製作のハイライト「大判ストライプデカールの貼り方」を解説【達人のプラモ術<ポルシェ935マルティーニ>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
グランプリコレクション
1/20 ポルシェ935マルティーニ
03/05

ポルシェ935マルティーニの製作の第3回! 今回は本キット製作のハイライトともいえるマルティーニカラーのデカールを貼っていきましょう! フロントからルーフにかけて、そして大きく張り出したリアフェンダーからボディサイドの大判ストライプデカールをいかにキレイに貼り込むか。ちょっと難易度は高いですが、デカールをキレイに仕上げれば、イッキにモチベーションアップすること間違いなし!(全5回の3回目/1回目2回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
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■デカールはカルトグラフ製

以前のキットでは、このマルティーニカラーのデカール貼りは、シワが入るわ破けるわとずいぶん泣かされた記憶があります。スポンサーロゴやゼッケンなど平面に貼る部分では、問題ないのですが、曲面で構成された大型のリアフェンダーからボディサイドへの大判のストライプの貼り込みでは、シワが入る、馴染まない、破れる等々トラブルの連続でなかなかに大変でした。

とはいうものの、今回のキットには、高品質なカルトグラフ製デカールが付属しています。発色が良く、またフィルムの柔軟性が高いので曲面へも馴染ませやすいといった特徴があるので、今回はグッとデカール貼り(大判ストライプ)の難易度が下がった感があります。

▲基本塗装を終わらせ、3日ほど乾燥させたボディとキットに付属しているカルトグラフ製デカール

<カルトグラフとは>

イタリアのカルトグラフ社のことで、最高品質を誇るデカールを製作販売している会社です。一般的なデカールオフセット印刷がほとんどですが、同社のデカールはスクリーン印刷を採用しており、発色が良く、細かな文字などもシャープに再現。また下地の色が透けることもありません。さらに柔軟性が高いので、曲面への貼り込みがやりやすくキレイに馴染んでくれます。経年変化にも強いといった特徴もあります。ただし通常のデカールに比べて高価です。

▲デカールの台紙にはMADE BY CARTOGRAFのロゴが入っている

 

■デカール貼りの基本

① 1枚ずつカットして使用する

今さらですがデカールはいっぺんに水に漬けちゃいけません。使用するデカールを1枚ずつ台紙ごとカットして使用します。

②水に漬けたままにしない

デカールを水に漬けたままにして、水の中で台紙から浮き上がってくるまで漬けておくのはNGです。デカールには水溶性の糊が使われているので、水に漬けたままにしておくと糊の成分が溶け出してしまい定着力がなくなってしまいます。なので水に10秒~15秒ほど水に浸したら台紙ごと引き揚げて、そのまま置いておけばOK。糊成分が失われません。

③指でデカールを扱わない

デカールを貼る際に指でデカールを扱うと、折れ曲がる、丸まってしまう、あるいは指側にくっついてしまうといったトラブルの原因になるので、必ずピンセット(デカール専用のピンセットだとベター)を使います。

④位置修正の際はたっぷりと水を使う

一度貼ったデカールは一度貼って時間(5分~10分)がたってしまうと糊が乾きだすので位置修正がしづらくなります。無理に動かそうとすると破けてしまいます。修正する場合はデカール表面にタップと水気を与えてやれば、糊が溶け出して動かすことができます。ただしマークセッターやデカール糊を使用して1日以上時間がたって完全に乾燥している場合は、修正は困難になります。

 

■あると便利なデカール貼りサポートアイテム

タミヤ
「マークフィット」(275円)

貼り込みの際に塗りこむことでスライドマーク(デカール)を軟化、貼りにくい凸凹面や曲面、つや消し面にフィットさせ、接着力も高めてくれる。マークセッターでは溶けてしまうようなデリケートなデカールにも最適。

 

Mr.ホビー
「Mr.マークセッター」(280円)

デカール用のノリ剤と軟化剤が含まれており、塗装面にしっかりとデカールを貼り付ける効果が高く、またフィルムが白くなるシルバリングを抑えてくれる。使用に際しては、デカールを貼る面に先に塗っておく。密着力が弱いデカールや接着性が強くないデカールなどに効果が高い。

 

Mr.ホビー
「Mr.マークソフター」(275円)

強力なデカールの軟化剤。デカール貼る場所に塗布して使用する。曲面などデカールが馴染みにくい際に効果が高い。使用すると急速にデカールが軟化するため、塗布しすぎるとデカール自体が溶けたり塗装面を浸食する場合がある。効果が強力なので使用に際しては事前に使用するデカールとのパッチテストをオススメする。

 

タミヤ
「デカールピンセット」(1760円)

デカール貼りに特化したステンレス製ピンセット。精度が高く矢尻型の先端で小さなデカールはもちろん大きなデカールもしっかり掴むことができて、傷つけることがない。

 

■いざ!デカール貼りの実践

まずはボンネットとルーフのストライプから貼っていきます。

台紙ごと切り出したデカールを水に10秒程度浸けておきます。指で触って台紙の上でデカールのフィルムが。すっと動けばOKです。

台紙ごとデカールを貼る位置に持っていき、台紙をゆっくりと引き抜き、デカールをボディに移します。位置修正は水をたっぷりつけて行うのがポイントです。キムワイプを使って水分を拭き取りながらデカール内側に残った気泡を押し出してやります。

▲切り出したデカールは、台紙ごと15秒程度水に漬けて全体に水が染み渡らせてから引き揚げること

▲デカールを貼る部分(ボディ側)を水で濡らしておくと密着させやすく、また後の位置修正がやりやすくなる

▲大判のデカールは台紙ごと貼る位置に持っていき、ゆっくりと台紙を引き抜いてデカールをボディ側に移してやる

▲デカールとボディ間に気泡が残っていた場合、綿棒で内側から外側に気泡を押し出していく

▲綿棒は必ず塗らしておくこと、乾いたままの綿棒だとデカールに傷をつけることがある

▲ボンネット上のストライプはフロントガラス側で2枚に分かれている

▲デカールの合わせ目部分をしっかりと密着させるため、マークフィッターを塗布して綿棒で密着させる

▲ボンネットとルーフのストライプデカールを貼り終えた状態

日本製紙クレシア
「キムワイプ」(200円前後)

試験管やビーカーなどの実験器具の清掃に使われている紙製のシートで、繊維くずが出ないのでデカール貼りの際に水分の拭き取りに使用する。ティッシュを使って水分を拭き取った場合、デカールの裏側に繊維(パルプ)くずが入ってトラブルの原因になってしまう。

 

■ボディ両側のストライプを貼る!

さて、ボンネットとルーフ上のストライプを貼り終えたら、いよいよオーバーフェンダー上のストライプを貼っていきましょう。今回の作業のハイライトです。

デカールは2分割されており、それを重ねていきます。

平面のデカールを曲面に貼り込んでいくのにはちょっとコツがあります。カルトグラフのデカールはフィルムに柔軟性があるので、かなり曲面でも馴染ませることができます。しかし部分的にはマークフィッター使用してもシワが生じやすいので、オーバーフェンダーのRのきつい部分にかかるデカールに2ミリ程度切れ込みを入れ、デカールのシワを逃がしています。切れ込みを入れすぎるとストライプに段差が生じてしまうので要注意です。

▲オーバーフェンダー上のデカールは、左右それぞれ上下2枚をオーバラップさせながら貼ることで、曲面にもしっかりと馴染ませられるようになっている

▲ボディ外側からストライプを貼っていく

▲フェンダー上のインテーク部分の切り欠きをガイドにすると位置決めがしやすい

▲Rがキツくデカールが馴染ませにくい部分はマークフィッターを塗布して濡らした綿棒で馴染ませていく

▲デカールが浮いてシワが出来る箇所は、デザインナイフで2ミリほど切れ込みを入れて密着させる

▲外側のストライプを貼り終え、1時間ほど乾燥させたら、内側のストライプを同じ要領で貼っていく。外側のストライプが乾いていないと内側を貼っている時に位置がズレてしまうので気を付けたい

▲ストライプを貼り終えたら、ゼッケンやスポンサーデカールを貼っていく

 

■デカール貼り完了!

デカールが貼り終わりました。質の良いカルトグラフ製なので。定着性が良く、正直貼りやすかったです(笑)。

失敗しないコツは焦らないこと。1枚ずつ丁寧に貼っていく、しっかり密着させる、位置修正の際はたっぷりと水をつける、といったところです。もし破れたり傷ついた箇所が出たらは、あとから塗装でタッチアップしていけばOKです。

さて次回は、デカールの水分が完全に抜けるまで乾燥(最低でも3日以上)させた後、クリアーでデカールの上からボディのオーバーコート塗装を行い、再び研ぎ出します。乾燥させている間に足回りやインテリの製作も進めておきましょう。

それではまた次回をお楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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