東大発スタートアップのEVERSTEEL、鉄スクラップAI解析システムで鉄鋼業界の脱炭素に挑む

東大発スタートアップの株式会社EVERSTEELは、「鉄の未来を切り拓く」というミッションを掲げ、現在、鉄鋼業界の脱炭素を実現すべく、鉄スクラップAI解析システム(鉄ナビ検収AI)を開発しています。

今回は、鉄鋼業界における課題を踏まえ、同社のプロダクトや今後の展望などについて紹介しましょう。

転換期を迎えた鉄鋼業界の課題

鉄は世界で最も多く使用されている金属であるとともに、全産業の中で最大の二酸化炭素排出産業でもあります。

そのような状況の中、鉄鋼業界では、石炭を燃やして鉄鉱石から鉄を作る「高炉法」から、鉄スクラップを電気で溶かしてリサイクルにより鉄を作る「電炉法」への大きな転換期を迎えているのだそう。

しかし、鉄スクラップには鉄以外の不純物や爆発物などが混入するケースがあり、各鉄鋼メーカーではベテランの作業員が目視で品質チェックをしなければならず、人による判定のバラツキや見逃しが品質面・安全面から深刻な課題となっていました。

鉄スクラップ解析アプリを開発中

株式会社EVERSTEELは、鉄スクラップ解析アプリを開発中。鉄鋼会社などのスクラップヤードに取り付けたカメラによりスクラップを撮影し、AIにより等級判定や異物検出を自動で行うアプリです。

等級判定や異物検出には同社が独自に開発した画像解析アルゴリズムを採用。単なる画像解析の技術力だけでなく、開発者自らが現場に通い、現場の検収員の検収方法を学び理解することで、現場で使える高性能なAI開発に成功しました。

同アプリを活用することで、検収作業の効率化・省人化だけでなく、希釈コストの削減や密閉・爆発物による危険防止の効果が期待できるでしょう。

鉄スクラップの品質判定AI、危険物検出AIなどの開発へ

株式会社EVERSTEELは現在、鉄スクラップ解析アプリの本格運用に向けたβ版の開発を行っています。

2023年9月には、プロダクト開発および組織拡大への投資資金として、DCMベンチャーズより2億円の資金調達を実施しました。

今後は、鉄スクラップの品質を判定するAI、危険物や非鉄金属を検出するAI、厚み・サイズ・鋼材の種類などパーツレベルで判定できるAIを開発する見通し。

また、多様な工場環境に適応するためのハードウェア、工場の基幹システムとの連携機能などの開発も視野に入れています。

さらに、事業開発、AIエンジニア、ソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャーなど幅広い職種の採用を行い、組織拡大を図るとのことです。

そして将来的には、鉄リサイクルのフローの中の「検収」にとどまらず、「調達」「配合」「製造」までサポートし、技術の力で新しい製鉄の形を作りたいとしています。

参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000103001.html

株式会社EVERSTEEL 公式サイト:https://eversteel.co.jp/

(文・Higuchi)


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