機体にウエザリングとチッピングを入れて震電『ゴジラ-1.0』ver.完成!【達人のプラモ術<震電>】

【達人のプラモ術】
ハセガワ
「九州 J7W1 局地戦闘機 震電 『ゴジラ-1.0』 劇中登場仕様」
04/04

前回、暗緑色と明灰白色での機体塗装を済ませた震電。劇中では終戦後のドサクサに紛れて秘匿されていた機体ということで登場するのですが、倉庫の中に隠されていた機体は、試験飛行で使い込まれた?機体らしく、アクセスパネルやキャノピー周り等の塗装が剥げた状態になっています。そこで今回は機体のウエザリングと同時に、塗装が剥げた状態を再現したチッピング(※1)を施して完成を目指します!(全4回の最終回/1回目2回目3回目

※1…チッピング
チッピングという言葉には「欠ける」という意味があり、飛行機モデルでは、塗料のハゲや欠けを塗装で再現するウェザリングテクニックのひとつ。塗料の質のせいか日本機ではよく見られる言うところのハゲチョロ塗装。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■まずはデカールから

塗装を終えた機体にデカールを貼っていきます。前回製作したF-35Bなどの現用機のように機体各部にびっしりと描かれたコーションマーク(注意書き)はほとんどなく、マーキングはかなりあっさりとしたものです。

日の丸をメインに計器盤、主翼上面の「フムナ」「オスナ」の警戒線、垂直尾翼後端の「オスナ」といった警戒線、胴体空気取り入れ口黄線(右側のみ)。また通常版では塗装再現だったプロペラの警戒線と主翼前縁の味方識別帯(作例は識別帯を塗装で再現)も『ゴジラ-1.0』劇中仕様版ではデカールで再現されています。

▲『ゴジラ-1.0』劇中仕様版のデカール。質も良く暗緑色の機体に貼っても日の丸の赤が透けてしまうこともない

 

■マークセッターで凸モールドにデカールを馴染ませる

さて、今回製作した震電は凸モールドなので、デカールをしっかりと密着させないといけません。なのでマークセッター(デカールの軟化、接着剤)を使い、凸モールド部分にもしっかりとデカールが密着させます。

主翼上面の「フムナ」「オスナ」はフィルム部分の面積が大きいのでシルバリング(※2)に要注意です。

シルバリングが発生してしまったら、デカールが乾燥したのちにデザインナイフなどで突いて微細な穴を開けます。その後、再度Mr.マークセッターを塗布することで、マークセッターが浸透してデカールが再度軟化し密着。白化を抑えられます。

(※2)シルバリング
パーツ表面と貼ったデカール裏面の間に微細な空気が入り込むことでデカールのフィルム部分が白く光って見えてしまう現象

▲GSIクレオス「Mr.マークセッター 模型用デカール軟化剤」(308円) Mr.マークセッターはデカール用のノリ剤だが、デカールを軟化させる成分も含まれており、凸モールドのようなデコボコ面でもしっかりとデカールを密着させられる

▲貼る位置にマークセッターを塗布しておき、デカールを貼り込む。軟化剤成分でフィルムが柔らかくなり、糊成分で凸モールドにもしっかりと密着させられる

▲日の丸のような大判デカールは、貼った後に湿らした綿棒で内側から外側に向けて押し付けることで空気を追い出して密着させられる

▲デカールを貼る位置に大きめの凸部分があると、どうしてもテント状に浮いてしまう

▲浮いた凸部にマークセッターをさらに塗布し、デザインナイフの刃先でデカールのフィルムを突いて極小の穴を開け、内側の空気を追い出しつつ綿棒を押し付けて圧着させる

▲マークセッターと綿棒圧着の合わせ技でバルジ状の凸部分にデカール密着させた状態

▲マークセッターを使ったことで、凸部分だけではなくエルロン(主翼後端にある補助翼)の凹ラインにもデカールが馴染んでいる

▲プロペラの警戒帯も付属デカールで再現

 

■リアルタッチマーカーを使って凸モールドへのスミ入れ

スミ入れと言うと凹モールドに塗料を落とし込むことだと思われがちですが、凸モールドでも実は可能です、今回使用したのは、通常のスミ入れでもよく使用するMr.リアルタッチマーカーです。

パネルラインに沿ってリアルタッチマーカーで線を描き、綿棒で擦ることで凸モールドの縁部分にマーカーが残るので、凹モールドと同じようにスミ入れできます。今回は機体全体を「リアルタッチグレー2」で、エンジンまわりのみオイルにじみ感を出すために「リアルタッチブラウン1」を使っています。

▲GSIクレオス「ガンダムマーカー リアルタッチマーカー」(各275円) 汚れや、スミ入れやぼかし塗装を表現できる水性ベースのマーカー。ぼかしペンと組み合わせることでグラデーションや塗装面上でのブレンディング(マーカーの混色)もできる

▲凸モールドに沿ってリアルタッチマーカーで線を描き綿棒で擦ることでパネルラインの自然な陰影を再現できる

▲機体表面などほとんどの部分は「リアルタッチグレー2」でスミ入れ

▲機体下面のエンジン回りは「リアルタッチブラウン1」を使ってオイルの汚れ感を再現

 

■チッピングを発売されたばかりのミスターホビーマーカーメタリックで再現!

日本機に関しては、使い込まれた機体の再現塗装として、整備点検の際に開けられることが多いアクセスパネルやパイロットが踏む主翼上面付け根などで、塗装がハゲて金属面が露出した質感の表現、言うところのチッピング塗装がよく見られます。

震電は試作機なので機体はキレイだろうと思うのですが、劇中機はアップになるとコクピット横などにいかにもな感じで塗装が剥げた表現がされています。

そこで作例でも、この塗装が削れて落ちた質感を塗装で再現していきます。

今回このチッピング塗装で使用したのは、昨年末にGSIクレオス(Mr.ホビー)から発売された「ミスターホビー マーカーメタリック」です。スミ入れで使用している「リアルタッチマーカー」のメタリック版です。

チッピング塗装といえば、エッジ部分、パネルの縁といった箇所に面相筆などで描き入れていくことが多いのですが、いかにも剥げた感じの質感再現は筆塗りだとコツが必要です。しかしマーカーであればチョン塗りが簡単にできるので、言うところのハゲチョロな質感が手軽に再現できます。今回は「ミスターホビーマーカー」のシルバーを使用して機体各部にチッピングを入れています。

▲GSIクレオス「ミスターホビーマーカー メタリック」(各330円) Mr.ホビーが昨年末に新たに発売。マーカータイプの水性メタリックカラーで、スミ入れや細部の金属表現をワンポイント塗装できるほか、従来のリアルタッマーカー同様にウエザリング表現にも使用できる。単色5色と専用ぼかしペン、また6本セットも発売されている

▲今回使用したのは「ミスターホビーマーカー メタリック」のシルバー。チッピングのような微妙な塗装は筆ではコツがいるがマーカータイプなので扱いやすく手軽に使える

▲「ミスターホビーマーカー メタリック」を使って、モールドに塗装の剥げを描きこんでいく。チッピングは塗るのではなくチョンっと塗料を置く感じでランダムに描いていくのがポイント

▲マーカーだとチッピング塗装が簡単にできるのと、見た目の変化が楽しいこともあって、ついヤリすぎてしまので要注意。零戦などの写真を参考に、どこが剥げるのかを考えつつ、抑えめに仕上げるのがリアルな仕上がりのコツ。作例はちょっとやり過ぎた感あり

▲プロペラのエッジやスピンナーにもチッピングを入れている

 

■キャノピーと脚を取り付けて震電『ゴジラ-1.0』劇中機の完成!

チッピングやスミ入れが終わったら機体全体をクリアーで軽くオーバーコート。今回は劇中機に会わせてセミグロスクリアーを使いやや光沢のある仕上がりとしました。

乾燥後にキャノピーと脚、アンテナ類を取り付けて震電の完成です。機体下面のアンテナ間に貼られた空中線は伸ばしランナーで再現しています。またキットはキャノピーを開けた状態にはできないので、中央の可動部を接着せず取り外してコクピット内が見られるようにあります。

いや~、発売から40年以上たつ古参キットですが、プロポーションは秀逸で、凸モールドも気になりません。何よりパーツも少なく手軽に製作を楽しめるキットだと思います。

実戦には間に合わなかった幻の迎撃戦闘機ですが、今回『ゴジラ-1.0』への登場で久しぶりに注目されました。人気再燃中の震電、ぜひチャレンジしてみてください。

さて次回はどんなキットを作りましょうか? お楽しみに!

▲エンジン全開!迫力の6枚プロペラ。実は機体にモーターを仕込んでいました…と言うワケではなく、撮影時にプロペラにドライヤーの空気を当てて廻しただけです

 

■震電完成画像

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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