「じゃあ2度塗りだ!」エンゾの“チンクエチェント”を作りたい!【達人のプラモ術<フィアット500F>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
「1/24 フィアット500F」
01/04

2024年も早いもので、もう2月。巷では話題のニューアイテムが模型店の店頭を賑わせています。達人のプラモ術では、前回、前々回と飛行機モデルが続いたので、今回はカーモデル。この2月にタミヤから発売された1/24フィアット500Fを製作します!(全4回の1回目)

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■キット紹介

▲タミヤの完成見本

今回製作するのは、イタリアの傑作小型車「フィアット500F」を1/24スケールで再現したキットになります。初回の発売は1996年。フィアットが1957年から製造していた「フィアット500」シリーズの1台で、1965年に発売した空冷2気筒500ccエンジンを搭載し、前開きドアから後ろ開きドアに変更、フロントウインドウの大型化などの改修が行われた「500F」を立体化しています。

▲タミヤの完成見本

久々の再販ですが、新たにイタリア国旗をイメージした緑/白/赤のストライプや、赤色の帯、さらに車名ロゴ、ゼッケンなどのデカールが付属しています。

エンジンフードのエンブレムはインレットマークで再現。赤やブルーのノーマルカラーも捨てがたいのですが、ストライプを入れることで全長124mm、全幅56mm、全高57mmという小ぶり(1/24だとマジで小さいです)なボディをスポーティなイメージに仕上げられます。

また小さいながら開閉可能なリアフード内部にはエンジンやトランスミッションが再現されており、鑑賞できます。パーツ数も少なく、組みやすい本キットはカーモデル初心者にもオススメの1台です。

▲パーツは少ないが、プロポーションも「フィアット500F」のフォルムをよく再現。エンジンやインテリアなど細部ディテールもしっかりと再現された優良キット

▲1/24スケールだと全長124mm、全幅56mmの手のひらサイズになる

▲以前制作した同じ1/24スケールの240ZGと比べても実にコンパクトなサイズ

▲今回のキットにはイタリア国旗をイメージした緑/白/赤のストライプやゼッケンデカール、またウインドウ用のマスクシールが付属する

▲テールのエンブレムはインレットマーク(金属製シール)が付属する

1/24スポーツカーシリーズNo.169
フィアット500F
発売:2024年2月(特別販売商品)
価格:2400円

※特別販売商品とは、生産休止となっていた商品を特別に生産し、販売する商品のことです。通常製品と同じく全国の模型店で販売されますが、通常製品のような継続的な生産は行われません。ということのなので店頭で見つけたら即ゲットです!

 

■まずはボディから製作!

いや小さい。マジ小さくてカワイイです。初版発売時のボディカラーの指定は赤や紺といったソリッドカラーだったのですが、今回は新たにイタリア国旗をイメージしたトリコロールカラーのストライプやゼッケンのデカールが付属。これが実にカワイイと言うか、チンクエチェントに実に似合っているので、インストの指示とおりにアイボリーホワイト塗装で塗装していきます。

以前のカーモデル製作と同じく、インストの製作順番ではなく、まず乾燥に時間が必要なボディの塗装からスタートします。

今回はインストの指示にある缶スプレーを使ってボディを塗装していきます。指定色はタミヤ缶スプレー「TS-7レーシングホワイト」。アイボリーがかった白です。個人的には明るいグレーとか、ベージュといったカラーでもストライプが似合う気がするので、好みでボディカラーを変えてもいいでしょう。

▲タミヤ缶スプレー「TS-7レーシングホワイト」(770円)

 

■パーティングラインの処理と下地塗装

ボディはパーティングラインがプレスラインに沿っているので、ほとんど気にならないのですが、リアウインドウの両サイド部分のみを研磨処理、缶スプレーのグレーサーファイサーで下地塗装を済ませます。

▲缶スプレーのサーフェイサーで下地塗装を行う

▲矢印部分のパーティグラインが目立つので研磨して消すのを忘れずに

 

■缶スプレー塗装のコツ

エアブラシ塗装が普及したこともあり、缶スプレー塗装は苦手と言うモデラーさんが意外に多いんですね。塗料が垂れてしまう、塗装面に泡が出てしまう、ムラになる、といったトラブルに泣かされた経験が多いようです。確かにエアブラシのように吹き付けのコントールができないので難しい一面はありますが。ちょっとしたコツを掴んでしまえば失敗は少なくなります。

【失敗しないコツ その1】一度に吹き付けない

缶スプレーは一度に塗料が出るので、ブワッとイッキに吹き付ければキレイに塗れるはず、というのは大間違い。薄く吹き付け→乾燥→吹き付けと重ねていくことで均一でムラのない仕上がりが得られます。イッキに吹き付けたら、それこそ塗料が垂れて塗装面が台無しになってしまいます。

▲一気に吹き付けてしまうとボディの表面で塗料が垂れてしまう。また缶スプレーはガスが含まれているので、塗装面に泡が生じてしまうことがあるので一気吹きはNGだ

【失敗しないコツ その2】吹き付けは距離と缶を動かすスピードのバランスが大事

よく缶スプレーは30センチ程度離して吹き付けるといいと言われるようですが、カーモデルように光沢仕上げを求める場合、30センチは離しすぎだと思います。塗装面が梨地になってしまい、思うような光沢が得られません。近すぎ離しすぎは論外ですが、ポイントは距離と缶を動か素早さです。

光沢塗装であれば15センチから20センチの距離を保つ。そして近い距離で吹き付けるなら缶を動かすスピードを速く、距離を離して吹き付けるのであれば缶を動かすスピードを落とすようにします。また缶を往復させての吹き付けは折り返し部分が厚塗りなってしまうのでNGです。缶を右から左、上から下といった具合に常に一方向に缶を動かして吹き付けるように意識してください。

▲左は5センチの距離で吹きつけたため、あっという間に塗料が垂れてしまった状態。中央は、オススメの15センチの距離で吹いた状態。缶を動かしていないので中央が濃いスポットになっている。右は30センチで吹き付けた状態。垂れることはないが塗料が吹き付け面ですぐに乾いてしまうため梨地になってしまっている

▲レーシングホワイトを1回吹いた状態。20センチ程度の距離でムラなく吹き付けていく

▲1回目吹き付けの後、30分程度乾燥させて2回目を吹き付ける。この時点でもツヤを出すことは意識せず、1回目と同じく20センチ程度の距離で塗装面全体に均一に塗料を乗せていく

▲2回目の吹き付けから30分程度乾燥させての3回目。今度は15センチ程度まで近い距離で缶をやや速いスピードで動かしながら吹き付けていく。塗装面で塗料がジワッと伸びて均一な塗膜となる。2回目までの砂吹きが塗料を受けてとめてくれるため垂れることもない

▲3回目の塗装から半日程乾燥させて、15センチ程度まで近い距離で缶をやや速いスピードで動かしながら仕上げの4回目を吹いた状態。均一で光沢のある仕上がりが得られた。この状態で最低でも24時間以上乾燥させる

▲実際のボディでの1回目の塗装が終わった状態。このまま30分ほど乾燥させて2回目の砂吹き塗装をおこなう

▲レーシングホワイトを4回塗り重ねが完了したボディ

▲この状態で丸一日以上乾燥させる

▲シャシーやリアハッチ等ボディと同色となるパーツも同様に塗装しておく

 

■あると便利な塗装乾燥ブース

缶スプレーのみならず、塗装は乾燥時間が必要。カーモデルの光沢塗装となると最低でも1日以上の時間が必要となります。

そこであると便利なのが塗装乾燥ブースです。使用することで塗装の乾燥時間を大幅に短縮できます。ホビーメーカーから模型専用の乾燥ブースも出てはいるのですが、食器乾燥器でも代用できます。

達人が使用しているのはモデラーに人気が高いYAMAZENの食器乾燥機。価格もリーズナブルで内部の温度が40度前後までにしかならないのがポイント(高温になるタイプだとパーツが熱で変形してしまう)。プラモの塗装乾燥に最適ということで愛用しているモデラーも多いようです。

▲乾燥器でボディの塗装を乾燥中。乾燥までのホコリ付着防止効果もあり

▲山善「食器乾燥器 YD-180(LH)」(実勢価格:9500円前後)

 

■「フィアット500」と映画

「フィアット500」といえば、年代的にオードリー・ヘップバーンの映画『ローマン休日』で登場するんですが、日本では劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』でルパンの愛車として登場したことでカーモデラーのみならずアニメファンにも人気があります。以前グンゼ産業からルパン仕様のキットも発売されていましたが、現在は残念ながら絶版になっています。

達人的には「フィアット500」と言ったらリュック・ベッソン監督の出世作映画『グラン・ブルー』(1988年公開)でジャン・レノが演じるエンゾの愛車という印象が強いですね。ベコベコでスクラップ寸前といった「フィアット500」(しかもトレーラー引っ張っている)なんだけれど、暑いと言ってフロントウインドゥを内側からぶん殴って倒して開けちゃうシーンと、ダイバーを救出した1万ドルの賞金で車体を赤く塗り直すシーンがあるんです。弟に新車を買おうよと言われたエンゾが「いいや、塗り替えだ」「え、25ドルしかかかんないじゃん」「じゃあ二度塗りしろ」となり、ボロボロのまま車体だけ白から赤に塗り直されたフィアットで乗りつけたホテルのボーイに「塗りたてだから扱いに注意しろよ」というシーンがすごく好きなんですよ。

オーナーには怒られてしまうかもしれないけれど、チンクエチェント(「フィアット500」の愛称。イタリア語で500の意味)はピカピカよりなんかボロボロの方が似合う気がするんですよね。

▲「グラン・ブルー オリジナル版(デジタルレストアバージョン- Blu-ray)」(2625円)

▲「ルパン三世 カリオストロの城 」(8580円)

*  *  *

というワケでタミヤ「1/24 フィアット500F」の製作第1回はここまで。缶スプレー塗装も、コツさえつかめばエアブラシより手軽にボディの光沢塗装を仕上げることができます。ぜひチャレンジして見て下さい。次回はエンジンや内装を製作していきます。乞うご期待!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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