冬期クローズするキャンプ場の運営者は、冬の間なにをしているのか

【放置キャンプ場開拓日誌 #07】

2023年も明けまして、もう1月が終わりかけております。みなさまいかがお過ごしでしょうか。「-be- 北軽井沢キャンプフィールド」のヤマケンです。

“居抜き”キャンプ場の整備を進めつつ、その様子やその過程で思ったこと、わかったこと、おもしろいことをお伝えできたらと思い、連載させていただいております。

今年は遂に本格オープンの年。ぜひ暖かくなったら「-be- 北軽井沢キャンプフィールド」に遊びにきてください。

というわけで、新年一発目の記事を何にしようかむにゃむにゃ悩んでおりました。
最近「キャンプ場はじめるんですー」という話をしますと、よく「冬の間は営業するの? どうしているの?」と質問をいただくことが多い。

ですので、今回は時季的にもちょうど良さそうなので、冬の間のキャンプ場仕事についてお話しします。

オンシーズン中はなんとなく想像がつくかもしれませんが、オフシーズン中も実は大忙しだったりするのがキャンプ場なのであります。

 

■そもそも冬の間ってキャンプするの? キャンプ場は開いているの?

と、その前に。

▲冬キャンプどころか、雪中キャンプはキャンパーのあこがれの遊びになりつつある昨今。冒険心がくすぐられるのだ

すでにキャンプにどっぷりの皆様には言わずもがなかもしれませんが、キャンプをやったことのない方からのよくある質問は「冬の時期もキャンプするんですか?」というもの。

昨今のキャンプブームでだいぶ「冬キャンプ」も市民権を得てきているように感じます(一昔前は冬キャンプはだいぶ玄人感の強い、キャンプフリークだけの遊びのような認識が強かった)が、そうですよね、一般的に考えて、冬に幕一枚で外で寝泊まりなんて「マジで言ってますか?」って感じですよね。

冬キャンプは十分な装備や知識、技術があれば十分以上に楽しめる遊びです。なので、質問への答えとしては「冬の時期もキャンプをします」。

ただ、「世の中の全てのキャンプ場が冬季(12月から3月)まで営業をしているか」というとそうではありません。

氷点下10℃を下回るエリアでは春まで休業されるところが多い印象です。一方で比較的冬でも暖かいエリア(関東であれば千葉や神奈川エリアなど)は稼働しているキャンプ場がほとんどではないでしょうか。

▲水道の凍結防止にチョロだししていてもこの有様。どこのキャンプ場も水道の凍結リスクは毎日存在する

冬の間はキャンパーが少ないということもありますが、それ以上に水道凍結のリスクやフィールドの状態が原因で営業できるキャンプ場が限られてくるのです。

もちろん、寒さが厳しいエリアでも十分な設備(水道の凍結防止設備を充実しているなど)を確保しているキャンプ場もありますし、暖かいエリアでも凍結やそれ以外の事情(春以降の準備期間として休業など)でクローズしているキャンプ場もあります。

ということで、まず事前情報として「冬でもキャンプで遊べる」けど「冬の間やっていないキャンプ場もある」というお話でした。

 

■冬もオープンしているキャンプ場はなにしているの?

では、冬の間のキャンプ場のお仕事について。まずは冬期も営業している場合から。

予約業務や清掃、受付対応などの通常業務は、冬以外のシーズン同様。ただ、春から秋にかけてのオンシーズンに比べると、落ち着きます。

「通常業務が落ち着いた分、ゆっくりしてるの?」と思われるかもしれませんが、たしかにそういう時間を作りやすい。

オンシーズン中にまとまったお休みを取りにくいのがキャンプ場の常ですが、キャンプ場によってはオフシーズンの冬の間にスタッフに長めのお休みを取ってもらうところもあります。

▲通路やサイトの整備を冬期期間中にまとめて作業することが多い。もちろんキャンパーに十分配慮した上で

ですが、キャンプ場の冬は実はオンシーズン並みに忙しい時期だったりもします。キャンプ場にとって、冬の間は「整備期間」として重要です。

キャンパーが少ない時期ですので、オンシーズン中にはできない場内の土木作業や修繕作業を中心に、集中して作業を行っていきます(もちろんキャンパーに十分配慮した上で、です)。

例えば、場内通路やサイト内の整備。シーズンを通して多くのキャンパーが来る=クルマの通路やサイトが荒れてくるので、それを冬の間にキレイにしていくのです。

クルマがたくさん通ったり、サイトの上でキャンプをすれば、その分地面が踏み固められていきます。砂利が入った通路やサイトでは、撒いた砂利たちがどんどん地面に埋め込まれていき、地面が露出します。

そうなると、テントや道具が汚れやすくなったり、過ごしにくくなります。なので、冬の間に整地をしたり砂利を撒き直したりしていくわけです。ちなみにこの砂利撒き作業、シンプルに肉体労働で重労働ではあります。

▲新しいサイトを造成するのも冬に。抜根して、整地して、放置して、踏み固めて…時間も労力も必要なので、オフシーズンに手掛ける

重機やトラックで砂利を運ぶにしても、人の手で砂利を広げて、均します。砂利も粒度が完全に整っていないので、大きすぎるものはひとつひとつ手で弾きます。実際にクルマで走ってみたり、サイトの中を歩き回ったりして、違和感や不快感がないかもチェックします。

木々のメンテナンスもこの時期にやることが多いです。葉が枯れて、見通しがよくなるので、枯れ枝や枯れ木を発見しやすくなります。手の届く範囲であれば、12尺などの三脚を、それでも届かない場合は12mや17mの高所作業車をレンタルして、一気に剪定していきます。落枝を原因としたトラブルや事故を未然に防ぎ、安心してキャンプを楽しんでもらうために行う作業です。

▲特別寒さが厳しいエリアでなくとも、霜が降りる程度には冷える。怪我なく安全に、一歩ずつキャンプ場の整備や改修をすすめる冬シーズン

他には、ログキャビンやコテージなどがあれば、その補修作業もあります。建物も長年使用していれば、いろいろとガタがくることもあります。ウッドデッキで床板がたわめば、その補修。外壁が傷まないように全面ペンキ塗り。その他設備も具合を確認して購入を検討。

ちなみに、キャンプ場を運営するにあたって、できることは可能な限り自分たちで行うことが前提にあります(その「できること」の範囲がやたらと広いのがキャンプ場)。

なので、それらを比較的時間を取りやすい冬の間に全て行っていくので、実は仕事量は膨大です。

 

■冬シーズン中にお休みのキャンプ場は、頭脳労働メイン+修繕作業が短期間

では「冬期期間中に休業しているキャンプ場は何をしているのか」ですが、これも結局はやるべきことは変わりません。

変わりませんが、より「ギュッ」としている感じです。

冬期期間で休業しているキャンプ場の多くは、山間部や寒いエリアにあります。そういう場所は、降雪も多い。雪が積もれば作業どころではなく、雪が溶ければ路面状況も悪化します。そんな状態で土木作業をしようとすれば、整地どころか荒らしてしまいます。

▲一度雪が降り積もると場所によっては春までとけずにフィールドに残る。この状態では土木作業は一切できないし、それ以外の作業も効率が一気に落ちる

雪が降らないエリアでも、ひと月やふた月も氷点下が続くエリアであれば地面が凍ります。地表から20cmから30cm、場合によっては40cmの土が凍ります。ちなみに私達のキャンプ場「-be-」のエリアでは、地表から40cmは凍ってしまいます。

「なんだ、地面が凍るだけでしょ?」と侮るなかれ。びっくりするほどなんにもできません。足で蹴ってもびくともしないのは当たり前、スコップを刺そうとすれば弾かれ、ユンボなどの重機でも地面にパワー負けします。

そんなわけで、場内通路やサイトの整備系は冬の間はできないのが必定。「-be-」を整備するにあたって「いやいや、とはいえユンボあるんだからなんかできるでしょ!」と思っていた私をぶん殴ってやりたい。

▲どれくらいの広さを取れるのかを測定したのち、「どんなキャンパーさんに」「どう過ごしてほしいか」を考えながら設計するサイト割り。キャンプ場の雰囲気に作用する大事な工程だ

その代わり頭脳労働を行うわけです。年間のスケジュールやイベント、ワークショップの組み立て、サイトにテコ入れをするならその作戦、料金の見直しやHPの手直しやリニューアル、予約システムの検討や受付手順の刷新など、頭を使ってやる仕事も大量にあります。

冬期期間中に外作業ができない分、このソフト面に集中できるのです。

そして雪解けして、暖かい気温になったら冬期休業も終わり、キャンプシーズンの幕開けとなるわけですが、オープンするためには休業期間中にできなかったフィールドの整備が必要です。

3月末から4月の上旬にかけて暖かくなったら、一気に土木作業に入るわけです。

ですが、暖かいエリアと違って猶予は少ない。雪解けが終わってから、楽しくキャンプができる良い気温になるまでの間に一気に整備作業をすすめるしかない。

▲ところどころ、というよりはいたるところに野生動物の足跡が見られる冬の「-be-」。この雪が解けたら勝負所。限られた時間で一気に場内整備をすすめる

2週間から3週間程度の限られた中で、重機をレンタルし、人手を頼んで、でも可能な限り自分たちでできる範囲は自分たちで。

私達の「-be-」はこのタイプ。ですので、もしこの記事をご覧いただいて春先に「キャンプ場整備を手伝ってもいいよ!」という方がいましたら、何卒よろしくお願いいたします! 半分本気です。

*  *  *

さて、というわけで、今回は冬のキャンプ場ってなにしてるの? という疑問にお答えするような内容でした。

冬シーズン中もなにはともあれ、キャンプ場にとっては重要な期間。冬も営業できるキャンプ場は、通常業務に加えて土木作業に頭脳労働とあくせくします。冬クローズのキャンプ場は通常営業がない代わりに頭脳労働と短期集中型の整備作業。

どちらにも一長一短があるというか、でも何にせよやっぱり大変なことです。

余談ですが、先日、お世話になっているキャンプ場オーナーがこんな話をしていました。

本当に大変なことばっかりよ。土木作業もあって、でも接客もある。何でも自分でできるようにならなきゃいけない。

土日だけ見たらキャンパーがたくさんいて順風に見えるけど、見えないところで辛いことも多い。

でも、やっぱりお客さんがワクワクした様子でキャンプ場に来て、帰りがけに「楽しかった! また来ます!」なんて言ってくれる。だから、頑張れるんだよな。

これがキャンプ場運営の醍醐味で喜びだよ。

私達の「-be-」も例にもれず、というよりも例よりも大量の作業が春先にありますが、それでもやっぱり、たくさんのキャンパーたちの笑顔が見たい!! なので、勝手に張り切っちゃいます!

▲春の雪解け水が大量に流れても大丈夫なように、管理棟前のU字溝の掃除。2年半分の土砂が溜まって大仕事。随分キレイにできたので、これで春も安心

お日様の下で大汗かきながら整備して(予定)、みなさんのご来場をワクワクしながらお待ちしています!!

それでは今回もご覧いただきありがとうございました! また次回もよろしくお願いいたします!!

「-be- 北軽井沢キャンプフィールド」
〒377-1411 群馬県吾妻郡長野原町応桑1984-160

 

>> [連載]放置キャンプ場開拓日誌

<文/山口健壱>

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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