2023年にトレンドになりそうな3つの新規事業手法

本記事は、Spready株式会社代表取締役の佐古雅亮氏に、2023年にトレンドになりそうな3つの新規事業手法についてご寄稿いただいたものです。

2023年のトレンド紹介

各社のイノベーション創造への挑戦は時代とともに進化しています。2023年に流行の兆しを見せているものをいくつかご紹介します。

いずれも、ポイントとしては、これまでは比較的「探索」をテーマとした取り組みが中心だったものに対して現在は、より本格的な事業の立ち上げや事業グロースにフォーカスしたものが増加しています。

①カーブアウト戦略

大手企業が新規事業を育む上で、いくつかの組織上の構造的な課題があります。

例えば、「短期的な収益性を要求され、大きな事業に育てることが難しい」あるいは「人事制度の兼ね合いで、事業を立ち上げていく中で必要となる専門家を柔軟に集められない」などが挙げられます。総じて、「本業の汚染」と表現されることがあります。

これらを解消する組織戦略として、「出島戦略」というものが注目を集めていました。文字通り、新規事業を生み出すことをミッションに持つ組織を「出島」として本体とは可能な限り切り離し、独自裁量の中で新規事業に投資を行っていくという考え方です。

多くの企業がこのかたちをとっていますが、それでも人事評価制度などとの切り離しが、厳しい現実がある中で、切り離しを最大化させたかたちがカーブアウトモデルです。

カーブアウトというのは文字通り、新規事業組織や事業を会社として完全に外に出してしまい、スタートアップ・ベンチャー企業として、独自のガバナンス・権限をあたえる仕組みです。

そこで、カーブアウト戦略では、本体が多数株主である場合を除いて、本体との接続点は「株式」のみとなり、人事評価制度などは独自に設計することができます。

例えば、本田技研工業株式会社が行う新事業創出プログラム 「IGNITION」では、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」を手がける株式会社Ashiraseなど、複数のスタートアップのカーブアウト実績があります。

株式会社Ashirase:https://www.honda.co.jp/news/2021/c210611b.html

本田技研工業では制度を独自設計していますが、カーブアウトを共通制度化したものとして、経済産業省が支援する「出向企業」も紹介します。

出向起業の促進(経済産業省):https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/shukkokigyo/shukkoukigyou.html

カーブアウト戦略は、2023年以降本格化するイノベーション創造の一つのパターンとなるでしょう。

②代理出産モデル

①と関連して、「代理出産モデル」も流行の兆しがみえます。企業内起業家として活動する中でよくぶつかる課題として、「所属企業の品質やセキュリティ審査が厳格で、対応・調整に時間がかかる」というものがあります。

大手企業の場合は社会的な責務があり、世に出すサービス・製品には自社基準をクリアしたもの以外は投入できません。

ただ、事業立ち上げフェーズでは、早く細かくPDCAを回していく必要があり、何より予算も限られており、いきなり品質水準を満たしたサービス・製品を作ることは難しいです。

その問題を解決するのが代理出産モデルです。このモデルは、パートナー企業に業務を委託し、初期はパートナー企業名義でサービスを立ち上げ、各種検証を推進、当該サービスが一定の規模に拡大をしたタイミングで該当事業を買い戻すという仕組みです。

起案者もパートナー企業に出向をさせるケースが多く、パートナー企業内での各種検証には委託費用を支払います。

なお、一定規模に到達したタイミングでは、①サービスを完全買収、②パートナー企業と共同出資、③サービスを放棄、というオプションが用意されることが多いようです。

ここでは、大手家具メーカーオカムラ社から設立された、株式会社NovolBaを事例として紹介します。オカムラ社は、株式会社ボーンレックスと同社を立ち上げました。

株式会社NovolBa:https://novolba.com/

③撤退サービスの2次流通プレイヤーの登場

最後、①に関連して、最近注目され出しているのが「徹底サービスの2次流通」というテーマがあります。大手企業の中では、さまざまな判断基準から撤退という意思決定をしたサービスがいくつも存在します。

撤退判断は、ヒト・モノ・カネなど多岐に渡る理由から行われますが、大手企業の新規事業には「短期収益性」「ビジネス規模」に制限があるケースも多く、スタートアップとして投資を行えば大きなビジネスに育てられる可能性があるものも多く存在します。

そこで、撤退判断を受けた大手企業に眠る遊休資産(プロダクト)を買取り、グロースのために投資し、サービスを育て、売却する、というプレイヤーが誕生しはじめました。取得者は安価に取得することができ、大手企業側では遊休資産を現金化することができます。

このテーマでは、イノベーション領域で事業を展開するRelicホールディングスがReboo+社を設立し、サービスの展開を開始しました。

Reboo+社:https://relic-holdings.co.jp/group/rebootus/

日本では、2015年がオープンイノベーション元年と呼ばれており、もう間もなく10年を迎えようとしています。多くの「事例」が期待されるタイミングに差し掛かりました。実績創出に向けて、イノベーション市場ではますますの進化が求められています。

弊社Spreadyでは、2023年2月16日、新規事業担当者のための「学び」と「出会い」があふれる1日をテーマとしたオンラインカンファレンス、『NEXT Innovation Summit2023』を開催します。

全15セッション、新規事業に纏わるさまざまなセッションテーマを用意しており、本記事内のカーブアウト戦略で言及した本田技研工業/Ashirase社にも登壇いただく予定です。ご都合が合えば、是非ご来場ください。NEXT Innovation Summit 2023:https://client.spready.jp/NextInnovationSummit2023

<著者プロフィール>

佐古雅亮
Spready株式会社
代表取締役

2008年(株)インテリジェンス(現:パーソルキャリア)に新卒入社。人材紹介事業にてキャリアコンサルタント、リクルーティングアドバイザー、法人営業部門のマネジメントを経て、スタートアップ支援事業を立ち上げ、当該部門を管掌。2018年5月Spready Inc.を創業、代表取締役。

起業家、事業会社における新規事業開発経験の双方を持つ。自身の得意分野は、HRTech・マッチングサービス。慶應義塾大学文学部卒。

会社URL:https://spready.co.jp/


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