トヨタ自動車といえば…の問いかけでどんなモデルを思いつくか。これだけの車種を長い年月かけて販売してきているトヨタだけに千差万別でしょうが、ファンが多いのがランドクルーザー。
2023年11月29日に「ランドクルーザー70」が登場。24年夏に一般道で乗ってみました。自分のなかの記憶よりはるかに乗りやすく、操縦の楽しさを味わえるクルマです。オフロード派にもオンロード派にも勧めたいと思いました。
▲最大渡河性能700mmを誇る
▲パートタイム4WDなので、滑りやすい路面では「H4」で安定感を、強力な駆動力が欲しいときは「L4」を選択。アプローチアングル33度、ランプブレークオーバーアングル26度、デパーチャーアングル23度と高い踏破力を発揮
知っている人はご存知のとおり、実は「ナナマル」と呼ばれるJ70型、1984年以来のロングセラーなのです。世界中でファンを増やしてきました。
日本では、2004年に販売が中止されたあと、2014年に1年間限定で、4リッターV6ガソリンモデル(マニュアル変速機)が販売され、このときもたいへん好調な売れ行きを示しました。今回は、新たに2.8リッターディーゼルエンジンに、オートマチック変速機搭載で登場です。
■機能的に必要なところだけをアップデート
▲テールゲートは左右で大きさが違うドアによる観音開き
「リフレッシュした“70”のよさは粗削り(raw)で機能主義的なところで、ボディワークに手を入れるとともに、より効率的な新型エンジンとトランスミッション、先進の安全装備という、機能的に必要なところだけをアップデートしました」
▲丈夫で耐久性にすぐれたラダーフレームは、オンロード走行時の安定性や快適な乗り心地も実現
▲ランクルの生産を担当するトヨタ車体では愛知県刈谷市に「ランクルBASE」を運営し、点検/整備/修理/車検/カスタマイズ/構造変更/ワンオフパーツ作成など行う(写真は「2024年東京オートサロン」での出展車両)
発売に先立ち、23年8月にランドクルーザー250のお披露目とともに、今回の70を発表した際、トヨタ自動車でデザイン統括部長を務めるサイモン・ハンフリーズ氏は上記のように述べました。
▲今回LEDを使った円形ヘッドランプが採用された
▲シンプルで視認性の高さをなにより重視したメーターと手袋をはめたままで使える大きな操作類が心強い
ラダーフレームシャシーに前後ともリジッドのサスペンション。本格的なクロスカントリー型4WDの教科書のような設計は、今回も引き継がれています。メリットは悪路で路面の追従性が高く、タイヤが浮きにくいこと。激しい振動を伝えにくいのも、ラダーフレームのメリットでしょう。
悪路走破に欠かせない電動デフロックに加え、ビークルスタビリティコントロール、アクティブトラクションコントロール、ヒルスタートアシストコントロール、ダウンヒルアシストコントロールを採用し、高い操縦性が確保されているのも特徴です。
▲キーホルダーの形状もかわいらしい(キーホルダーはオプション)
■悪路の走破性は言わずもがな。高速走行もいけるオールマイティぶり
▲タイヤは目的別に履き替える楽しみも
一方、開発陣は、サスペンションシステムの設定を見直して、乗り心地の改善をはかったといいます。それが先に述べたとおり、街中や高速道路を走ったときの快適性につながっています。
悪路での走破性を強く追求すると、そのぶん、高速などでの直進安定性が犠牲になりがちです。昔のランドローバーなどは、脚がうんと延びて悪路でも意外なほど揺れずに走れる一方、高速ではやや緊張を強いられたものです。ランクル70はオールマイティぶりが光ります。
最高出力150kW、最大トルク500Nmを発生する2.8リッター直噴ディーゼルエンジン搭載ですが、回転に頭打ち感がないうえに、静粛性もけっこう高く、「粗削り」なところはあまり感じられません。
▲着座位置が前席より高く前方の見晴らしがよい後席シート
感心するのは、シートです。ひとつはクッション性がとてもよく、路面の振動をうまく吸収してくれること。すばらしい出来映えです。もうひとつは後席。シアタータイプなどと表現されますが、着座位置を前席より高く設定してあるので、後席乗員もウインドシールドごしの景色を楽しめます。
▲路面からの衝撃をきれいに吸収してくれるシート
ステアリング比は大きめで、小さなコーナーではハンドルをたくさん回さなくてはならないこともあります。アクセルペダルの踏み込み量に対してトルクの出方もあえてゆるやかな設定なので、スムーズな加速のためには、慣れる必要があるかもしれません。
ドアを閉めるときの鉄と鉄がぶつかるような音、鉄板がそこかしこでむきだしの車内、小さなインフォテイメントシステムのモニターなど限られた快適装備…これらも独特の世界を作っています。
▲荷台高1120mm、荷台幅最大1440mm、奥行き1355mm(後席倒した状態)と広大な荷室
ただしこれらは、70を好きになれる特徴です。自分が一所懸命クルマを動かしている感覚が、ほかではあまり味わえないもので、クルマ好きならハマるひとがいても、フシギではありません。荷室がめちゃくちゃ広いのも、アレコレ搭載して…と想像の楽しさを拡げてくれます。
今回から70はいわゆる3ナンバーになりました。2014年のときは1ナンバー登録でした。後者は、メリットとして自動車税・自動車重量税の安さが挙げられる一方、デメリットとして毎年車検や高速料金が3ナンバーより高くなります。乗用車としてなら、3ナンバーのほうが使いやすい、というのが、今回のトヨタの考えです。
「荒野から砂漠、さらには北極から南極まで、ランクルは、歴史上どのクルマよりもさまざまな人生に寄り添ってきたのではないでしょうか」
前出のハンフリーズ氏はそう語っています。一度エンジンに火を入れたら世界の果てまでも、と、かつてフランスのシトロエンのクルマづくりの哲学が説明されたことがあります。いまはランクル70こそ、まさにそれではありませんか。
【Specifications】
Toyota Landcruiser 70
全長×全幅×全長:4890×1870×1920mm
ホイールベース:2730mm
車重:2300kg
エンジン:2754cc 直列4気筒ディーゼル
駆動:パートタイム4WD(副変速機付き)
最高出力:150kW@3000〜3400rpm、最大トルク:500Nm@1600〜2800rpm
価格:480万円
<取材・文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/616061/
- Source:&GP
- Author:&GP
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