ティム・クック最高経営責任者(CEO)の発言によって、Apple株の取引で損失を被ったとする投資家たちの集団訴訟について、裁判官が原告側の主張に好意的な姿勢を改めて示しました。この訴訟は執筆時点で4年近く続いています。
■3行で分かる、この記事のポイント
1. 2018年になされたクックCEOの発言を巡る裁判が一歩前進した。
2. 発言で欺かれたと主張する投資家と、単なる意見だとするAppleで衝突している。
3. Apple株を売らずに持ち続けていれば当時から5倍に。
原告の言い分に理解示す
中国でのiPhone売上が想定を下回っていることを明らかにせず投資家を欺いていたと主張する集団訴訟について、米カリフォルニア州地方裁判所のイボンヌ・ロジャーズ判事は、原告側の言い分に正当性を認める判断を改めて下しました。
集団訴訟を起こした側は、ティム・クックCEOの事実に基づかない発言によって、株取引で大きな損失を被ったとする一方、Appleは同氏の発言が単なる「意見」に過ぎないと反論していました。
発言から数日後に減産発表
2018年秋、Appleは大きな危機に直面していました。前年にリリースしたiPhone Xの後継モデル「iPhone XS」を始めとして、iPhoneの売れ行きが想定外に伸び悩んでいたのです。
当初の量産計画を見直す報道が繰り返されるなか、投資家の不安を解消すべく、ティム・クックCEOは、新興国を中心としてiPhoneの売上が厳しい状況に置かれていることを明らかにしました。しかし同時に、クックCEOは「(この状況に世界トップのスマートフォン市場である)中国は含まれない」とも述べていました。
この発言から数日後、Appleは中国でのiPhone需要減を理由として減産を決定、収益の見通しを引き下げます。この発表で投資家はパニックとなり株価は10%下落しました。
「過去の業績の意見」と反論してきたが
集団訴訟についてAppleは、クックCEOの発言が単なる意見ではないと反論、訴えを棄却するよう主張してきましたが、2022年2月に同社の主張は却下され正式に裁判が実施されることが決定しました。
そして2023年6月26日、クックCEOは中国での売上見通しについて述べたと合理的に判断できるとの陪審員の意見を踏まえ、ロジャーズ判事は改めて、(Appleが主張するように)過去の業績や為替変動リスクについて述べたのではないとの意見を表明しました。さらに、不利なデータを認識していながら投資家に伝えずミスリーディングに導いたことは、法律に違反していた可能性があるとも指摘しました。
持ち続けていれば株価は約5倍
iPhone13やiPhone14シリーズが中国で売上上位ランキングを席巻していることを思うと、今となっては遠い昔の話ですが、投資家にとっては懐かしい思い出では済まされません。それは4年近く経っても、一向に裁判が収束する様子を見せないことからも明らかでしょう。
とはいえ、この減産騒動でパニック売りしていなければ、2018年12月から現在(2023年7月23日)の間に、Appleの株価は約5倍に成長しています。
Source:Reuters,Top Class Actions
(kihachi)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-546327/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania
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