世界でも特に急速な成長を遂げているフィンテック市場として注目を浴びるアフリカ。銀行サービスが普及するより先に携帯電話の通信環境が整い、銀行口座を持たない人々の間で手軽なモバイル決済が浸透。このリープフロッグ現象を土壌として、フィンテックスタートアップが大量に出現した。
現在、アフリカ大陸に存在するフィンテック企業約1000社の約半数は 2017年以降の設立というデータがある。そうした業界で、20年もの実績を持つ数少ない企業が南アフリカのAdumoだ。南アだけでなくアフリカ大陸の14か国に拠点を構える同社は、中小企業が手頃な価格で利用できるデジタル決済システムを普及させ、現金決済に取って代わることを目指している。
Adumoは2009年に設立された南アフリカ最大の独立系決済サービス企業。手のひらサイズのクレジットカード端末から、マーケティング機能を備えたクラウドPOS会計システムなど、テクノロジーに裏打ちされた多彩な決済方法で幅広い需要に応えてきた。7万社超のクライアントはアフリカ13か国およびあらゆる分野にまたがり、年間処理額は約800億ランド(およそ6300億円)にも達する。同じく20年もの歴史と莫大な規模を誇る「M-Pesa」(Safaricom社運営)がケニア発であるのに対し、Adumoはサハラ以南で確固たる実績を有する存在だ。
各種決済から融資、給与支払い、経費管理まで多彩なソリューション
特に中小企業支援に力を注ぐ同社。クライアントに効果的な支払いシステム管理を提供し、「支払いの受領」、「セールス増大」、「最適化と簡素化」という3段階でクライアントの成長を促進するという。
まず「支払いの受領」においてAdumoが提供する決済ソリューションには、デバイス、クレジットカード、その他の支払方法(BNPLという新種の後払い・Laybyと呼ばれる先払い・各種分割払い・QRコード)、Eコマースが含まれる。BNPLは「Buy Now Pay Later」の略で、従来の後払いとは異なり、クレジットカード不要で分割払いも可能なことから近年海外で人気を伸ばしている決済方法だ。 自社サイトを持つ事業主であればオンラインのサービス「Payment Gateway」も利用可能で、VISAやMastercardなどのメジャーなブランドに加えて、Adumo EFTを使った銀行口座決済、アフリカで日常的に使われているOZOWやCapitecなど14種類の支払い手段と6種類のECカートに対応。サイトがない場合は、URLを生成して客がそこにアクセスして支払う「Payment Link」を利用できる。 次に、「セールス増大」として同社が提供するのは事業資金としてのキャッシングサービスと、消費者のエンゲージメントを高めるためのギフトカードやポイントシステムだ。「adumo Capital」により顧客はキャッシュフローを維持しながら融資ソリューションにアクセスできる。申し込みはオンラインで簡単に行えるうえ、融資は24時間内に行われるというスピード処理も魅力だ。新規顧客を獲得し、長期顧客に還元するため、ポイント付与やキャッシュバックなどのポイントプログラムも利用でき、情報はオンラインのセルフサービス事業者ポータルで管理する。自社専用のオリジナルプリペイドカードの簡単作成やデジタル商品券の配布によってオムニチャネル戦略を展開可能だ。
そして3番目の「最適化と簡素化」では、“adumo Central”経由で簡単にアクセスできるセルフサービスポータル「Clientzone」によって業務を最適化・簡素化するという。Clientzoneは、アカウントやトランザクション、請求書、清算などを一括管理できるセンターである。これらのサービス以外に「adumo Premium Imali Card」という企業向けギフトカードのサービスも展開。リアルとデジタル両方のプリペイドカードによって給与やギャランティ、チップを支払うだけでなく、仮払いや臨時支払い、小口現金などの経費管理までできるという。
また、2023年からはAndroid対応の外回りおよび組込み型のクレジットカード決済端末も展開している。
包括的なサービス提供で“決済サービス以上の存在”へ
Adumoはシンプル・安全・シームレスをモットーとし、アフリカのビジネスにおいて信頼できるパートナーとして、決済サービス以上の存在となることを目指しているという。
実際に、2021年には世界銀行運営のIFC(国際金融公社)から1500万ドルの融資を受けている。IFCは「同社のサービスにより、アフリカのスモールビジネス層のデジタル決済導入が容易になる」と高く評価している。融資や投資などのさらなる金融サービスへの道が開かれていくとも述べた。
自社が信頼に足る証として、Adumoは同社グループ内のHumble POS、GAAP、SwitchPayなど国内有数の決済プロバイダーとの提携を挙げている。Adumoは70社ものPOSプロバイダーを自社ソリューションに統合しているが、その中でもグループ企業であるHumbleとGAAPは業界屈指のソフトウェアでハードウェアとソフトウェアのギャップを埋め、支払い体験を最適化するという。また、強力なEコマース決済機能を提供するうえで連携するのは同じく買収したadumo Online社。2021年には買収したSwitchPayは、現在Adumoの「その他の支払方法」提供を担う。
人気急上昇中の支払方法BNPL、PayShapの新機能にも注目
現在、Adumoの「その他の支払方法」に含まれるBNPL(Buy Now Pay Later)という決済方法にも注目したい。クレジットカードよりBNPLを好むミレニアル世代を中心に人気が高まっている。市場調査会社Ken Researchによると、南アフリカのBNPL市場は2019年から2022年にかけて年間64%も成長したとのこと。2022年から2027年にかけては年間35%の成長率が見込まれている。
BNPL製品の集約および申し込み・承認され次第の支払いまでストア内で一括で行える数少ない決済サービス企業として、有利な立場にあるAdumo。同社の集約プラットフォームではBoodle、MoreTyme、Payflex、Floatといった複数のBNPLプロバイダーから選択できる。また、昨年3月の設立以来、個人の口座間送金サービスで急速に業績を伸ばしている「PayShap」が、2024年中に「消費者から企業」間の送金機能を展開する予定である。AdumoもPayShapの高速支払いプラットフォームで使用されているQRテクノロジーをすでに備えているため、個人から企業への送金機能が導入され次第、同社加盟店に拡張できるとしている。
企業カルチャーを重視するCEO「キャッチ―なフレーズを壁に飾るだけではNG」
グループ規模を拡大し続けているAdumoのCEO・Paul Kent氏は、同社の成長を促進してきたのは強力かつ目的意識を共有する企業カルチャーに他ならないとする。
「(企業)カルチャーは、キャッチ―なフレーズを壁に飾っておくだけで形成されるものではありません。時間と共に発展し、企業全体で採用されてきた共有の考え方、信念、公式・非公式のルールなどに基づくのが強力なカルチャーです」
「当社の目標は、デジタル支払いという新規かつ便利な支払い手段へのアクセスを小売業者とその顧客に提供することです。そのためには、社員全員が共通の目的に向かって努力しなくてはなりません。シンプルかつ明確なビジョン、焦点を絞った戦略、その両方をサポートする適切な文化がすべてです」企業ビジョンおよびバリューに全従業員が共感できるよう、Adumoの採用プロセスでは企業カルチャーへの適性を重視するそうだ。Kent氏によると、応募者は面接でスキルや経験だけでなく価値観についても質問されるとのこと。常に人の助けになろうとする行動力が認められ、スカウトで入社した元清掃スタッフの社員もいるほどだ。
近年は未開拓のフランス語圏に注目が集まっているが、アフリカのスタートアップが調達した資金総額の大半を占めるのは2023年も四大国(ケニア、南アフリカ、エジプト、ナイジェリア)だった。さらに、セクター別でも依然としてフィンテックが最も資金を集める分野で、調達総額の45%を占める。南アフリカのフィンテックであるAdumoは、強力な企業カルチャーを土台に築き上げた地位に甘んじることなく、新たなソリューションに注目して今後もグループ拡大を続けていきそうだ。
引用元:Adumo公式サイト
(文・Takasugi)
- Original:https://techable.jp/archives/229578
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:芥田かほる
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