【放置キャンプ場開拓日誌 #03】
2023年春に開場を目指して、整備真っ只中の「-be-北軽井沢キャンプフィールド」ですが、ここに来るまで多少なりとも大変なこともございました。
昨今、キャンプブームの中で「キャンプ場を拓きたい!」という方も少なからずいるかと思います。かくいう僕たちもそのうちの2人なわけですが、“キャンプ場の土地の探し方”は誰も教えてくれません。
今回はキャンプを仕事にしてから、“居抜き”キャンプ場を見つけるまでの経験から、“キャンプ場の土地探しの方法”のヒントになるようなお話ができればと思います。
とはいえ、これも以前の記事同様に偉そうに語るつもりもありませんので、「キャンプ場オーナー0年目のやつがなんか言ってんな」くらいの気分で眺めていただけると幸いです。
■僕たちがキャンプ場を開きたいと思うようになった昔話をちょっとだけ
その前に、ちょっとだけ昔話をさせてください。僕たちがなぜキャンプ場を開きたいと思うようになったのかを、少しだけご紹介させてください。
▲キャンプ旅のときに訪れた北海道のキャンプ場。「-be-」にはどこか北海道に近い雰囲気があって、それも今の場所に決めた理由のひとつ
遡ること10年ほど前。私ヤマケンと、ともに「-be-」を運営する相方のさくぽんは脱サラして、キャンプの世界に飛び込みました。
当時は珍しかったキャンプのハウツーについてのキャンプブログで稼ぐことを当面の目標に、「キャンプしながら日本全国を野郎2人でめぐる旅」に出ました。
キャンプの経験値を上げるため、キャンプ業界の人に注目してもらうため、ブログの説得力をあげるためと、いろいろな理由があってのキャンプ旅でした。
すぐにブログでお金が稼げるわけもなく、途中お金が尽きて、稼ぎ直さなければいけないこともあり、結局2年とちょっとかかりました。
▲キャンプ旅の途中でのキャンプ場のイベント手伝いなど、それらの経験がすべて今につながっている
キャンプ旅の間は、ご縁を頂いて本当にたくさんのキャンプ場のオーナーたちにお世話になりました。
宿泊させてもらう代わりに、場内整備や週末のキャンプ場業務をお手伝いさせてもらったり、それまで見たこともなかったキャンプ道具の使い方を教えてもらったりと、キャンプにまつわるあらゆることを経験させていただきました。
その中で見てきたオーナーたちの背中は、いつだって素敵で格好良く、憧れるものでした。そして、いつかは自分たちも同じようにたくさんのキャンパーを迎え入れ、穏やかにキャンプをして過ごせる場所を作りたいと思うようになったのであります。
▲3年間お世話になった千葉県・有野実苑の秋の様子。四季の変化を楽しんでもらうための気持ちがこもったサイト設計が人気
■暗中模索で土地を探すよりも、まずは理想の形を持つことがスタートライン
さて、昔話はここまでにして。では具体的に僕たちがどうやってキャンプ場を開くに至ったのかの話から、キャンプ場の土地探しについてお伝えできればと思います。
▲「-be-」で見られる冬の天の川。周辺に明かりがないので星座がわからなくなるくらい満天の星空に
芝生で程よく木々が立ち並んでいて、満点の星空が見える場所があって、春は新緑で柔らかく、夏は涼しさをくれる林間サイトもほしい。
ソロやデュオキャンパーがしっぽりのんびりできるような静けさも提供したいし、これからキャンプをはじめたい人が安心してソトアソビを楽しめるような施設もほしい。
何よりも自然の豊かさの中で癒やされるような場所で、今すぐキャンパーを迎えたい。
これが僕たちの求めるキャンプ場像でした。
キャンプ旅で立ち寄ったたくさんのキャンプ場の中にあこがれた風景があったからこそ、ここまで欲張りな要望になってしまいましたが、とにかくこの理想の形をもとに土地探しました。
「自分が納得できる、大好きな場所」だからこそ、訪れるキャンパーさんにその場所の良さを伝えたくなるし、数泊の短い時間ではありますが、可能な限りゆっくり過ごしてもらえるように努力もできるのだと思います。
実際に20数年続いている個人オーナーのキャンプ場の多くは、仕事の合間を縫って、自分の足を使って理想のランドスケープを探して回ったと聞きます。
そしてそれらのキャンプ場は、ところどころにその土地への愛を感じますし、そこにくるキャンパーへの気遣いがそこかしこに見受けられます。
▲理想のキャンプ場に少しでも近づけるべく日々整備を進めている。この日は小学生からの親友が手伝いにきてくれた
だからこそ、昔ながらのキャンプ場には穏やかな雰囲気が流れているのだろうと思います。
ということで、少し鬱陶しくなりましたが、キャンプ場を開くために必要な一番大事な要素は、自分の理想のキャンプ場像を持つことだと考えます。当たり前かもしれませんが。
理想像が決まれば、それを叶えられるエリアを絞れますし、必要な広さも設備も決まるので、必要な開業までに必要な経費もなんとなく見えてきます。
実際に始めて見ると当初の目論見通りにはまったくいかないのですが、それでもスタートは切れます。
■キャンプ場探しは1日にしてならず。何度も足繁く通うことが大前提
▲キャンプ場周辺の風景はどこを切り取っても美しい。ほれぼれするほどの豊かなランドスケープ
僕たちが整備中の「-be-」は、北軽井沢で長く続くキャンプ場の方に教えていただいた場所のひとつでした。
キャンプ旅の間にお世話になったキャンプ場のひとつで、旅の後もプライベート、ビジネス問わず、お世話になってきました。
もともとこのエリアで生まれ育って、今は地域に産業を作るために活動されている方々で、北軽井沢エリアを熟知されています。
僕たちの予算や理想のランドスケープや環境に合わせて、たくさんの場所を一緒に回ってくださって、そのうちのひとつが今整備中の「-be-」となる場所だったわけです。
その後もこのエリアのキーマンとなる方を紹介してくださって、その方も陰に日向に助けてくださり、なんとか2022年のプレオープンにこぎつけました。
▲隣のエリアにはキャベツで有名な嬬恋があり、広大な景色に心打たれる
キャンプ旅だったり、働かせてもらったりと、僕たちの経験は例としては少し特殊なのかもしれませんが、大好きな土地に関係し続けることが次のステップなのだと考えます。
週末ごとにそのエリアの喫茶店に行く、ショップに行く、不動産屋に行くなどなんでもいい。とにかく泥臭く足繁く通って、そのエリアの人に覚えてもらうことから始める。
遠回りのように見えてしまうかもしれませんが、キャンプ場を始めるまでの間だけでなく、末永くキャンプ場を運営していくための最短距離だと感じています。
■覚悟を決めて飛び込むことも必要かも
ちなみに僕たちの「-be-」について一番大事だったことを振り返ってみると、相方さくぽんの移住だったように思えます。
住居を移すのは一般的に非常に難しく大変なことだと思います。仕事や家族、友人関係はもちろん、生活環境の変化もあります。
また、キャンプ場があるエリアは豊かな自然がある反面、都会のような利便性がないことも多い。
▲ソロやデュオキャンパーにぜひ泊まってもらいたいお気に入りのサイト
それでも生活の拠点を移すというのは、「この土地でキャンプ場を始めたい」という強い意志表明にほかなりません。
ちなみに、「-be-」のある北軽井沢エリアは別荘地が多く、一般的なアパートやマンションは少ないんです。なので、このエリアに関わるには、その数少ない賃貸物件に住むか、近くのエリアで別に住居を構える必要があります。
単純にお金がもったいないからという身も蓋もない理由もありますが、僕ヤマケンは「この土地の四季を知らなければキャンパーに伝えられない」と考えて、キャンプ場の管理棟で生活しています。
そして、自分たちで思っている以上に地元の方々は、その「意志」を「行動」から見ているような気がしています。
全部が全部そうではなく僕の自意識過剰かもしれませんが、何らかの形で、その意思表明を言葉以外の手段で見せていくことは重要そうです。
▲なにはなくとも様子を見に来てくれる水道屋さん。この土地を熟知した方が近くにいてくれる心強さ
ということで、“居抜き”キャンプ場を借り受けるまでの話から土地探しに重要だと感じたことをお話しさせていただきました。
土地探しの観点から、地元の方々と関わり続けることとコミュニケーションは非常に重要で、これができないとそもそも理想の土地があっても誰に交渉すればいいかもわかりません。
土地が見つかったあとも、自分たちでキャンプ場を始めるにあたって、地元の方々の理解や応援が何よりも重要だとこの3ヶ月毎日痛感しています。
その土地がどういう土地なのかを地元の人たちは知っています。水が湧きやすい谷地(ヤチ・ヤジ)なのか、風が通り抜けやすい場所なのか、気候や天災に強い土地なのか、管理棟やトイレを立てる開発行為ができるエリアなのかなど。
さらに言えば、キャンプ場整備に必須な重機を取り扱ってる業者さんや、砂利などを取り扱っている業者さん、水道工事屋さん、電気工事屋さんも、自分だけで調べてお願いするのはすごく大変です。こういうキャンプ場に必須なインフラ系も彼らは知っています。
今回はお話できませんでしたが、キャンプ場の土地選びに必要な視点や知識は他にもたくさんあります。
それをよく知っているのはそのエリアで生活を続けている方々ですから、地域に入ることなしにはキャンプ場は成り立たないのだと感じています。
次回以降はキャンプ場の土地選びについて、もう少しマニアックなところに突っ込んでお話できたらと思います。
今回もご覧いただきありがとうございました! また次回もよろしくお願いいたします!
「-be-北軽井沢キャンプフィールド」
〒377-1411 群馬県吾妻郡長野原町応桑1984-160
<文/山口健壱>
山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/492284/
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- Author:&GP
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