「塗装したボディの研ぎ出し」と「ウィンドウトリムの塗装」を解説【達人のプラモ術<ポルシェ935マルティーニ>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
グランプリコレクション
1/20 ポルシェ935マルティーニ
02/05

1/20ポルシェ935マルティーニ製作の第2回は、ボディの白塗装研ぎ出しとフロントスポイラー塗装、エンジンの製作、そしてなかなか手強いウインドウのトリム塗装を解説していきます。(全5回の2回目/1回目

▲ホワイト塗装が完了後、3日間乾燥させたボディ

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
でもレビューを配信中。

 

■大事なのは塗装の乾燥時間

前回は、ボディ塗装に缶スプレーを使いベース色となる白を塗装しました。乾燥には3日間おいています(完全乾燥を望むなら一週間)。ラッカー系塗料は乾燥が速いのが特徴ですが、乾燥時間をしっかりと取ることで塗膜が硬くなり、研ぎ出しやマスキングでのトラブルが防げます。ボディの塗装は焦らずしっかり乾燥時間を取る必要があります。

★要注意!乾燥時間が足りないと…

※マスキングの際にテープの跡が塗装面に残ってしまう!
※塗膜が柔らかいため塗装面に簡単に傷がついてしまう!
※重ね塗りをした際に下地色が溶け出すことが!
※研ぎ出しで下地が出てしまう!

 

■ボディの研ぎ出し

しっかり乾燥させたボディですが、右ドアとボンネット上に細かいゴミの付着、またルーフの塗装面の一部にゆず肌(ザラつき)が生じていました。こうした部分は塗装面の研ぎ出しで修正していきます。それにしても事前にしっかり注意したつもりでも、ホコリはどこからともなくやってくるんですよねぇ…。

塗装面に付着したホコリは研磨スポンジの1000番で研ぎ落していきます。幸い今回は塗装表面にホコリが付着しただけなので、簡単に研ぎ落すことができました。しかし塗料内にホコリを取り込んでしまっている場合は、簡単には取れないので、慎重に研ぎだしていく必要があります。

研磨作業でもし下地が出てしまった場合は、タッチアップ塗装が必要になります。ザラついた塗装面は1000番→1500番→2000番(※水研ぎ)で、表面を平滑に研ぎ出していきます。その後2000番→コンパウンド粗目→コンパウンド→細目→極細の順番でボディ全体を研ぎ出していきます。この際にボディ表面の凸部分は下地が出てしまいやすいので、保護用に小さく切ったマスキングテープを凸部分に貼っておくと良いでしょう。

またコンパウンドは、コンパウンド用クロスや研ぎ出しクロスを使いますが、達人の場合、細かな部分や凹凸のある部分は指先に直接コンパウンドをつけて研磨しています。パーツの形状に応じて、力加減をコントロールできるので、研ぎ過ぎで下地が出てしまうといったとトラブルを抑えることができます。

<ボディ乾燥後の塗装面check!>

▲ボディ乾燥後のチェックでホコリの付着とルーフの一部がざらついていることが発覚

▲ルーフの塗装面に生じたゆず肌を研磨スポンジの1000番(粗研ぎ)→1500番(中研ぎ)で研ぎだして平滑に整える

▲コンパウンドを使い塗装面を砥ぎ出し(仕上げ)ていく。使用しているのはタミヤコンパウンド粗目。クロスと併せて指を使って粗目→細目→極細の順番で磨き上げていく

▲研ぎ出しの後は、必ずボディを水洗いしてモールドに入り込んだ研磨カスやコンパウンドを洗い落しておくのを忘れずに。コンパウンドはワックス成分が含まれているものが多く、そのままにしておくと後の塗装で、塗料がはじかれるといったトラブルの原因になってしまう

▲ボディ全体をコンパウンド砥ぎ出ししていたら、リアのオーバーフェンダーのエッジ部分の下地が出てしまった(矢印の部分)。こうしたエッジ部分は力が集中してしまうので、研ぎ出しの際は注意が必要だ。幸いこの部分はデカールで隠れてしまうのでタッチアップはしていない

▲タミヤ「コンパウンド用クロス」(3枚セット1100円)。コンパウンドを使った研磨・ツヤ出し作業に最適の超極細繊維の磨き布。 起毛処理された超極細繊維クロスによりみがき傷ができにくい

※水研ぎ
塗面を平滑にするため研磨材(ここでは研磨スポンジ)に水をつけながら研磨すること。研磨カスで目詰まりしにくい、研ぎ味が長持ちするといったメリットがある。

 

■フロントスポイラーの塗装

ボディはフロントの大型スポイラー下側部分を赤で塗装する必要があります。フロントブレーキ冷却用エアダクトなど複雑な形状をしているので、マスキングがちょっと難しいのです。小さくカットしたマスキングテープをパッチワークよろしく貼り込んで、しっかりとマスキングしておきます。

塗装はタミヤ缶スプレーの「TS-86ピュアーレッド」を使いました。スポイラー部分は凹凸が多いので、一気に色を乗せるのではなく、シュッシュッとショートストロークで吹き付けることで、奥まった部分も均一に塗装できます。塗装後10分程度してからマスキングテープをはがしてそのあとしっかり乾燥させます。ピュアーレッドのはみ出しは、コンパウンドとタッチアップで修正します。

▲缶スプレー「TS-86ピュアーレッド」を使いスポイラーの下側部分を塗装。一気にドバッ吹きつけ過ぎないように、気を使いながら吹き付けるのがポイントだ

▲塗装はボディの白と同様にしっかり乾燥(1日)させる。ブレーキダクト部分のはみ出し(矢印部分)はコンパウンドと筆塗りタッチアップで修正する

 

■エンジンの製作

ボディ塗装を換装させている間に、エンジンの製作を進めます。

キットのエンジンはシンプルなパーツ構成ですが、水平対向空冷6気筒、560馬力のターボエンジン(排気量2857cc)が雰囲気良く再現されており、リアウイングを取り外せば見ることもできます。

オレンジ色での塗装が指定されているエンジンカバーと空冷ファンは、実車が無塗装のFRPなので指定色にほんちょっと白を加えると、よりそれらしい質感になります。1/12スケールのポルシェ935では、同じパーツがFRPの素材色で成形されており、塗装しなくてもリアル!と発売当時話題になりました。

<Before>

▲エンジンのパーツ。細かい塗り分けが多いので、個々に塗装して組み上げる

<After>

▲これに排気管やターボユニットを組み合わせればエンジンの完成だ

▲塗装して完成したエンジン。よりディテールを求めるならプラグコードの追加が効果的

▲キットには電動走行モデル当時のパーツが付属している(再販キットでは未使用パーツ)。エンジンルームにはモーターやギアボックスが収まっていたので下回りのみ再現されていたのが分かる

▲タミヤ1/12ポルシェ935マルティーニのボックスアート(再販版)。内部図解のイラストが素晴らしい。エンジンの塗装の資料になる

 

■ウィンドウトリムの塗装

カーモデルのプラモデルで、ここが苦手と言う人が意外に多いのがウィンドウトリム(フロントガラスやサイドウィンドウの周りにある枠の部分)。カーモデルではほとんどの場合、ボディと一体成型されています。

本キットも同様で、セミグロスブラックで塗装する必要があるのですが、曲線で構成されているのと、古いキットゆえに一部分ですがトリムのディテールがよれており、塗装をするとなるとキレイに仕上げるのがなかなかに大変です。

とはいうものの、ボディが白だけにウィンドウトリムの黒が目立つのと、ここがバッチリ塗れているとボディがぐっと締まって見えるので、シャープにキレイに塗り上げたい部分ではあります。

コツとしては塗装にアクリル塗料のセミグロスブラックを使用することです。

ボディはラッカー系塗料の白で塗装していますから、上からアクリル塗料を塗り重ねるのは問題ありません。

マスキングテープは曲線にカットしたものを貼り重ねて、ウィンドウトリムのラインをしっかりと出しておきます。シャープに仕上げなくてはいけないので塗装はエアブラシを使いました。

ウィンドウトリムの塗装にアクリル塗料を使った理由は、よしんばマスキングからはみ出してもボディの白塗装を侵さないので、アクリル溶剤で拭き取りが可能だからです。また半乾燥状態であれば綿棒や爪楊枝の先端にコンパウンドをつけて削り落とすことで、下地のボディ塗装を痛めることなく修正が容易にできるからです。

▲凸でモールドされているトリムがカクカクしたラインにならないよう、ウィンドウトリムのモールドに合わせて細切りしたマスキングテープを貼り重ねて、自然な曲線を出していく

▲水性アクリル塗料のセミグロスブラックをエアブラシで塗装。筆塗でもいいのだが、毛細管現象でモールドの凹部分に塗料が入り込みやすくハミ出しやすいのが難点

 

■ボディ塗装の完成!

フロントスポイラーの赤塗装とウィンドウトリムが完了。しっかりと乾燥させて、次なる工程はポルシェ935マルティーニカラーのハイライトともいえるデカール貼りです! 大判のストライプデカールをボディに貼っていきます! 乞うご期待!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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