【達人のプラモ術】
イタレリ
「1/32 イタリア空軍 マッキ MC.202フォルゴーレ」
04/06
第4回は、前回に引き続き機体の製作を続けます。キットは最新のイタレリという事もあってパーツの精度が高く、大きな修正箇所はありませんが、主翼と胴体の勘合部の継ぎ目の修正、また機体各部にエッチング製の補強板を貼る等、細かな作業が続きます。(全6回の4回目/1回目、2回目、3回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■主翼と胴体の継ぎ目を修正
インストでは、主翼下面にエンジンや主脚を組み込んだ後、胴体と合体させて、最後に主翼上面を取り付けるように指示がなされていますが、今回の作例は作業のしやすさを考慮して、主翼と胴体をそれぞれ組み立ててから合体させています。主脚も機体の塗装後に取り付けできるようにしました。
この際、胴体と主翼の接合部に僅か(約0.2mm)ですが隙間が生じます。実機は主翼と胴体を繋ぐフェアリングでスムーズに繋がっているので修正が必要です。
そこで隙間部分を溶きパテ(ビン入りサーフェイサー)で修正しました。胴体と主翼の合わせ目はヤスリがけといった研磨作業がやりづらい部分なのですが、今回のような場合、溶きパテを流し込み、乾燥後にはみ出たパテのみを溶剤で拭き取ることで、凹部分にのみパテが残り、研磨せずともキレイに隙間を埋められます。ただし隙間が0.3mm以上あるような場合はお勧めできません。
▲主翼と胴体を組み合わせた際に生じる隙間(写真で白く見える線)は溶きパテで修正。パテを塗布して1時間前後乾燥させた後、ラッカー塗料の薄め液ではみ出たパテを拭き取ることで、凹部分にのみパテが残り、研磨せずとも隙間の修正ができる
■パテとサーフェイサーの違いって何?
プラモ製作で欠かせないサーフェイサーとラッカーパテですが、何が違うのか。
ラッカーパテは傷を埋めて修正したり、今回のような隙間の修正などに適したアイテムで、溶剤で希釈すればエアブラシで塗布することもできますが、基本的に表面は滑らかに仕上がりません。また厚塗りすると、乾燥後パテに含まれる溶剤が揮発するためどうしても肉痩せが生じます。
一方のサーフェイサーは、缶スプレータイプが主流で、基本的はパテと成分が同じですが、塗布後に表面を研磨することで、きめ細かい滑らかな塗装下地を得られます。反面、厚塗りには向きません。
今回隙間を埋めるのに使用しているビン入りの溶きパテは、筆塗り用のサーフェイサーとなります。
▲タミヤ「サーフェイサー(40mlビン入り)」(374円) 筆で塗るのに適した液状のラッカーパテ。凸凹や気泡、キズなど比較的小さな箇所を修正するのに最適。ラッカー溶剤で薄めれば、エアブラシで塗装もできる
▲「タミヤパテ(ベーシックタイプ)」(330円) 部品の隙間やくぼみの補修、穴埋めなどに使用するパテ。硬化後の肉ヤセが少なく、乾燥時間はパテの厚みが1mm以下なら約1時間。硬化前ならラッカー溶剤で薄めることもできる
▲タミヤ「ファインサーフェイサーL(ライトグレイ)」(880円) 塗装の下塗り用や下地仕上げ用として使用する。きめ細かい滑らかな仕上がりを得られる。ライトグレイは細かな傷などが見つけやすく、上塗り塗料の発色も良くなる。ライトグレイの他、グレー、ホワイト、ピンクがラインナップ
■エッチングパーツの貼り付け
本機の特徴として、主翼と胴体の合わせ目や補助翼、フラップ、さらには水平尾翼、垂直尾翼などの動翼のヒンジ部分に補強板が取り付けてあります。
他国の戦闘機ではあまり見られないので、イタリア機ならではといったところですが、機体外板の強度に不安があるんだろうか? などと考えてしまいますね。
キットではこの補強板がエッチングパーツで再現されおり、機体外板より一段高くなるので、モールドに比べて立体感を得られます。サイズが小さく枚数が多いのですが、瞬間接着剤で丁寧に貼りつけていきます。
▲キットに付属する真ちゅう製エッチングパーツ。補強板は小さいのでエッチングハサミではなくデザインナイフでゲートを切り離した方が良い
▲主翼と胴体を繋ぐフェアリング部分、補助翼のヒンジ部分にエッチング製の補強板を貼っていく。機銃の銃身基部もエッチングの補強板で再現されている
▲主翼下面は胴体との接合部分に大きめの補強板が取り付けられている
■機体をサーフェイサーで下地塗装
エッチングパーツの取り付けなどが完了したら、エンジンやコクピット、脚収納部を丁重にマスキングし、缶入りサーフェイサー(ライトグレー)で下地塗装を行います。
ファインサーフェイサーはエッチングパーツの下地にも有効で、塗装のハゲを防ぐ効果があります。厚塗りにならないように注意しながら、薄く機体全体、同時にエンジンカバーなども塗布しておきます。
乾燥後に胴体の合わせ目、パテで修正した主翼と胴体のつなぎ目などチェック。問題があればこの時点で修正しておきます。
▲サフ吹きによる下地塗装が完了した機体
■パネルラインへのシェード塗装を入れる
サフ塗装の表面を2000番のスポンジヤスリで軽く磨いた後、機体全面のパネルラインにセミグロスブラックで影色となるシェード塗装を入れていきます。
キットは、パネルラインはやや太めの凹ライン(イタレリスタンダード)で再現、リベットは主翼の一部等にしか再現されておらず、1/32スケールとしてはかなりあっさりとした印象があります。エンジンやコクピットが割と濃い味付けなので、機体のパネルラインが薄味なのがちょっと残念ではあります。
機体にリベットを追加もアリなんですが、今回は塗装で機体のメリハリを付けることにしました。なので塗装に表情をつけるシェード塗装は欠かせません。
▲機体のパネルラインは太めの凹モールドで再現
▲リベットは一部のみ凹で再現されている。スケールを考えるともう少しメリハリを着けて欲しかった
▲キットは機体のリベットが一部のみしか再現されていないため、全体にのっぺりとした印象が強い
▲今回は塗装で機体のメリハリを出していこうと考えているのでシェード塗装はしっかりと入れている
■いよいよ機体の塗装!
影色となるシェード塗装が完了したら、いよいよ機体の塗装です。
今回は機体色もVICカラーから発売されたイタリア空軍機カラーを使用ました。同カラーは水性カラーなので、ラッカー系塗料のような刺激臭がなく、シンナー臭が苦手な方にもオススメです。エアブラシと筆塗りのどちらにも対応しているのもありがたいです。
エアブラシ塗装では希釈しなくても吹けるとなっていますが、今回は個人的な好みで5%程度、アクリル溶剤で希釈しています。10%以上希釈してしまうとムラになりやすくなるので要注意です。
エアブラシは0.3mmのダブルアクション、エア圧0.7Mpaで使いましたが、この手の水性系塗料でありがちなノズルへの詰まりもなく使い勝手は良い塗料です。
▲機体塗装には下面に「ライトブルーグレー1」、上面に「ライトヘーゼルナッツ4」を使用している
▲まずは機体下面の塗装から。使用しているのは「ライトブルーグレー1」
▲塗装→乾燥を3回繰り返して、シェードの黒ラインを微妙に残すよう塗り上げていく
▲「ライトブルーグレー1」の塗装が完了。水性カラーなので乾燥にはやや時間がかかるためヘアドライヤーの温風で時間短縮
▲機体下面色と同じになるラジエターや水平尾翼も塗装しておく
▲ラジエター
▲機体上面は「ライトヘーゼルナッツ4」を塗装
▲下面と同じく、3回塗り重ねている
▲機体の塗装に光沢があるのは、今回のハイライトとも言えるスモークリング迷彩のデカールのシルバリング(※)を防ぐ目的で、セミグロスクリアーにて塗装面全体をオーバーコートしたため
※デカールのシルバリングとは?
デカールをツヤ消し塗装面やざらついた塗装面に貼った場合、デカールのフィルムが密着できないため、塗装表面との間に空気が残りデカールが浮いてしまう。こうなると印刷されていないデカールのファイルムが白く目立ってしまう。これをシルバリングと呼びます
▲上面の塗装が下面にまで回り込んでいるのがイタリア機の特徴
▲ラジエターの側面も上面と同じ色に
▲塗装の乾燥後、マスキングを剥がして塗料の吹きこみがないかをチェック
▲吹きこみはなかったが右水平尾翼を見事に塗り忘れている
■次回はいよいよ迷彩デカールの貼り込み!
機体の塗装が完了(水平尾翼を塗り忘れましたが)。いやー、塗装が入るとイッキにイタリア機らしく見えてくるから不思議なものです。モチベーションもぐっとあがります。
次回は本キットの特徴でもある、スモークリング迷彩のデカールを貼っていきます。いや、ちゃんと貼れるんでしょうか? なんか100枚くらいあるし…。
というワケで次回もマッキMC.202フォルゴーレの製作、乞うご期待です!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/609316/
- Source:&GP
- Author:&GP
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