<イヤホンレビュー>
完全ワイヤレスイヤホンという製品カテゴリで、常に高音質ブランドの一翼として語られ続けられてきたゼンハイザーから5月に発売された「MOMENTUM True Wireless 3」(実勢価格:3万9930円)は、同社による約2年ぶりのフラッグシップ完全ワイヤレスイヤホンです。
その間にゼンハイザーは、価格を抑えた派生モデルを多数投入してきましたが、「MOMENTUM True Wireless 3」は待ちに待った登場です。音質も進化し、そして再定義する最上位モデルとなります。新たに“アダプティブノイズキャンセリング”を搭載し、ワイヤレスでハイレゾ伝送が可能なaptX Adaptiveコーデックによる96kHz/24bit対応も果たしました。
それでは実機をレビューしていきます。
■上質過ぎる高音質の系譜
まずは進化点をチェックしていきましょう。
イヤホンとしての仕様変更は、そこまで大きなものはありません。ゼンハイザーが誇る“高性能TrueResponseトランスデューサー”と呼ばれる7mm口径のダイナミックドライバーは「MOMENTUM True Wireless 2」と同一。その上で、ユニット背面に空間を設ける“アコースティックバックボリューム機構”を採用した部分のみがアナログ設計としての差分です。
ゼンハイザーのイヤホン全体として見ると、この「MOMENTUM True Wireless 3」までに多数の派生モデルを経由しています。まず筐体は前モデルとなる「MOMENTUM True Wireless 2」から大幅に小型化していて、同社の「CX Plus True Wireless」などに近いスクエア型になりました。またIPX4防水でタッチ操作にも対応。ちなみに、2022レッドドットデザイン賞にも輝いています。
小型になったおかげで装着性はとても良く、耳にすっぽりとハマりねじ込むような形状に。交換式のイヤーチップとフィンでサイズ微調整もできますが、僕はデフォルトの状態でよく密着して、耳栓のような遮音性になりました。
イヤホンのタッチ操作は左右に再生系を割り振る変則的なタイプ。ただこれは好みに応じてアプリからカスタマイズが可能です。イヤホンからの音量調整にも対応します。
付属のケースにファブリック素材を使っているところがゼンハイザーとして最上位の証。グレーの素材は見た目にもカッコイイ。
イヤホン本体での音楽再生可能時間は7時間、ケース併用で最大で28時間と、現在としては標準的な水準くらいでしょう。
Bluetoothのバージョンは5.2に対応。コーデックがSBC/AAC/aptX/aptX adaptiveとなり、Androidスマホでは最大96kHz/24bitのハイレゾ対応が可能となったところは、音質重視の観点では最も重視するべきポイントです。
ノイズキャンセルも進化。周囲の音に応じて自動化する“アダプティブノイズキャンセリング”を採用しています。以前は1マイクによる簡易的な騒音低減の方式だったのですが、「MOMENTUM True Wireless 3」ではイヤホン内外のふたつのマイクによる今どきのハイブリッドANC方式。また、アプリからは風切音の低減という設定も利用できます。
実際にノイズキャンセルを試してみると、騒音低減の効果量は大幅にアップ。業界トップというほどではないですが、“音質への影響を抑える”という従来からのゼンハイザーの主張を踏襲していて、違和感が全くなく、音質への影響も感じられません。室内のエアコン音のような軽めの騒音はもちろんですが、電車内の大きな騒音下でも騒音量を減らしつつ聴こえ方が軽やかで安定している点が素晴らしく優秀です。
通話性能についても、マイクを片側3基の合計6基搭載。さらにズームフォーミングも搭載しノズル内からも集音するという高性能なものに進化しました。屋内でZoom時にテストしてみると通話性能はこちらも優秀。特に男性の声の中低域まで情報量豊かにピックアップしてくれるようです。
では、気になる音質をチェックしていきます。
まずはiPhoneと接続して宇多田ヒカル『あなた』から。聴いた瞬間から“ゼンハイザーの音”なんですよね。女性ボーカルの歌声には少し高域にかかる癖があるのですが、歌声の存在感も、抑揚の表現も、自然で広がりあるスケール感の再現もすべてが上質。引き締まったリズミカルな低音も優秀です。BrunoMarsの『24K Magic』でも、男性ボーカルの声のニュアンスも伝わるようで、以前にも増して情報量をしっかりと再現するようになっています。
AndroidのaptX Adaptiveコーデックによるリスニングでは、『あなた』では歌声の透明感やクリアさがアップして、上質なまま特に音のキメ細かさが向上。BrunoMars『24K Magic』も音楽の空間的なセパレートが非常に向上していて、しかも低音がエネルギッシュなのに情報量が漲る上質過ぎる再現。クラブ系音楽まで余裕たっぷりに聴けるんです。
* * *
ひさびさにじっくり聴き込んだゼンハイザーの新作「MOMENTUM True Wireless 3」。音の素性の良さは相変わらず優等生だし、特にAndroidのaptX Adaptiveコーデック対応によるハイレゾ音質では、約2年の技術差を一気にキャッチアップしてきました。そして、“アダプティブノイズキャンセリング”の音質に影響を与えない騒音低減という思想も、ノイキャンは強度重視のライバルが多い今だからこそ、その価値を実感します。
ゼンハイザーの上質な音に魅せられたファンは、「MOMENTUM True Wireless 3」への買い替えは必須でしょう。もちろん、初めてゼンハイザーを体験する人にもオススメの一台ですよ。
>> ゼンハイザー
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/456592/
- Source:&GP
- Author:&GP
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