外資系企業日本法人代表が語る、レイオフ相次ぐ外資系企業での生き残り方。成果を出せない時にこそ「アカウンタビリティ」で生き残れ!

現職以前は複数の外資系コンサルティング企業で勤務された経歴を持つ、アジア9拠点で展開するデンタルケア企業の日本法人「Zenyum Japan」の代表取締役社長、伊藤祐氏。

今回は「アカウンタビリティ」をキーワードに、外資系企業が求める人材についてご寄稿いただきました。

外資系企業が共通して重要視するものとは?

私はアクセンチュア株式会社からキャリアをスタートし、現職に至るまで外資系企業で働いてきました。ひとことで“外資系企業”といっても、業種や組織の規模、日本展開年数などにより、会社の文化はさまざまですが、重要視される共通のポイントがあります。

今回は「アカウンタビリティ」をキーワードにしてその共通点を説明します。

労働基準法で守られた日本でも、退職勧奨が進む日が来る?

現在、全世界で大手テック企業でのレイオフが進んでいます。日本では労働基準法が定められているため、強制的な解雇が行われにくい一方で、GoogleやTwitterの日本法人で退職勧奨が行われたというニュースがありました。

同時に退職勧奨の対象者が、パフォーマンス、すなわち能力や業績を理由に選ばれずに、機械的に決まったのではないか?という憶測も飛び交っています。

もしも、この憶測が事実であれば、社員にとって非常に恐ろしいことです。毎日しっかり働き、キチンと成果を出しているのに職を失うかもしれないことに不安を感じるのは当然です。

成果を上げていても職を失うかもしれないことを「退職勧奨の対象となる時はなるんだし、日々あくせくする必要はない」とも捉えられそうですが、そう理解してはいけません。

今後の市況を考えた場合、少しでもパフォーマンスが低いと見做されたら、すぐに退職勧奨候補者リストに名を連ねるリスクが高まっているともいえるでしょう。

外資系企業で働くメリットとリスク

外資系企業で働くことには、さまざまなメリットがあります。昇進のスピードが一般的な日系企業と比べて早いことや、昇進に応じた給料の上がり幅が大きいことです。

さらに、自ら手を上げれば英語力を鍛えられるプロジェクトに入ることができたり、海外オフィスに移籍したりすることも可能です。

私自身がこれらの点に強く魅力を感じたため、外資系企業でキャリアを築くことに決めましたし、その選択に後悔はありません。

とはいえ、今回明らかになったように、雇用の安定性についてのリスクが高いことは事実です。

先に述べたように日本では労働基準法があるため、アメリカのようにすぐにレイオフされることは稀ですが、人件費最適化についての意思決定は、スピーディに大規模に行われるケースが多いのです。

努力が成果につながらない時も……ありますよね?

自発的な転職を考える機会はみなさんにもあると思います。とはいえ、寝耳に水の退職勧奨はできることなら遠慮したいものです。

その可能性を減らすためには、会社から「有用な人材である」と思われておくに越したことはありません。そこでみなさんはこうお考えになるはずです。

「なるほど。それならば、一生懸命がんばってパフォーマンスを上げよう!」

……そのとおりです。そのとおりなんですが、これがなかなか難しい。

毎月、会社から求められる結果をクリアし続けることができる“超ハイパフォーマー”なら良いのですが、現実的に無理があります。年齢や職位が上がっていくにつれ、仕事の範囲は広がっていきます。

成果を上げるためには、自分やチームの頑張りのみならず、タイミングや運が少なからず必要です。

結果にこだわることは大事ですし、ステキなことですが、「一回もミスれない」という強いプレッシャーを自らに課しながら仕事をすると、疲弊してしまい、逆に結果を出せなくなる危険もあります。

「アカウンタビリティ」で次のチャンスを逃さない!

いくら努力しても会社に求められた結果にたどりつけない時に重要になるのは、「アカウンタビリティ」です。

日本語でもっともしっくりくるのは「説明責任」でしょうか。「求められている結果が出せなかった」という事実を出発点とし、納得のいく説明をし、次の機会を獲得するのです。

・事実として数字はどうなっているのか、未達はどの程度だったのか
・なぜその未達が発生してしまったのか、原因は何か
・原因を解消するため対応策はどんなものか
その対応策にはどの程度のインパクトが見込めるのか

これらをしっかりと説明することができれば、結果が振るわなかったとしても、引き続きチャレンジする機会は得られます。その中であらためて結果を出すことができれば、「有用な人材」と認識されるのです。

もちろんすべての事象の原因をきれいにロジカルに整理することはできません。また、いくらアクションを考え抜いたとしても、不確実な未来において対応策が成果をたたき出す保証はありません。

しかしながら、原因の振り返りや説明もなく、ただアクションを打ち続ける人と比べて、毎回の事象を可能な限り言語化&定量化して、次につなげようとする人は、会社全体に良い影響を与える可能性が高いでしょう。

今後、日系企業においても、雇用の流動化が進むかもしれません。その時に備えて、自身の仕事のスキルアップに加え、「アカウンタビリティ」についても意識すると、日々安らかな気持ちで仕事を進められるようになるはずです。

<著者プロフィール>

伊藤祐
Zenyum Japan
代表取締役社長

アクセンチュア株式会社およびフロスト&サリバンジャパン株式会社において、約9年コンサルタントとして経験を積んだ後、OYO Japan株式会社において戦略企画室長を務める。その後、現職に就任。

著書『得する説明 損する説明』(SBクリエイティブ社)を2023年3月に出版。


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