半開きで撮影する場合は、自動でモニターと操作パネルの分割表示になる
▲Galaxy Z Fold3 5Gで撮影
▲Galaxy Z Fold3 5Gで撮影
▲Galaxy Z Fold3 5Gで撮影
画質はどちらもキレイに撮れましたが、暗い場所での撮影性能がGalaxy Z Fold3 5Gが上回っているように感じました。
■結論は、どちらも甲乙つけがたく…
Surface Duo 2、Galaxy Z Fold3 5Gのどちらも、使って楽しい! と思えるデバイスでした。ちょっと高いですが、スマホの用途をグ〜ンと広げてくれそうです。どちらを選ぶべきかは好みで分かれるでしょうが、Surfaceはこれ1台で使うのではなく、電話やメッセージ、決済などに使うスマホと組み合わせて、2台目として使うのがオススメ。Galaxyは、これ1台で事足りる万能スマホとして重宝すること請け合いです。
>> Galaxy
<取材・文/村元正剛(ゴーズ)>
村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/437230/
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