情報やデータの量だけは確保しているものの、活用方法がわからず意思決定が進まない──そんな問題を解消するのがDecision Intelligence(DI:意思決定インテリジェンス)だ。DIとは、機械学習を用いてビジネスにおける人間の意思決定の自動化・高度化を図るアプローチ。データやAIを活用することで企業の意思決定を最適化し、業績の改善につなげるものである。
このDI市場は、全世界において成長が見込まれている。Fortune Business Insightsの調査によれば、2023年に約147億ドルだった同市場は2024年に約168億ドルに達し、2032年には約596億ドルにまで伸びる見込みだ。2024年から2032年までの年平均成長率は、17.2%にものぼる。
DIはすでにさまざまな分野で活用されているが、飲食業向けのDIで注目を集めているのが米国発のSignalFlare.aiだ。データに基づいて価格設定や需要の予測、プロモーションの効果などに関して考察し、飲食店の利益を押し上げるという。
コロナ禍がきっかけで進化したデータ分析
SignalFlare.aiは2022年にMichael Lukianoff氏によって設立された。同氏は飲食店の運営や飲食業界のテクノロージに造詣が深い。たとえば2000年から8年弱にわたってRevenue Management Solutions North America社(飲食店向けに価格分析やメニューに関する専門知識を提供)で社長を務めていた。
2009年にはCzar Metricsを設立し、CEOに就任。同社は飲食店のメニュー分析や価格分析、SNSマーケティング戦略などを手がける(2019年に退任)。
Michael氏は「Restaurant Technology Guys」(飲食業界のテクノロジーに特化したポッドキャスト)のインタビューに応じ、SignalFlare.aiの立ち上げのきっかけとしてコロナ禍を挙げている。
それまでのやり方が通用しなくなり、新たな手法を生み出す必要に迫られたのだ。消費者の行動をよりよく理解するために、従来のデータ分析方法を大きく見直したという。
意思決定の最適化で飲食店の収益を押し上げる
SignalFlare.aiは、クレジットカードの利用データ、飲食店の価格データ、地域経済データなどを店舗が持つ独自のデータとともに分析。複数のシナリオをリスクとともに提示するという。これにより、経営者は価格設定、プロモーション、マーケティングに関し、目標やリスク許容レベルに基づいてベストな意思決定を下せるようになる。
このような画期的なサービスは幅広い支持を集めている。顧客リストにはFirst Watch Restaurants(NASDAQ上場)やAuthentic Restaurant Brands(1933年創業のPrimanti Brosなどを傘下に持つ)など有名どころも名を連ねているほどだ。SignalFlare.aiのサービスが結果を出している証左だろう。
実際、同社の初期の顧客である飲食店チェーンのケースでは、270万ドルの増収を実現したという。同チェーンにとっては7万5000ドルの投資が36倍になって返ってきた計算だ。
NYSE上場へ
SignalFlare.aiは現在2年目に入り、収益が初年度の3倍に達する勢いだという。同社の勢いはさらに加速している。今年には「Snowflake Startup Challenge」というコンテストに参加。同コンテストはSnowflake(クラウドサービス)を利用するアーリーステージのスタートアップが対象だ。
Snowflakeとニューヨーク証券取引所(NYSE)が運営に携わっており、優勝すると最大100万ドルの資金提供が受けられるほか、NYSEに上場できる可能性もある。100か国以上から1000を超えるスタートアップが応募した同コンテストで、SignalFlare.aiは見事に優勝。今年10月にはNYSEに上場予定だ。この勢いがどこまで続くのか、同社の今後に注目したい。
参考・引用元:
SignalFlare.ai
Fortune Business Insights
LinkedIn
PRWeb
Snowflake
(文・里しんご)
- Original:https://techable.jp/archives/238008
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:sato.s
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