古典SF映画の傑作『地球最後の日』に登場する宇宙船を製作【達人のプラモ術<宇宙船アーク号>】

【達人のプラモ術】
ペガサスホビー
1/350 THE SPACE ARK(宇宙船アーク号)
01/03

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

今回からは、みんな大好きSF映画に登場する宇宙船を製作。SF映画の宇宙船というとスター・ウォーズやスタートレックのリアルなメカを思い浮かべるところですが、今回は古典SF映画の傑作『地球最後の日』に登場する“白銀のロケットアーク号” 銀色に輝く流麗なスタイルのロケット型宇宙船をジオラマで再現していきます! 某漫画家の言葉を借りれば『宇宙の色は銀の色ぉ!』的なセンス・オブ・ワンダーを目指します!

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■憧れは白銀色のロケット!

今回製作するのはフィリップ・ワイリーとエドウィン・パーマーの共著で古典SF小説の傑作『地球最後の日』(1933年)に登場する人類最後の宇宙船アーク号であります。子どもの頃に読んだのは講談社版の『地球さいごの日』でした。

外宇宙から飛来した遊星が地球に衝突することが分かり、人類最後の人間40人が宇宙船で地球を脱出。破壊された地球の軌道に収まった遊星の衛星“新惑星”に新天地を求めて飛び立つというストーリーです。

1951年にパラマウントが映画化。SF映画の巨匠プロデューサー、ジョージ・パルのSF三部作のひとつとして公開され、アカデミー賞の特殊効果賞を受賞しています。ちなみに残り二作は『月世界征服』と『宇宙戦争』でした。

60年代、国内のTV放映で観たSF映画(当時は夏休みとかお正月になると必ず怪獣映画やSF映画を放映していた)。この時から達人は、どっぷりとセンス・オブ・ワンダーの世界にのめり込んでいったワケです。

で、小学生だった当時、叔父が誕生日に本を贈ってくれたんですよ。『豊臣秀吉』と『エイブラハム・リンカーン』『発明王エジソン』をね。でもですねぇ、すでにSFにのめり込んでいたこともあって、本屋でH・G・ウエルズの『宇宙戦争』と『透明人間』、そして『地球最後の日』に交換しちゃったんですねぇ(叔父さんすいません)。

『地球最後の日』の原作は、60年代に子供向けのジュヴィナイル版を除くと長らく翻訳版が発売されておらず、83年になって創元SF文庫から完訳版が発売されました。今回キットの製作に併せて読み直したのですが、やっぱり面白い。

地球への他の天体の衝突をテーマにしたSF小説は多く、映画でも『メテオ』(1979年)、『ディープ・インパクト』(1998年)、『アルマゲドン』(1998年)、邦画では『妖星ゴラス』(1962年)などがあります。ちなみに『メテオ』は、『地球最後の日』がベースになったと言われています。そして東宝SFの傑作『妖星ゴラス』は、達人お気に入りの作品です。

地球に他の惑星や隕石が衝突するという設定はSFでは古くからの定番ですが、『妖星ゴラス』では、質量が地球の6000倍もある妖星ゴラスとの衝突を避けるために南極にエンジン作って軌道を変えて逃げるという斜め上をいく発想がスゴい! ロケットに宇宙ステーション、さらに怪獣も出てくるし、ぜひ観ていただきたいSF巨編(ツッコミどころも満載)です。

 

■宇宙船といえば白銀の流線形ロケット!

映画で登場する宇宙船アーク号のデザインは、いわゆるロケット型。白銀色の流線形が実にカッコ良いのです。当時のSF映画に登場する宇宙船といえばロケット型のデザインが最先端でした。もしくは『禁断の惑星』(1956年)に登場する宇宙船C-57Dのような空飛ぶ円盤的なデザインのどちらか。

アーク号はロケットですが新惑星(映画ではザイラ)に着陸するために大きな主翼が付いています。こうしたロケット型宇宙船のデザインは第二次大戦でドイツが開発したV-2ロケット(世界初の弾道ミサイル)の影響が大きいのだと思います。

ジョージ・パルの出世作『月世界征服』(1950年)に登場するルナ号も、まさにロケット!なデザインですし、59年に公開された東宝SF『宇宙大戦争』に登場するスピップ号、62年公開の『妖星ゴラス』のJX-1鳳号とJX-2隼号もロケットスタイルでした。SF映画で宇宙船のデザインが大きく変わるのは、SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(1968年)からですが、この話は書くと長くなる(暴走する)のでまたの機会に。

▲ペガサスホビーがキット化している『月世界征服』に登場する月宇宙船ルナ号。銀色に輝く船体!もう文句なしのSFロケットであります。

 

■キットはジオラマ仕様

ペガサスホビーはSFモデルを中心に飛行機やAFVモデルを積極的にリリースしているアメリカの模型メーカーで、エリア51のUFOなんてキットも出しています。今回製作のアーク号は、打ち上げ用のカタパルトも付属しており、ジオラマモデルとして製作できます。

アーク号自体のパーツは17個、いゃあ実にシンプルです(笑)。

▲打ち上げ用のカタパルトを再現したジオラマベースを含めてもパーツは26点。実にシンプル

▲バキュームフォームで成形されたジオラマベース。塗装することでリアルな仕上がりになりそうだ。大判のタイトルプレートが付属する

ジオラマベースはバキュームフォーム(真空成型された薄い樹脂、ペナペナな卵のパックみたいなモノ)製で、地面と植物が一体で成型されており、そこにカタパルトを組む構成。これに「WHEN WORLDS COLLIDE」のタイトルプレートが付属しています。

▲アーク号とカタパルトを借り組みした状態。劇中での打ち上げ用カタパルトはもっと長い

劇中のアーク号は、ツルツルというか機体表面にパネルラインのようなディテールがほとんどありません。カーゴベイハッチと垂直尾翼のラダーのモールドのみです。

ただパーツの表面は随所にヒケ(エクボのような表面のヘコミ)があるので、パーティングラインと併せてパテを使いヘコミを均す修正が必要です。流麗なフォルムがロケットの命ですからね、表面処理大事です(笑)。

▲アーク号の機体各所にヒケがあるのでパテを使って修正する必要がある

 

■LEDで電飾モデリング

ジオラマである以外は実にシンプルなキットだけに、ちょっと物足りない感じです。そこでLEDを組み込んでロケットのエンジン噴射口を光らせることにしました。
LEDは市販の工作用のものをハンダ付けして使用しています。

▲エンジンノズルを発光させるため、使用した赤色LED。エンジンノズルに合わせて4点使用

▲市販の工作用で抵抗をハンダ付けする必要があるが工作は難しくない

▲LEDを発光させた状態

▲電源は9V電池を使用

▲電源はジオラマベース裏側に組み込む予定

▲胴体内側は、LEDの光漏れを防ぐために、つや消し黒で塗装

▲LEDを取り付けるエンジンノズル内側はフィニッシュシートのシルバーを貼ることで光漏れを防ぐ

▲配線は胴体下側から取り出して、ジオラマベースの電源に繋いでいる

*  *  *

というワケで今回のセンス・オブ・ワンダーはここまで。次回は銀色に輝くアーク号の塗装とジオラマベースの製作を進めていきます。お楽しみに!

 

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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