シャープな加速と路面に張り付く一体感! 新型「プリウス・PHEV」は新たな着想に溢れたクルマ好きに愛されるクルマ

トヨタ自動車が2023年3月に発売予定という新型「プリウス・プラグインハイブリッド(PHEV)」。2月初旬にプロトタイプを試乗することができました。

■第5世代プリウスは従来と何が違うのか?

第5世代になるプリウスは、従来より走りを追求したと謳われています。よりパワフルなPHEVモデルも同様。

外部充電が可能なプラグイン方式を継続使用するとともに、従来どおり、新しい2リッターエンジンも駆動力として使う独自のシリーズパラレル式ハイブリッドシステム搭載です。

システム最高出力は164kWと発表されています。これで前輪を駆動します。EV走行距離は約5割増し。

並行して、シャシーとサスペンションシステムに改良をほどこしたのも特徴です。シャシーの設計を一部変更したことで、サスペンションアームの動きにさらなる自由度が生まれるといいます。

カーブを曲がるときのライントレース性が高まるとともに、乗り心地が良くなり、静粛性も向上したそう。

上記には、バッテリーの搭載位置を変更して重心高を下げた設計も寄与しているようです。

さらに、フロント部分の曲げ剛性を上げたのも、今回の特徴。それによってハンドリングがうんと向上したといいます。

フロアには空気の流れをコントロールして、車体の浮き上がりを防ぐデザインを採用。自動車づくりの長い経験があらゆるところに活かされています。

■シャープな加速と路面に張り付くようなカーブ性能

はたして、開発陣の思惑どおりの出来映え、と、ショートサーキット(発売前なので公道試乗は不可)を走った私は、いたく感心。

加速感は、従来の1.8リッターのPHEVモデルでもけっして悪くないのですが、よりシャープ。さらに大きくちがうなと思ったのは、カーブを曲がるとき。

路面に張り付くように走る感覚が、新しいプリウス PHEVならではです。加速と減速とカーブを曲がる動きなどが、一体感として体感できました。

今回のプリウスは、空力の観点から車体のシェイプを決めるやりかたから離れています。

「デザイナーにカッコいいと思うスタイリングを描いてもらい、それを重視して開発しました」。開発を指揮した、トヨタ自動車の上田泰史チーフエンジニアは言います。

そのあと、従来より悪化した空力性能を”取り戻す”ため、前面投影面積を徹底的に抑えたそうです。タイヤサイズを195と細めにしたのも、CdA値を低くするためと説明されました。

195/50R19インチという、細くて大径の、ユニークなディメンションの専用タイヤです。

従来モデルは15インチあるいは17インチだったので、スタイリング上も見栄えがよくなったし、走りで不満は感じられませんでした。

■シートに除電性能を持たせ空力を整える着想

ユニークなのは、「除電スタビライジングプラスシート」の採用。車体まわりの風の流れをきれいに整えるための技術です。

トヨタ自動車のエンジニアは、各所の帯電が、ステアリングやボディの空力に影響を及ぼすことに、ずっと注目してきています。

今回はドライバーズシート座面一部に除電性能を持たせることで、車体の外部を流れていく空気が乱流を起こすことを防ぐのに成功したと説明されました。

これ、たいへんおもしろい着想です。以前、トヨタのエンジニアが除電のためのデバイスをボディ数個所に採用していることをドイツのメーカーのエンジニアに話したら、一笑に付されました。

ところが、除電をするのとしないのとで実験してみると、あきらかに走りが変わります。

こんなところにも、きちんと手が入っている。プリウスは代が変わっても、クルマ好きに愛されるクルマにしたい、と開発者の思いのゆえんでしょう。

>> トヨタ プリウス

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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