電気自動車というと、あのバッテリーに充電するタイプのクルマですよね。でもそれだけではないのです。
BMWが2023年2月中旬に、ジャーナリスト向けに試乗会を開いたのは「iX5」。充電しないタイプの電気自動車です。
iX5は、バッテリーに充電するのでなく、水素を燃料にして走ります。水素から電子を取り出して、電気を作り、バッテリーに蓄電するのです。
▲アントワープ港にある水素充填ステーションにて
▲日本では資格が必要な充填も実は簡単
余剰物として、ガソリンのような内燃機関では二酸化炭素とか排出されますが、燃料電池車では水が出ます。それだけ。
■ベルギー・アントワープでの試乗会
実際の走りは、バッテリーを使った電気自動車と同じ。試乗会の開催されたベルギー・アントワープで乗ったiX5は、力強い加速を味わわせてくれました。
▲今回の「パイロットフリート」はX5のプラグインハイブリッドモデルをベースに開発されている
実はBMWは、トヨタ自動車と包括的な技術提携を結んでいて、燃料電池の分野ではMIRAIで先んじているトヨタから、燃料電池の技術の提供を受けています。
▲iX5の燃料電池システムは、左(フロント)に燃料電池スタック、中央に2本の水素タンク、右(リア)にバッテリーとモーターの駆動系
ただし、BMWは「あくまでもBMW車を作ることにこだわります」(プロジェクトを統括するユルゲン・グルドナー氏)といい、パワー感も、操縦性も、従来のBMW車どおりという感じ。
そもそも、今回はまだ水素自動車のプロジェクトの序の口らしくて、実際に販売されるときは、X5の形態でない可能性のほうが高いようです。
ただ、アントワープでは、おなじみのX5の運転席に座れて、内燃機関搭載モデルとほとんど変わらない操作を体験できて、どこが新しいの? と思ったほどです。
▲軽快なハンドリングも実現可能と水素自動車の可能性を感じさせるiX5
▲時速180kmでずっと巡航できるのもiX5の特徴とされている
▲「Hydrogen(水素)」と大きく書かれているのが周囲のドライバーから注目されていた
■内燃機関搭載モデルと変わらない「ナチュラルな仕上がり」のすごさ
ハンドリングはクイックで、車体の動きは、ドライブしている私の意のまま。アクセルペダルを軽く踏み込むとすかさず加速し、ブレーキは強力。BMWの良さが味わえるモデルです。
どこが新しいの? どこがすごいの? 私がこう思ってしまったことが、実はすごいのです。つまりナチュラルな感覚で仕上げられています。
▲「I」シリーズのシンボルカラーである青色が各所に使われている
iX5は504kmの巡航距離を誇る一方、時速180kmでずっと走れて、その気になれば静止から時速100kmまでを6秒で加速できます。スペック的にはたいしたものです。
一方、なにも知らないで乗れば、スムーズな加速と、しなやかに動くサスペンションシステムと、高い静粛性などで、実に快適なクルマだなあ、で感想は終了、となりそう。
▲X5と共通のダッシュボードで違和感がまったくなかった
▲基本的にはX5のままのインテリアで、ナビゲーション画面には水素ステーションの地図が表示できる
▲後席はフロア高も低めに抑えられていて居心地がよかった
■水素で走るEVの必要性
なぜ、電気自動車に、バッテリーEVと、今回のような水素で走るEVが必要なのでしょうか。
BMWのエンジニアは、いくつかの利点を指摘します。ひとつは、BEVが増えていくと、ある時点で充電インフラへの投資が増大してしまうため、水素は効率のよい分散方法であること。
もうひとつは、水素の将来性です。運搬できるエネルギーであるため、豪州のように、水素をたくさん作れる土地からの輸入が可能なのです。
風力のような自然エネルギーや、褐炭を使っての電力で水素を作り、それを液化して特殊な運搬船で運ぶ。そんな流れが現実のものになりつつあります。
iX5は、プロトタイプ。今回、100台作られ、テストなどに供されるようです。
BMWの水素自動車が市販されるには、あと、6、7年かかるのでは、と前出のBMWのグルドナー氏はいいます。どんなスタイルで、どんな乗り味になるのか。楽しみです。
▲彩度の高い青色が目を惹く
▲水素タンクもドライブユニット床下にうまく収まっていて荷室は広い
▲X5のプラグインハイブリッドそのものの操作性
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/512923/
- Source:&GP
- Author:&GP
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