アクロバット機らしい光沢仕上げの塗装テクニック【達人のプラモ術<F-4JファントムⅡ ブルーエンジェルス仕様>】

【達人のプラモ術】
造形村
1/48 F-4JファントムⅡ
ブルーエンジェルス仕様

02/06

さてさてブルーエンジェルス仕様のF-4ファントム製作第2回は、コクピットを組み込んだ機体の製作、そして塗装を進めていきます。ミリタリー系飛行機モデルの塗装といえば、ツヤ消し塗装が多いのですが、ブルーエンジェルスは飛行展示機チーム(アクロ機)なので、機体は美しい光沢塗装仕上げを目指します(そういえば前々回製作したブガッティ100Pも光沢塗装でしたね)。

F-4ファントムは、アメリカでは海軍と空軍、海兵隊に採用され、また航空自衛隊をはじめ西側諸国の多くで使われていたため、ハイビジ塗装、迷彩、ロービジ、さらにはさまざまな記念塗装やスペシャルマーキングの機体が数多くあり、そうした中でも海軍のブルーエンジェルス、空軍のサンダーバーズ仕様は模型映えすることもあって飛行機モデラーに人気があります。(全6回の2回目/1回目

▲塗装中のF-4Jファントム(右)と、以前制作したタミヤ1/48F-4BファントムⅡ(左)。マーキングはVF-51スクリーミングイーグルス。ハイビジ時代の派手なマーキングはF-4の魅力のひとつだ

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
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■インテークダクトの合わせ目を必ず消しておこう

前回製作したインテークダクトは内側にパーツの合わせ目が目立つので、パテを使い合わせ目を消しています。外から見ても分からないと言いますか、目立たない部分ですが、この作業をやっておかないと、ファントム大好きモデラーに見られた際に「手抜きしたな」と言われてしまうので、頑張って合わせ目を消しています。インテークを覗くと、継ぎ目のないダクトの奥にチラリと見えるエンジンのタービンブレードがなんとも堪りません(F-4ファントムのフェチ要素)。

▲ストレートに組むとダクトの中央にパーツの合わせ目が出てしまうためパテで修正する

▲奥に見えるのがエンジンのタービンブレード。ちなみに完成後はインテークを覗きこまないと見えない

 

■インテークベーンはいったん切り離しておく

F-4ファントムの特徴でもあるのですが、左右のインテーク(エンジンの空気取り入れ口)には大型のスプリッタベーンが取り付けられています。これがまたカッコいいのですが、塗装の際にいささか邪魔な存在になってしまいます。特に今回のような光沢仕上げでは、スプリッタベーンの内側部分が塗装しづらく、また塗装後に磨けないので仕上がりに影響してしまいます。

そこでスプリッタベーンをダクト内部に繋がる部分で、いったん切り離しておき、塗装後に取り付けるようにすると、塗装と研ぎ出しがぐっと楽になります。

▲インテークダクトと胴体の間に取り付けるスプリッタベーンはインテーク内の隔壁と一体になっている

▲何もせず取り付けてしまうと、ベーンと胴体の隙間部分の塗装がやりにくくなってしまう

▲ダクトの隔壁とスプリッタベーンをいったん切り離して、個々に塗装

▲塗装後、改めて接着することで塗装が格段にやりやすくなる

 

■インテーク周りは継ぎ目を丁重に処理しておく

パーツの嵌合精度は高いのですが、胴体と主翼付け根の下側とインテークダクトの合わせ目部分はF-4のキット製作の難所のひとつで、わずかですが段差や隙間が生じます。特にインテークダクトの合わせ目は目立つので、溶きパテなどを使ってしっかりと修正しておきます。

▲溶きパテと瞬間接着系パテを使い、インテークダクトの機体下面側に生じる継ぎ目と段差を修正しておく

▲上側もしっかり修正

 

■機体を磨いて下地を整える

主翼外翼を取り付けて、機体の基本的な組み立てが完了したら、パテを使用した部分などを中心に2000番のスポンジヤスリで磨いて、機体全体を平滑に研ぎ出しておきます。

▲機体表面を2000番のスポンジヤスリで研磨して整える

▲研ぎ出し完了

 

■いざ塗装! 今回はトリガータイプのエアブラシ使用

塗装はブルーエンジェルス専用色がラインナップされているMr.カラーの「328番(ブルーFS15050)」と「329番(イエローFS13538)」を使います(FSカラーとはアメリカのフェデラルスタンダード595で規定された指定色。政府調達物の色指定に使用されている) 。ブルーエンジェルスの機体色でもあるブルーは微妙な色調なので、Mr.カラーから専用色が発売されているのはありがたい限り。

塗装に際しては、通常使用しているダブルアクションのエアブラシではなく、単色で光沢塗装ということもあり、一気に塗料を吹き付ける作業に適しているトリガータイプのエアブラシ(クレオス「プロコンBOY PS275(口径0.3ミリ)」)を使用しています。

塗装はMr.カラー「328番」のブルーを塗料3:薄め液7で希釈して、塗装→乾燥→塗装で4回塗り重ねて仕上げています。飛行機模型の塗装というよりは光沢仕上げのカーモデルの塗装の感覚です。

▲機体色はMr.カラー「328番(ブルーFS15050)」と「329番(イエローFS13538)」を使用

▲「328番」のブルーは、イメージ的には青味の強いネイビーブルーだ

▲塗装サンプルを製作し、色のバランスをチェック

▲今回塗装に使用したトリガータイプのエアブラシ、クレオス「プロコンBOY PS275(口径0.3ミリ)」

▲塗装→乾燥→塗装と塗り重ねていく

▲4回塗り重ねて仕上げた状態

 

■機体パーツも同時に塗装

同じ塗料を使っても、後から別塗装すると微妙に色が変わってしまうことがあるので、機体の塗装と同時にキャノピーや脚カバーといったパーツも同時に塗装しておきます。その際、機体と同じく下地にグレーサフを塗装、ブルー塗り重ねる回数も機体と同じく4回と同じ条件で仕上げるようにします。

▲キャノピーは内部色の黒→グレーサフ→Mr.カラー「328番」の順に塗塗り重ねて機体と色を合わせている

▲脚カバーなども胴体と同じ条件で塗装する

 

■塗装面を研ぎ出し研磨

1/48スケールなので機体全長も30センチ近くあり、翼面積も大きいので、塗装もそれなりに大変。ちなみにMr.カラー「328番」のブルーは機体の塗装に1.5本使用しています。また大きいサイズなので、どうしても塗装面のホコリの付着や部分的なムラ(ざらつき)が生じてしまうので、塗装乾燥後(最低で24時間は必要)に2000番のスポンジヤスリとコンパウンドを使い塗装面のホコリを研ぎ出し、ざらついた部分を平滑に仕上げていきます。この後、デカールを貼り込んで、さらにクリアー塗装を施すことで塗装面の鏡面仕上げを目指します。

▲塗装乾燥後に、2000番~3000番のスポンジヤスリとコンパウンドを使い水研ぎして、塗装面に付着したホコリやざら付きを修正していく

▲機体色の塗装と研ぎ出しが完了!

 

■次回はいよいよデカール貼り!

今回の作業はここまで。光沢塗装では、ともかくしっかりと乾燥させることが大事です。乾燥時間をしっかり取ることで完全に溶剤が抜けて塗膜が硬くなり、塗装面に傷をつけてしまう、コンパウンドを使った研ぎ出し作業で下地が出てきてしまう、といったトラブルを減らすことができます。

次回はいよいよデカールを機体に貼っていきます。デカール貼りは模型製作でいちばん楽しい作業ですね! お楽しみに!

 

■映画にもなったブルーエンジェルス

ブルーエンジェルスは高い人気を誇るアメリカ海軍の飛行展示チームということあって、1975年に映画化もされているんですね。映画『BLUE ANGELS THRESHOLD: THE BLUE ANGEL EXPERIENCE』日本でも公開(邦題:ブルーエンゼル)されたこともあって、当時高校生だった達人も映画館に観にいきました。

劇中で登場する機体はF-4JファントムⅡでしたが、当時部隊はA-4スカイホークに機種改変されておりパンフレットにもその点が記載されていました。

ビデオや大画面TVなんてない時代でしたから、劇場のスクリーンに映し出される大迫力のF-4ブルーエンジェルスのフライトに圧倒されたことを覚えています。

当然ながら帰りには、鼻息荒く模型店に直行、当時発売されていたRevell社の「1/72 USNAVYs BLUE ANGELSキット(4機セット)」を購入しました。しかし当時は模型製作のテクもなく、残念ながら完成させることができませんでした。今回のブルーエンジェルスの製作は48年目のリベンジといったところです。

▲映画『BLUE ANGELS THRESHOLD: THE BLUE ANGEL EXPERIENCE』アメリカ Color 95分、初公開日:1975年

▲当時発売されていたRevell社製の「USNAVYs BLUE ANGELS(4機セット)」。中身は。ブルーのプラスチックで成形された機体に4機を同時に展示できるクリアイエローで成形された専用のディスプレイスタンドが付属していた。しかし肝心の機体の出来があまり良くなく(似ていないとも言う)、また付属のデカールが水に漬けると粉々に割れるというシロモノでありました

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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