レプリカ世代のリターンライダーにおすすめの現行フルカウルマシン7選

久しぶりのブームと呼べる状況にあるバイク業界。旧車やレトロテイストのマシンも人気ですが、1980〜90年代のレーサーレプリカブームの頃にバイクと出会った世代には「どうせ乗るならフルカウルのレーシーなマシンがいい」と考えている人も少なくないでしょう。

ただ、1000ccや600ccクラスのスーパースポーツ(SS)と呼ばれるフルカウルマシンは、ハイパワー過ぎるエンジンと、前傾のキツいライディングポジションで、これを公道で楽しめる人は限られるはず。このクラスはレースのベースになっていることもあり、過激ともいえる進化を遂げているので、体力や反応速度の衰えた中年ライダーにはなかなか厳しいマシンです。

そこで、バイクに乗るのは久しぶりというリターンライダーでも、恐怖心をあまり持たずに楽しめるフルカウルマシンを集めてみました。当時、免許を取ったライダーの中には“中免”(普通自動二輪免許)のままという人も少なくないと思われますので、400cc以下のマシンを中心にセレクトしています。

 

1. カワサキ「Ninja ZX-25R」

毎年のように各メーカーがモデルチェンジを繰り返し、年々進化していたレーサーレプリカブームの頃を知る人におすすめしたいモデルの筆頭が、4気筒エンジンを搭載した「Ninja ZX-25R」です。“あの頃”は各社が4気筒モデルをラインナップしていましたが、現行の250cc 4気筒モデルはこのマシンのみ。

最高出力は45PSでラムエア加圧時には46PSを発揮します。フレームは同社最高峰のレースマシン「Ninja ZX-10RR」の設計思想を踏襲したもので、ショーワ製SFF-BP倒立フロントフォークを装備するなど、車体や足回りも高性能。フロントに荷重を掛けてコーナーに進入すると、クイックに向きが変わります。

そして、一番の魅力は4気筒ならではの排気音。公道を走る速度域でも4気筒の全開サウンドを楽しめるのはこのマシンくらいでしょう。

スタンダードモデルは84万7000円、クイックシフターなどを装備した「SE」は93万5000円となかなかの価格ですが、個人的には「SE」がおすすめです。コーナー進入でブレーキングしながらシフトダウンすると、ペダルを踏むだけでブリッピングしてくれる、そのレースのような高揚感がたまりません。

 

2. ホンダ「CBR250RR」

「Ninja ZX-25R」のライバル的な位置付けなのがホンダの「CBR250RR」。レーサーレプリカ世代には馴染みのある車名だと思います。

こちらは2気筒エンジンですが、「RRなのに2気筒!?」というなかれ。4気筒エンジンよりも低回転からトルクフルなので、250ccで公道走行するなら2気筒のほうが速いというのは当時から言われていたことでもあります。

最高出力は41PSですが、実際に公道で走ると、上まで回さなければならない4気筒よりも2気筒のほうが出足が鋭く、コーナーの立ち上がりでもこちらのほうが速いのでは!? と感じるシーンは多々ありました。

スタイリングも「CBR-RR」の名にふさわしい精悍なもの。シリーズに共通するスラントしたノーズとフロントフェイス、テールに向かって跳ね上がるようなラインがキレのある走りを予感させます。

右側2本出しマフラーもスタイリッシュで、高回転ではレーシーなサウンドを堪能できます。価格はグランプリレッドが85万4700円で、それ以外のカラーは82万1700円です。

 

3. ヤマハ「YZF-R3」

前出の2台と同じ250ccクラスには「YZF-R25」がありますが、個人的にヤマハでおすすめしたいのは同じ外観で320ccエンジンを搭載した「YZF-R3」。車検が必要なクラスになってしまいますが、2台を乗り比べてみると「R3」のほうが圧倒的に楽しいんです。

最高出力は「R25」の35PSに対して42PS。出力だけでなく低回転からトルクフルなので、出足が鋭く、しかも高回転まで気持ち良く回ります。この2気筒エンジンは320ccの排気量のほうがバランスがいいのでは!? と感じる完成度です。

デザインは「YZF-R」シリーズの共通のレーシーなイメージですが、ハンドル位置が低すぎず、中年ライダーにやさしいライディングポジションなのもポイント。外観はほぼ「R25」と共通ですが、「R3」は標準でラジアルタイヤを履いているのも、走りを楽しむならこちらを選んでほしいというメーカーの姿勢に感じられます。

価格は「R25」の66万8800円に対して68万7500円。2万円足らずの追加で、この動力性能が得られるならかなりお得だと思います。

 

4. スズキ「GSX250R」

スズキが250ccクラスに用意したフルカウルマシンが「GSX250R」。搭載されるエンジンは2気筒で、他社がDOHCなのに対してSOHC、最高出力も24PSとスペック的にはやや見劣りしますが、実は結構多くのライダーから支持を集めているバイクです。

理由は、レーシーな見た目でありながら乗りやすくフレンドリーな特性に仕上がっていること。峠を攻めるよりツーリングを楽しむことに軸足が移りつつある中年ライダーには適したモデルかもしれません。

56万9800円というリーズナブルな価格も人気の理由。ただ、個人的にはスズキのレーシングカラーであるトリトンブルーメタリックNo.2のカラーをおすすめしたいのですが、こちらは58万1900円となっています。

また、スズキの250ccには「ジクサーSF250」というモデルもあり、こちらもフルカウルを装備していますが、ライディングポジションがかなりツアラー的。ただ、エンジンは単気筒にもかかわらず26PSを発揮していて価格も48万1800円とリーズナブルなので、選択肢に加えてもいいでしょう。

 

5. カワサキ「Ninja 400」

「ZX-25R」の人気とともに再評価されているカワサキ車が、400ccの2気筒モデル「Ninja 400」です。最高出力が48PSと「ZX-25R」よりもパワフルで、車重も約16kg軽量なのに価格は72万6000円と安いのが支持される理由です。排気量が大きいので当然といえば当然ですが、250ccの4気筒よりも明確に速いので、パフォーマンスにこだわるライダーにはお買い得に感じられるはず。

スタイリングは「ZX」シリーズと同様にシャープなフルカウルをまとっていて、ハンドルもセパレートタイプですが前傾姿勢がキツくないので、街乗りからツーリングまで幅広く対応してくれます。個人的にKRT EDITIONのライムグリーン×エボニーのカラーが好みですが、価格がほかのカラーと変わらないのもうれしいところです。

 

6. ホンダ「CBR400R」

「Ninja 400」と同じく400ccの2気筒エンジンを搭載しているのがホンダの「CBR400R」。フルカウルに、CBRシリーズを象徴するデュアルヘッドライトを装備したレーシーなイメージの外観ですが、前傾はキツ過ぎず街乗りからツーリングまで対応できるポジションです。それでいてハンドルはトップブリッジ下にマウントされているので、アグレッシブな気持ちでライディングできます。

エンジンの出力は46PSと、この排気量としては特筆するほどパワフルではありませんが、日常やツーリングで使用頻度が高い低・中回転域では扱いやすさを重視していて、コーナーの先が見えにくい峠道なども走りやすい。

価格は84万1500円と安くはないですが、ワインディングだけでなく街乗りやツーリングまで幅広いシーンに対応できるので、それだけの価値のあるマシンだと思います。

 

7. ヤマハ「YZF-R7」

最後は、大型自動二輪免許が必要となってしまいますが、個人的にレプリカ世代のリターンライダーにおすすめだと考えているヤマハの「YZF-R7」です。

同じ名前でカリカリの4気筒エンジンを搭載し、750cc時代のスーパーバイク選手権に参戦していたマシンを憶えている人もいるかもしれませんが、今年発売された新型は2気筒エンジンを搭載。外観は明確に「YZF-R」シリーズのレーシングイメージを受け継ぎつつ、低回転からフラットなトルクを発揮する特性の688ccエンジンは非常に乗りやすい。スリムな車体で気負わずにライディングできます。

それでいて、運動性能はかなりのもの。ベースとなっているのは「MT-07」ですが、フルカウルをまとっただけでなく倒立式のフロントフォークを装備し、リアサスのリンクも見直すなど足回りも別物の仕上がりとなっています。

峠を走って気持ちいいのはもちろん、これからサーキットを走ってみたいというニーズにも応える完成度。これで99万9900円と100万円を切る価格を実現しているのは素晴らしいと感じます。

 

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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