アメリカで販売されるiPhone14シリーズは物理SIMカードスロットが廃止され、eSIMのみ利用できるようになります。
eSIMというとこれまでは物理SIMに比べて機種変更の際に手間がかかるなど、使い勝手がよいとはいえない印象がありました。
しかしながら、AppleはiOS16において「eSIMクイック転送」と呼ばれる新しい仕組みを導入し、物理SIMよりもかんたんに機種変更やeSIMの移し替えをおこなえるようにしています。
日本でもpovo2.0がこのeSIMクイック転送にいち早く対応しましたので、実際に試したレポートをお届けします。
物理SIMよりも使い勝手が悪かったeSIM
eSIMは物理SIMと異なり、スマートフォンに内蔵されたSIMをソフトウェア的に書き換えて使うものです。
ソフトウェア的に書き換えられるということで物理SIMよりも手軽に使えると思いきや、機種変更の際に携帯電話キャリアに問い合わせが必要など、むしろ使い勝手が悪かったのが実情です。
このため、現在販売しているスマートフォンや携帯電話キャリアの多くがeSIMに対応しているものの、いまひとつ盛り上がりに欠けています。
AppleがeSIM専用iPhoneをアメリカで発売、iOSに支援機能を追加
一方、スマートフォン業界は物理SIMを排してeSIMを採用する方向へ進んでいます。
これはeSIMのほうが部品点数が少なく、スマホの小型軽量化やコスト削減に有利だからです。
2019年にはMotorolaから初のeSIM専用スマートフォンが発売され、先日発表されたiPhone14シリーズについてはアメリカでeSIM専用版が発売されます。
AppleはeSIMの使い勝手にも配慮しており、iPhone間でeSIMをかんたんに移し替えることができる「eSIMクイック転送」をiOS16に実装しました。
これによりeSIMが物理SIM以上に便利になり、普及に拍車がかかるかもしれません。
povo2.0でeSIMクイック転送を実際に試してみた
日本ではpovo2.0が早くもiOS16のeSIMクイック転送に対応しました。
どの程度eSIMが使いやすくなるのか、筆者が実際に試しましたのでそのレポートをお届けしたいと思います。
筆者のSIM環境とeSIMクイック転送で試したこと
筆者は元々、以下の状態でiPhoneを利用していました:
これを2段階で以下のようにeSIMを転送します。
- 第1段階
- iPhone13 Pro: eSIM(日本通信)
- iPhone XR: eSIM(povo2.0)
- 第2段階
- iPhone13 Pro: eSIM(日本通信) + eSIM(povo2.0)
- iPhone XR: SIMなし
つまり、第1段階では物理SIMをeSIMとして別のiPhoneに転送し、第2段階ではeSIMからeSIMに転送します。
また、第1段階と第2段階の間を開けずにおこなうことで、手軽にeSIMを移し替えられるかどうかも実験します。
eSIMクイック転送で物理SIMからeSIMの転送が可能
まずはiPhone13 Proの物理SIMを、iPhone XRのeSIMとして移し替えます。
povo2.0でeSIMクイック転送を利用するには、Bluetoothを利用する方法とiCloudを利用する方法がありますが、今回はどちらも利用できる状態にして転送をおこないました。
これら2つの手順に大きな違いはありません。
eSIMクイック転送を利用するには、まず、新しいiPhoneで手続きをおこないます。
設定アプリからモバイル通信を開き、新しい端末の場合は「モバイル通信を設定」、既存の端末の場合は「eSIMを追加」を選択します。
すると、既存のiPhoneで利用しているSIM一覧が表示されます。
前述のとおり筆者はpovo2.0を物理SIMで利用していましたが、物理SIMからeSIMに事前に変更しておかなくても、直接物理SIMからeSIMへの直接転送が可能でした。
povo2.0の物理SIMのみが転送可能となっており、日本通信のeSIMは転送不可になっています。
povo2.0の物理SIMを選択すると、転送するかどうかの確認が表示されます。
ここで「番号を転送」を選ぶとすぐにiPhone13 Pro側で転送の確認が表示されました。
「SIMを転送」を選ぶとアプリのインストール時と同じようにサイドボタンのダブルクリックが求められ、それが終わるとiPhone XR側で「アクティベート中」と表示されます。
アクティベートは30秒ほどで完了し、iPhone XR側でeSIMが利用可能な状態になりました。
iPhone13 Pro側にはpovo2.0のSIMがiPhone XRに転送済みと表示されました。
これで物理SIMからeSIMへのeSIMクイック転送が完了し、iPhone XRで問題なくpovo2.0が利用できるようになりました。
かかった時間は、本記事執筆のためにスクリーンショットを取りつつ作業をしても1分未満でした。
eSIMからeSIMへの転送もかんたん
次にiPhone XRに転送したeSIMを、iPhone13 ProにeSIMとして戻します。この作業はiPhone13 Proからの転送完了直後におこないました。
なお、eSIMクイック転送はeSIMとしての転送のみ対応しており、物理SIMに戻すことはできません。
iPhone13 Proにはモバイル通信の設定にpovo2.0がiPhone XRへ転送済みである記録が残っていますが、これを無視して「eSIMを追加」を選びます。
先ほどと同じく、別のiPhone(iPhone XR)に存在するSIM一覧が表示されますので、転送したいSIM(povo2.0)を選びます。
iPhone XR側で転送可否の選択が出ますので、「SIMを転送」を選びます。
すると、先ほどとは異なり、iPhone13 Pro側に転送可否を尋ねるメッセージが表示されました。なんとなくインターフェースがAppleのものではなく、povo2.0のものであるように見えます。
許可をすると、povo2.0の電話の番号に届くSMSに記載されている6桁のパスコード入力が求められました。
有効期限が2分しかないので急いで入力すると、転送が完了したというメッセージが表示されます。
その後、アクティーベションがおこなわれ、iPhone13 Proでpovo2.0のeSIMが利用可能になりました。アクティベーションにかかった時間は同じく30秒ほどです。
iPhone XR側にはやはりpovo2.0のSIMがiPhone13 Proに転送されたという履歴が残ります。
必要な時間もやはり1分未満でした
povo2.0のeSIMクイック転送は将来も無料
povo2.0のeSIM再発行手数料は本来440円ですが、当面の間無料で運用されています。
今回のeSIMクイック転送の手数料についてpovo2.0に確認したところ無料であり、しかもeSIM再発行手数料が有料になったとしてもeSIMクイック転送の手数料は無料のまま維持するそうです。
povo2.0としてもeSIMクイック転送を利用したeSIMの転送は人件費などの点でメリットがあり、これからもこの方法を推進していくものとみられます。
povo2.0のeSIMクイック転送機能を利用する際の注意点
povo2.0のeSIMクイック転送機能を利用にはいくつかの注意点があります。
24時間受付ではなく、受付時間が限られている
povo2.0のeSIMクイック転送はサポートセンターなどに問い合わせることなくおこなえるのですが、なぜか24時間受付ではありません。
本記事執筆時点で受付時間は、
- 午前1時〜午前2時50分
- 午前7時〜午後11時50分
とされています。
午前1時からの短い受付時間の存在が謎ですが、時間外のeSIMクイック転送はできませんのでご注意ください。
また、受付時間内であってもメンテナンスが実施中の可能性があるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
転送元/転送先のiPhoneがiOS16にアップデートされている必要がある
eSIMクイック転送機能はiOS16から実装された新機能です。
このため、転送元と転送先両方のiPhoneがiOS16またはそれ以降のOSで動作している必要があります。
級端末をオールリセットする前に転送する必要がある
iPhoneをオールリセットするとeSIMの情報も失われてしまいます。
このため、古い端末を手放すためにオールリセットする場合、その前にeSIMクイック転送を実施してください。
オールリセットを先におこなった場合はpovo2.0のチャット窓口に連絡する必要があります。
SIMロックを解除しておく
転送先のiPhoneのSIMロックは解除しておかなくてはなりません。
eSIMクイック転送機能で複数台のiPhone運用がかんたんに
今回eSIMクイック転送を試して、物理SIMを入れ替えるよりも手軽にSIMを移し替えられると感じました。
物理SIMの場合はSIMスロットを開けるための細い棒を探し、それを使ってSIMカードを取り出し、新しい端末に移し替えなくてはなりません。
また、場合によってはプロファイルをインストールする必要もあるでしょう。
移し替えの際に物理SIMを破損することもあり得ます。
これに対してeSIMクイック転送機能を利用すれば、1分以内に転送が完了します。
eSIMの特徴である「ソフトウェア的に書き換えられる」点を最大限利用した機能であり、物理SIMにおける弱点を克服したと感じました。
スマートフォンが苦手な方でも迷うことなく機種変更ができるのではないでしょうか。iPhoneを複数台運用している方にとっても利便性が高いと思われます。
ただ、日本で対応しているのが本記事執筆時点でpovo2.0だけなのと、受付時間が限られている点がこれからの課題です。
受付時間については、特に海外で利用する際に問題になるかもしれません。
調査会社のCounterpointがeSIMやその発展版であるiSIMの爆発的な普及を予測するなど、これからのスマートフォンは間違えなく物理SIMスロットなしへと移行していきます。
eSIMクイック転送機能はまさにその時代を見据えたものであり、ほかの携帯電話キャリアやAndroidスマートフォンもぜひ早めに対応してほしいものです。
Source: povo2.0
(ハウザー)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-486808/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania
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