しっかりナイフが付いている「はじめてのマルチツール」で刃物の正しい扱い方を学ぶ

【男前マルチツールの世界】

マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。

そんなマルチツールの男前な魅力を紹介する連載第22回は、スイスのマルチツールブランド、ビクトリノックスの「MY FIRST VICTORINOX」(3520円)です。「私の初めてのヴィクトリーノックス」という品名から分かるように、人生で最初に手にするかも知れない子ども用のマルチツールです。

元祖アーミーナイフのブランドとして有名なビクトリノックス。マルチツールというカテゴリーが成熟する前から軍の装備品として使われて来ました。現在はミリタリーのみならず、アウトドアからDIYツール、トラベルギアまで幅広いアイテムを発信するブランドです。

 

■子ども用のナイフは不要? いや必要でしょ!

少々大げさに言えば、ナイフとは人間が最初に手にしたかもしれない道具です。鋭い爪や牙を持たない猿から進化した我々人類が、厳しい自然環境の中で生き抜くために必要とした武器であり、そのナイフから新たな道具も生まれました。

子ども用と謳ったマルチツールはこれまでにもいくつかありました。そして、その多くは「ナイフレス」でした。ナイフが無くてもハサミがあれば良いよね? みたいなモデルですね。

ナイフは鋭利で危険なもの。確かにその通りですが、刃物の安全かつ正しい扱い方を学ぶことは、決して間違ったことではありません。おそらく「ちゃんとナイフを付けるべし!」となったであろう、異色のモデルです。

ご覧の通り、ナイフの先端はヘラのように丸みを帯びいるので、切っ先で指を切るようなことはありません。今まであったようでなかった発想です。

幼い時から道具としてのナイフに触れ、モノを作る喜び、問題を解決する思考力と行動力を養うには最適なものだと思います。

ブレードの先端が丸いので、ナイフを引っ張り出したり折り畳んだりする時に怖くありません。先端が尖っていると大人でも「怖い」と思うことはありますよね。子どもであればなおさらです。

ロック機構がないモデルなので、ブレードをハンドルから起こす際に少し力が要ります。この部分は大人用とさほど違いはないようです。子どもが苦戦していたら、そこは大人が手伝ってあげてもいいかもしれません。

そしてこのマルチツールにはノコギリが付いています。かなり細身なので角材を切ったりするのは難儀しそうですが、工作で使用するボール紙の紙管や小枝を切るには充分かと思います。ナイフとノコギリの使い分けを学んでもらうのに良いですね。同じ切る道具でも、どんな違いがあるのか、なぜノコギリは滑らずに切れるのか、など物理の話を交えながら説明しても楽しいと思います。

 

■子どもの「やってみたい!」を育む

▲缶切り、栓抜き、先端はマイナスドライバー

切る仕事担当以外は缶切り、栓抜き、マイナスドライバーのみ。オーソドックスですが、シンプルで使いやすいツールです。なお、ツールは全てステンレス鋼を使用。水に濡れても錆び難く、少々ラフに扱っても壊れない丈夫な素材です。

▲ピック(爪楊枝)とピンセット

ボディ側面にはスライド式のピックとピンセットが収納されています。木工作業をしているときにありがちな小さなトラブルといえば、木のささくれが指に刺さってしまうこと。そんな時、ピンセットがあれば取り除けます。樹脂製のピックはおやつの果物やお菓子を刺すのに便利です。

これら付属のスモールパーツは別途購入も可能です。小さく失くしやすいものですが、さほど高価なパーツではないのでご安心を。そういったスモールパーツが手に入るのもビクトリノックスの良いところです。

ツールを収納するハンドルは大人用よりもひと回り小さく、子どもでも握りやすいサイズです。ビクトリノックスらしいスケルトンの樹脂ボディは美しく、光に透けて見える内部の構造に心を躍らせるかもしれません。

また、長めのストラップとチェーンリングが付属しています。紛失しやすい元気な子どもでもこれなら安心。

まずはチャレンジしてみること。親子で一緒に楽しむこと。子どもの「やってみたい!」を育む素晴しいマルチツールです。子ども用だからといって安易にナイフレスにするのではないところに、ビクトリノックスのナイフへの考え方と誇りを感じるマルチツールです。

>> ビクトリノックス

>> ビクトリノックス「子どもと安全にカービングするための大切な9つのルール」

 

>> [連載]男前マルチツールの世界

<取材・文/GOL>

GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。

 

 

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