開発スタートは150年前!ドイツが誇るオイルランタン、フュアハンド「ベイビースペシャル276」

【The ORIGIN of the CAMP GEAR】

今回ご紹介するのは、歴史あるオイルランタンのひとつ、FEUERHAND(フュアハンド)の「ベイビースペシャル276ジンク」(4730円)。無骨なビジュアルと質実剛健なつくりに加え、歴史の深さも相まって、キャンプブーム以前は知る人ぞ知るギアとして、特にミリオタを中心に熱い支持を集めていた印象があります。

最近では人気キャンプ芸人が愛用していたことで、一気にソロキャンパーの定番アイテムに。

そんなベイビースペシャルですが、先に申し上げたいのは、ヴィンテージランタン界隈の有識者のみなさま、なにとぞお手柔らかにお願いいたします。私も憧れ先行で使っている者のひとりです。

▲各パーツに施された刻印などの意匠も非常に丁寧。細部に至るまで妥協なく製造されている

さて、話を戻しまして、「ベイビースペシャル276」のその原点は150年近く前までさかのぼります。

「現在におけるドイツ・ザクセン州で配管工場を営んでいたハーマンニャー氏(あるいはヘルマンニャー氏)が1870年代に、電気不足を補うため、日常生活や工事現場の照明として開発したのがきっかけと聞いています」と話すのは、フュアハンドの日本総代理店を務めるスター商事の太田さん。

同社は他にも、同じくドイツの由緒あるランタンブランド「ペトロマックス」や、創業1899年のスウェーデンの調理器具ブランド「オプティマス」といった、一癖も二癖もあるロマン溢れるブランドを取り扱っています。

じゃじゃ馬のペトロマックス「HK500」、手間はかかるがルッキンググッドなオプティマス「111 hiker」…どちらもお気に入りのギアです。癖だらけですが、それがいいんだよなぁ。
 

▲工業製品としての美しさをどこか感じられる良デザイン

鉱山というハードな環境下に耐えられるように、頑丈で雨や風に強く、さらに長時間の点灯が可能なものを求めて同氏が自作したランタンがその始まりと言われています。

1893年にはフュアハンドの前身となるランタン生産施設を設立。1930年代には品質・強度の高さで世界的にも有名なショット社の耐熱ガラスをホヤガラスに採用。その耐久性、信頼性の高さはドイツ軍にも採用されるほどでした。

1950年代には「ストームランタン」という商品名で販売が続けられたと言われており、ハーマンニャー氏がオイルランタンを開発して約120年後の1989年、ついに現行の「ベイビースペシャル276」が誕生。

▲燃料はパラフィン、白灯油、灯油が使用可能。煤が出にくいので私は白灯油を使います

現在はペトロマックス社の傘下ブランドとして、20年以上形を変えずに販売され続けています。

なお、残念ながら100年以上も昔のことのため、完全な資料が残っていないということで、当時のランタンがどういう形状のものだったのかは不明だといいます。

スター商事の太田さんによると「非常にもったいないことですが、資料も少なく、我々もユーザーの皆さんに教えてもらいながらその歴史を学ばせて頂いています」とのこと。

ちなみに『ヴィンテージ フュアハンド』で検索すると、大戦以前のモデルまで出てきますのでぜひご照覧あれ。

 

■シンプルだからこその高耐久性

▲シリンダーハンドルを下げることでウィックを露出、点火する。マッチ一本あればすぐに使える

フュアハンドのランタン、その最大の特徴は耐久性です。スター商事が取り扱う全てのアイテムと比較しても、修理依頼が極端に少ないのだそう。

大戦以前のモデルが現在も使用可能品として流通するくらい壊れにくい。そもそも軍隊でも採用されるほどですからね。

その理由は、シンプルな構造。複雑なギミックはなく、あるとしても着火時にホヤガラスを動かすシリンダーハンドルと、ウィック(火をつける芯材)を上下させるハンドルくらいのもの。一般的に構造が複雑になればなるほど故障のリスクが上がるので、構造からして故障に強いといえます。

▲点火後はハンドルを回してウィックの長さを調整するだけと使い方は簡単

また、使用する材質にも秘密が。

使われている素材自体はトタンと同じスチール素材ですが、そこに特殊な加工を施したガルバナイズドスチールを採用しています。いわゆるアルミ亜鉛合金メッキと呼ばれる加工で、錆びにくく、耐久性が高いことに加え、加工のしやすさがその特徴。1972年にアメリカで開発された加工技術です。

このガルバナイズドスチールによって、スチール本来の剛性に加えて、錆びにくさも実現。また、長期間の使用による味のある風合い、錆び方になるのも、この特殊な加工だからこそ。

▲ホヤガラスのショット社も同じドイツの企業

さらに、特筆すべきはホヤガラスです。うっかり割ってしまいそうなパーツですが、太田さんによれば、「ショット社のホヤガラスがまた頑丈なんです。万が一割れてしまった場合の交換品として、ホヤガラスのパーツ販売も行っていますが、1年を通してほとんど出ない印象です」とのこと。

ミリタリーリュックの外側に取り付けている人を見かけては「割れが怖くないのかなぁ」と勝手に心配していましたが、そもそも割れにくいんですね。

ちなみに、長期使用で気になるメンテナンス性についてですが、驚くほどにやることがありません。灯油、パラフィンオイル、白灯油が主な燃料になりますが、灯油で使用する場合にホヤや本体内側の拭き掃除があるくらいで、他のふたつを使用する場合はススもほぼ出ないので、やりようがないんです。

 

■“ハリケーン”ランタンの名は伊達じゃない

▲ランタン上部にずらっと並んだ空気孔から常に酸素を取り込み供給する仕組み

タンクに燃料を入れて、火をつけるだけですぐ使える簡単操作の「ベイビー」ですが、“ハリケーンランタン”と称されるほど、とにかく風に強い。

バーナー部分はしっかりとホヤガラスによって囲まれており、直接風が吹き込まないため、風のある環境下でも安定して使用可能です。

「それでは空気が入らなくて燃えないのでは?」とお思いの方、ご安心下さい。ランタン上部の空気孔から入った新鮮な空気が、フレーム内部を伝ってランタン下部のバーナーへ到達するため、常に燃え続けてくれます。

▲取り込まれた空気が左右のフレーム内部を通って、バーナーへ直接酸素を届けられる

燃料を入れて、火をつけるだけの簡単操作からは想像できませんが、実はしっかりと計算して構成されているんですね。「あのフレームは雰囲気だけじゃなかったんだな」と思ったのは私だけじゃないはず…。

*  *  *

ソロキャンパー御用達のオイルランタン、フュアハンド「ベイビースペシャル276ジンク」。

▲日本のキャンパー人気を受けて、近年では日本限定カラーを製造するほどに

「長いあいだ欠品が続き、多くのファンのみなさんにご迷惑をおかけしました」と太田さん。不運にもドイツ本国の工場が大雨の被害で稼働できず。キャンプブームも重なり品切れが続き、一時は非常に高額になってしまったことも。

現在では工場の稼働も安定しており、届いた商品については「日本独自の検査項目を設定し、全数検品をしてから出荷をしている」といいます。

▲見た目は「ベイビースペシャル276」そのもので、光源をLED化した「LEDランタン ベイビースペシャル276」(1万560円)も新登場

焚き火に燻されながら、スモーキーなウィスキーを舐める。そしてその横には優しく揺れるオイルランタンの灯り。あぁ憧れの、ワイルドでオトコマエなキャンプ。

正直、現代のキャンプシーンにおいて、メインランタンにするには光量不足と言わざるをえません。

ですが、そのルッキンググッドなビジュアル、優しい火のゆらぎ、ロマン感じるその歴史が私たちキャンパーの気持ちをくすぐってくるのです。

最後にどうしても言いたい余談なんですが、最初の最初は、製品パッケージ無しの状態で、大きな箱に24個のベイビーがまとめて入って納品されていたとか。それでも壊れることなく日本に届いたのって、すごくない?

>> FEUERHAND(スター商事)

>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR

<取材・文/山口健壱

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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