キーワードは「125」!? 原付二種で2024年のバイク業界を占う

【&GPゆく年くる年ー2024年先取り情報】

かつて、1980年代のバイクブームを引っ張ったのは50ccの原チャリ(原付一種)人気でしたが、今のバイク市場を盛り上げている存在は原付二種(51〜125cc)クラス。スクーターだけでなく、「CT125・ハンターカブ」やスポーツタイプのマシンまで、車種のバリエーションも豊富に揃っています。そんな原付二種の話題を通して2024年のバイク業界を占います。

 

■原付一種が125cc以下になる!?

原付関連では「原付一種が50cc以下から125cc以下に変更される」というニュースが話題になりました。これは、50cc以下という排気量区分が日本独特のものとなっており、開発コストが高騰していることから業界が警察庁などに長年働きかけていたもの。現状でもヤマハの「JOG」はホンダ製のOEMという、1980年頃の“HY戦争”なんて言われた2社の競争を知る世代には信じられないような状態になっています。

▲現行のヤマハ「JOG」

特に2025年11月には、原付一種にも厳しい排出ガス規制が適用されるようになるため、メーカーが開発コストを担いきれなくなり、50ccクラスのバイクは絶滅すると言われています。これを受けて、警察庁の有識者検討会では原付免許で運転できる排気量の上限を50cc以下から125cc以下とするのが理想的という報告書をまとめています。

これが実現すれば「原付免許で125ccクラスに乗れて、30km/hの制限時速や2段階右折もしなくて良くなる?」と期待してしまいますが、それは少し早いようです。警察庁がまとめた報告書に拠ると、125ccモデルの最高出力を現行の原付一種と同等レベルの4kW(5.4ps)以下に落として、原付免許でも乗れるようにするとのこと。そして「30km/h規制」「2段階右折義務」「2人乗り禁止」などの規則も継続されるようです。

「それじゃ意味ない…」と落胆する人も多そうですが、普通自動車の免許で出力が落とされてるとはいえ「モンキー125」や「CT125・ハンターカブ」などの人気モデルに乗れるようになることは、そう悪くないニュースかもしれません。実施される時期などは未定ですが、継続してウォッチしていきたいところです。

 

■原付二種の電動化が大きく進む!?

カワサキは電動マシンの「Ninja e-1」と「Z e-1」を2024年1月13日に発売することを発表しました。2車は排気量区分では原付二種となるとのこと。これまで、国産の電動バイクというとスクータータイプがほとんどでしたが、スポーツライディングが楽しめるモデルが登場したことで、電動の世界が一気に広がりそうです。

▲「Ninja e-1」

両モデルに搭載されるモーターの定格出力は0.98kW(1.33PS)で最高出力は12PS。ただ、最大トルクは40Nmと400ccクラス並の数値です。車重は140kgと135kgですから加速はかなり鋭そう。約15秒間、加速と最高速を向上させるE-BOOST機能も用意されています。

▲「Z e-1」

価格は「Ninja e-1」が106万7000円で、「Z e-1」が101万2000円。かなり高価に感じますが、CEV補助金が12万円、東京都に住んでいる人なら東京都電動バイク普及促進事業補助金が46万円受けられます。これらを利用すれば「モンキー125」や「CT125・ハンターカブ」の44万円と同等レベルの金額で購入することができるということ。そう聞くと、かなり魅力的に見えてきます。

▲「SC e Concept」

ホンダも原付二種の電動スクーター「SC e Concept」をジャパンモビリティショーに出展しており、市販化も近いと言われています。「ホンダ モバイルパワーパック」のバッテリーを2個搭載し、航続距離も長くなりそうなので、こちらも発売を期待したいところ。電動バイクの世界は原付二種から拡大していきそうです。

 

■125ccクラスでヤマハの逆襲が始まる!?

▲「YZF-R125」

ここまで何度も「モンキー125」や「CT125・ハンターカブ」の名前を出してきたことからも感じられるように、このクラスは今、ホンダの独壇場といってもいいような状況。ほかにも「ダックス125」や「クロスカブ110」もあり、スクーターでは「PCX」が一番人気。フルサイズモデルには「CB125R」もラインナップされています。

▲「MT-125」

それに対してヤマハは「NMAX」や3輪の「トリシティ125」などを用意していたものの、125cc以下のクラスは従来スクーターしかラインナップしていませんでした。ただ、2023年後半にはフルサイズのスポーツモデル「YZF-R125」「MT-125」「XSR125」を相次いで発売。2024年は一気に巻き返しを狙います。

▲「MT-125」

タイとベトナムの現地法人では「PG-1」というアンダーボーンタイプのフレームを採用した新モデルも発表。「クロスカブ」と「ハンターカブ」の中間的なスタイリングで、113.7ccの横型エンジンを搭載し最高出力は9PSと発表されています。

▲「PG-1」

ホイールは前後とも16インチで、ブレーキはフロントのみ油圧式ディスクブレーキを採用。国内での発売は全くの未定で、排出ガス規制の関係からそのままの導入することは難しそうですが、現地での価格は「CT125・ハンターカブ」よりかなり安いようで、導入されれば強力なライバルになりそうです。

また、ヤマハは前出の原付一種が125cc以下になる見通しであることを受けて、ホンダのOEMとなっていた原付一種クラスに、自社製の125ccモデルを出力ダウンして投入するとしています。HY戦争再び!? と書くとぶっそうな感じですが、両社の競争でバイク業界が活性化するとしたら、それはいいニュースなのかもしれません。

*  *  *

125ccをキーワードに、2024年に向けて気になる動向を紹介してきましたが、通勤の足として重宝されるスクーターだけでなく、スポーツモデルや電動モデルまでバリエーションが豊富になってきているこのクラス。今後もバイクの世界を盛り上げてくれることは間違いないので、2024年も期待して見守りたいと思います。

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<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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