垂直着陸×ビーストモードという“スペシャル仕様”で「F-35B」完成!【達人のプラモ術<F-35B ライトニングII>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
1/48 傑作機シリーズ No.125
「1/48 ロッキード マーチン F-35B ライトニングII」
06/06

タミヤの最新キット「F-35BライトニングII」が発売になりました! 話題のキットということもあって、すでに模型店で手にされた方も多いと思います。さて完成編となる今回は、完成に至る製作のポイント、そして改めて本キットの凄さについて解説したいと思います。(全6回の最終回/1回目2回目3回目4回目5回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■部隊マークは派手なVMFA-242バッツをチョイス!

前回、機体各部にコーションマークデカールを貼りましたが、まだまだデカールは沢山あります。まずは垂直尾翼に映える部隊マークです。今回選んだ部隊マークは『アメリカ海兵隊 VMFA-242バッツ(指揮官機)発着艦試験時』で、モノトーンの機体に赤が映えるマーキングです。モノトーンのいずものマークも描かれています。またリフトファンカバー裏にはバッツの蝙蝠マークが入りますが、イタリア空軍などに比べるとちょっと地味な印象です。

デカール貼りでちょっと難しいのが、キャノピーの細いライン(キャノピー破砕コード:脱出する際にこのコードが爆発してキャノピーを破壊してから射出座席を打ち出す)です。4本を組み合わせる上に、持ち上げるとねじれやすいので台紙からスライドさせて貼るのをオススメします。

▲キットには3か国7種類のデカールが付属している

▲垂直尾翼に描かれたMFA-242バッツ(指揮官機)発着艦試験時のマーキング。グレーで目立たないが着艦試験を実施した自衛艦『いずも』のマークも入る

▲垂直着陸モードをチョイスした場合、搭載できるのは自衛用のAIM- 9Xサイドワインダー2発(ビーストモード仕様での主翼パイロンに搭載)とウエポンベイ内のAIM-120Cアムラーム2発のみとなる

▲耐レーダーコーテイングを再現した彩色済みキャノピーに貼る4枚の破砕コードのデカールは細いので扱いに要注意

▲キャノピーには専用のマスクシールが付属。塗装でのマスキングストレスがない

▲リフトファン内側にはMFA-242バッツの蝙蝠マークが描かれている。地味だが、チラ見せを楽しめる良きワンポイントだ

 

■機体をセミグロスクリアーでオーバーコート塗装

デカールの保護と機体塗装を整えるためのクリアーによるオーバーコート塗装は、フラットクリアー(つや消し)ではなく、やや光沢感のあるセミグロスクリアー(タミヤ「ラッカー塗料 LP-24」)で仕上げています。F-35のRAMコーティングは、見る角度や気象条件で色味や質感が変わって見えるモデラー泣かせの塗装なんですが、スケールモデル的にはセミグロスクリアー仕上げが良いでしょう。

▲タミヤ「ラッカー塗料 LP-24 セミグロスクリアー」(220円)溶剤6:セミグロスクリアー4の割合で希釈してエアブラシで機体をオーバーコート塗装している

▲セミグロスクリアーでオーバーコート塗装したことで、不自然なデカールのテカリがなくなり、塗装とのツヤが統一されて機体が締まってみえる

 

■スタンドモデルなのでパイロットを乗せる

キットには大変出来の良いパイロットフィギュアが付属しています。特徴的なHMDS(ヘッドマウントディスプレイシステム)を組み込んだヘルメットは、材質のカーボンパターンと部隊マークがデカールで再現されているのがありがたい限りです。

機体はバーチカルランディング(垂直着陸)仕様のスタンドモデルで製作しているので、基本パイロットは乗せなくてはいけません。通常はパイロットを乗せるとコクピットのディテールが見えなくなるので乗せない派なんですが、F-35はフレームのない大型キャノピーを採用しているので、コクピット内部のディテールも良く見えて出来の良いフィギュアが引き立ちます。

▲HMDS(ヘッドマウントディスプレイシステム)を組み込んだヘルメットも正確に再現されたパイロットフィギュアとシートは筆塗り塗装で仕上げている

▲シート取り付けて計器盤を組み込んだグレアシールドをコクピットに取り付ける

▲先に計器盤を取り付けてしまうとパイロットが収まらなくなるので要注意

▲大型で歪みのないキャノピーはピタリと機体に取り付けできる。接着の際には内側に指紋や汚れを着けないよう気を使いたい

 

■全部開けました、全部積みましたスペシャルモード!

さて、コクピットをはじめ、ウエポンなども仕上げたら、いよいよ最終組み立てです。機体はバーチカルランディング(垂直着陸)仕様、ビーストモードでのウエポンてんこ盛り、さらにウエポンベイ内部も全部見せますモードで製作を進めていたワケですが、なんと!ここまで来てウエポンベイの外扉は閉めると指定されていることが発覚。よくよくインストを見たら「垂直着陸時には爆弾は取り付けません」って53ページに書いてありました(驚)。

てことはビーストモードの翼下パイロンにレーザー誘導爆弾GBU-12ペイブウェイⅡも搭載できないってことなんですね。ここまで作ったのに、それはないよぉとボヤいても後の祭り、製作前にインストを斜め読みしかしないダメモデラーの末路であります。

ぶっちゃけビーストモードの駐機仕様で製作すれば、ウエポンベイが開いていても違和感はないのですが、それだと背中のリフトファンカバーや補助インテークカバーを閉じなくてはいけないし、エンジンノズルもフツーで面白くないんですね。

せっかく塗装したウエポンベイの超絶ディテールはどうしても見せたいし、ステルス性能を犠牲にしたビーストモードの翼下パイロンだってGBU-12ペイブウェイⅡ積まなきゃ意味がない。

というわけで作例は、扉は全部開けて、ウエポンも全部搭載しちゃいました。強いて言うならば、「短距離離陸モードだけどウエポンベイ全開で、でもエンジンノズル下を向いてます仕様」となりました!

実機の垂直着陸仕様で爆弾搭載はありえないのですが、スケールモデル的な見栄えを優先した、見どころ満載仕様です。

▲垂直着陸のビーストモードで製作した場合、見ての通りウエポンべイの外扉が閉状態となり、内部のディテールがほとんど見えなくなる。また主翼パイロンはいちばん外側にサイドワインダーを搭載できるが、GBU-12ペイブウェイⅡは搭載不可となる。ウエポンベイの内側扉はリフトファンからの空気の流れをコントロールするために開けた状態となるとのこと

▲指定どおりに製作した垂直着陸仕様のビーストモード。これはこれでカッコ良いのだが、ウエポンベイを作り込んだ身としてはちょっと寂しい

▲インストの指示のとおりに製作すると、ウエポンベイ内部ディテールもほとんども見えなくなり、翼下にはAIM-9サイドワインダー以外のウエポンも搭載できない。それではつまらないので作例はスケールモデルとしての見栄え優先で『全部開けました、全部積みましたスペシャルモード』で製作。主翼パイロンにはGBU-12ペイブウェイⅡを4発、ウエポンベイにはAIM-120Cアムラームに加えGBU-32JDAMを2発搭載したフル搭載状態としてみた

▲キット付属のGBU-12ペイブウェイⅡとGBU-32JDAM

 

■垂直着陸が可能なら垂直離陸はできるのか?

ところでF-35Bは垂直着陸が可能なんだから、VTOL戦闘機の先輩ホーカーシドレー・ハリアーのように垂直離陸もできるんじゃないのかと考えますよね。そこんところ調べてみたらF-35Bは垂直離陸推力が約19トンあるのですが、燃料満載時の機体重量は約21トン、これに武装が約6.5トン加わるので、つまるところ燃料を満タンの無武装状態でもリフトシステムの推力以上の重量があるため、垂直離陸はできないんですね。燃料と武装も減らしてならば可能でしょうが、実際の作戦運用では基本垂直離陸は想定されていないようです

 

■スタンド+アクリルミラーで魅せる

さてF-35Bの見どころは、やっぱりディテール満載のウエポンベイに、ジェットノズルが下を向いた機体裏側です。ビーストモードにしても主翼パイロンに搭載ウエポン類が見せ場になります。それに見どころ満載仕様で製作していますしね。

キットには専用の展示スタンドが付属していますが、やはり機体を裏返えさないとウエポン類は見えません、なんとも悩ましいところではあります。こういった場合は、展示スタンドの下にミラーアクリル板を敷くことがオススメです。これなら通常の展示でも機体を裏返すことなくディテール満載の機体下面を映して堪能できます。

ミラー仕様のアクリル板はホームセンターなどでは、そこそこの値段で販売されているのですが、100円ショップで販売しているバスルーム用ミラーなどを流用すれば、サイズもちょうど良く展示ベースとして使えます。

あとはスタンドを工夫して自在ステーを組み込み、ウエポンベイが見えるようにするのも良いでしょう。機体の見せ場や自身の好みに合わせて展示方法を考えるのも楽しいものです。

▲展示スタンドの下にB-5サイズのアクリルミラー(100円ショップで購入したバスルーム用ミラー)を置いた状態

▲ミラーを置いたことで「全部開けました、全部積みましたスペシャルモード」の機体下面のウエポンベイを、機体を裏返すことなく見られる

▲ミラーを置けばB型の特徴でもあるランディングモードのエンジンダクトのディテールもミラーでバッチリ見られる

 

■完成モデルギャラリー

※F-35Bビーストモード

 

※F-35B全部開けました、全部積んでみましたスペシャルモード

 

■総括

タミヤ「1/48 F-35B ライトニングⅡ」は、これまでの飛行機モデルとは一線を画した進化系スケールモデル

今回のF-35Bの製作は、パーツ数も多いこともあって、いつにもましてハイペースで製作を進めたのですが、前回時点で「これは間に合わないかも…」という焦りがありました。

当初は「タミヤの最新キットだし、問題なくサクサクと製作を進められるだろう」という考えでいたのですが、パーツは全てにおいて密度が濃く、緻密なまでにディテールが追及されている…そんな印象なのです。何度か書いてきたようにパーツの精度が高く、仮り組みでもまるで寄木細工のようにパチパチとパーツが組みあがってしまう凄いキットだな、というのが第一印象でした。

しかし製作を開始してすぐ感じたのが「アレ思ったより作業が進まないな…」ということ。自分でも製作は速い方だと思っていたのですが、それが思うように進まない、何故だろう?という焦りでした。

それは、作りにくいとか、必要以上にパーツがバラバラだからといったネガティブなものではなく、圧倒的なディテールと組み立てやすさを高い次元で融合させた新しいスタイルのキットと、それをこれまでのスタイルで製作しようとしたための違和感のようなものだったと思います。

パーティングラインがほとんどなく成型精度の高いパーツは、削ったりパテによる修正も不要で、さらに塗装にしても、基本パーツ単体ごとで塗装することでマスキングの手間が極力減らされており、パーツひとつひとつまでに配慮されたストレスフリーの手順が、自身に刻み込まれた飛行機モデルの製作のセオリー、いうなれば古いスタイルのモデリングとは違うがゆえの違和感でした。タミヤの凄さを改めて思い知らされた次第です。

なんだか難しい話になってしまいましたが、もうひとつこのキットに関して言えること、それは作っていて楽しいことです! パーツ構成にしても、塗装にしても、斜め上をいくタミヤのスタイルが楽しめますよ。ぜひ自身の手で確かめてみてください!

さて「1/48 F-35B ライトニングⅡ」の製作はここまでです。2024年はどんなキットを作りましょうか? 乞うご期待!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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