マセラティの話題の新型車「MC20チェロ」にイタリアで試乗しました。
F1由来という技術を採用されたV6エンジンをミドシップした2人乗り。速いだけじゃなく、スタイリッシュで、風に吹かれての爽快なドライブを体験させてくれました。
場所はシチリア。2022年10月も終わりでしたが、半袖でのドライブにぴったりの気候。チェロ(cielo)とはイタリア語で空のこと。オペラが好きな人ならけっこう目にする単語ですね。
MC20チェロは12秒で開閉するハードトップをそなえているので、シチリアの真っ青な空の下、気分よいドライブが味わえました。
■低い車高とフルオープンを堪能しつつも「生活を楽しむ人のためのクルマ」
ウインドシールドが短めで、別名スパイダーとマセラティが呼ぶとおり、低い車高とフルオープンの雰囲気が堪能できるスタイルが特徴的です。
低い車高は高価なカーボンファイバーを使ったバスタブ型のシャシーゆえです。エンジンもかなり低いところに搭載して、ハンドリングの良さを追求しています。
▲MC20チェロの開発を指揮したフェデリコ・ランディーニ氏
マセラティは「とはいえ、純粋に走りを楽しみたい人は(21年に発表の)MC20クーペをどうぞ。MC20チェロは、もっと生活を楽しみたい人のためのクルマです」(エンジニアリングを統括したフェデリコ・ランディーニ氏)といいます。
■低回転域からトルクたっぷりで気持ちの良い加速感
もちろん、速いクルマです。463kW(630CV)の最高出力を7500rpmで出す3リッターV6エンジンは、ツインターボチャージャーを搭載。プリチャンバー(燃焼室)とツインスパークプラグとツインインジェクション(燃料噴射装置)というF1由来の技術を採用した「ネットゥーノ」と名づけられたパワートレインです。
「シリンダーのバンク角は90度まで拡げて、エンジンの全高を抑え、かつドライサンプなので下に大きなオイルパンを持たずにすむので、低い位置に搭載できました。ターボチャージャーもエンジンの両脇において、やはり車高を下げる努力をしました」
前出のランディーニ氏はいいます。「エンジンを2cm下げれば、それだけでハンドリングはうんと向上します」とのこと。乗員の着座位置も低く、スタイリッシュであると同時に、スポーツカーとしての基本がしっかり守られているかんじなのです。
はたして、エンジンの低回転域からトルクがたっぷり出るので、気持ちのいい加速感が堪能できます。しかもセンターコンソール上のボタンで「M」を選択すると、ステアリングコラムから生えているパドルを使って、ツインクラッチタイプの8段ギアを自在にコントロールできます。
「A」(オート)を選ぶと、シフトアップのタイミングは早めです。燃費をかせぐためですが、いざ加速のときは、そもそも最大トルクが730Nmもあるだけに、たっぷりしたトルクの恩恵があります。
ドライブモードでは「GT」が標準モードで、「スポーツ」、その上に「コルサ(レースの意)」、そしてサーキット走行のための「ESCオフ」が選べます。
「MC20チェロは、気持ちよく走ってもらうのが目的なので、サスペンションの設定をクーペよりすこし快適方向に振ったのと、GTモードでもクルマの動きをややおだやかにしています」と、ランディーニ氏。
ノトという紀元前に出来た、シチリアの南端に近い街を起点に、海岸線まで走ったドライブは、なるほどたいへん気持ちのいいものでした。
■“空”を体験することを主眼においたテストドライブ
▲ノトの大聖堂前
マセラティは今回“空”を体験することをテストドライブの主眼に置いたようです。おもしろいイベントが、ドライブのほかにも、いろいろ用意されていました。
▲ノトのアーティスト、セルジオ・フィオレンティーノ氏のアトリエ
▲チョコレートの街として知られるモデカ
▲ノトから少し離れたリゾート「サンコラード」のプールサイドでお披露目
ひとつは、青空を思わせるブルーを基調にした作品を多く手がけるノトのアーティスト、セルジオ・フィオレンティーノ氏のアトリエ訪問。
▲セルジオ・フィオレンティーノ氏のアトリエでスケッチを描くヘッドオブデザインのクラウス・ブッセ氏
そこから、かつてスペインの支配を受けていて、15世紀のいわゆる大航海時代にスペインが南米から多量に持ち去ったチョコレートの文化が残るモディカという雰囲気ある、真っ青な空が背景に拡がる丘の街を経由。ラグーサというヨットリゾートがドライブの終着点です。
▲マセラティ・マルチ70
ラグーサからは「マセラティ・マルチ70」という多胴ヨットに乗りました。マセラティがメインスポンサーとしてサポートするイタリア人ヨットレーサーのジョバンニ・ソルディーニ氏がスキッパーを務めていて、ちょうど数日前にマルタ島での「ロレックス・ミドルシーレース」に参戦して3位を獲得した直後でした。
▲「マセラティ・マルチ70」のスキッパーを務めるイタリア人ヨットレーサーのジョバンニ・ソルディーニ氏
私(たちの)運がよかったのは、快晴でかつ波が実におだやかだったこと。
ソルディーニ艇長は「風がぜんぜんなくてつまんないですねえ」とぶつぶついっていましたが、波が高くなると、頭の上から爪先までびしょ濡れを覚悟しなくてはならなかったようで、その意味ではラッキーでした。
マセラティのシンボルは、そもそも同社創業のボローニャにあるネプトゥヌス(ギリシア神話だとポセイドン)が持つ三叉の鉾に由来しています。それをセイルに大きく掲げているのは、理にかなったことといってもいいのではないでしょうか。
マセラティ「MC20チェロ」。価格は3385万円で、日本では2023年春の早い時期の発売を予定しているそうです。
【Specifications】
☆Maserati MC20 Cielo
全長×全幅×全高:4669x1965x1218mm
ホイールベース:2700mm
車重:1560kg
3000cc:V型6気筒ミドシップ 後輪駆動
最高出力:463kW@7500rpm
最大トルク:730Nm@3000〜5500rpm
0−100km/h加速:2.9秒
最高速度:323km/h
価格:3385万円
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/487973/
- Source:&GP
- Author:&GP
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