【達人のプラモ術】
エアフィックス
「1/48 ブリストル・ブルドックMk.Ⅱ」
02/06
ブリストル・ブルドックの製作、第2回となる今回は、機体を組んでいきます。一般的な飛行機モデル(単葉機)では、胴体と主翼を合体、できる限り「士」の字に仕上げて機体の塗装となるのですが、複葉機の場合、そうはいきません。
なんといっても主翼は2枚あります。これを組んでしまったら機体の塗装ができなくなってしまいます。さらに複葉機の特徴でもある翼の張り線の工作も考慮しながら機体を組んでいかないといけないんですね。(全6回の2回目/1回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■組み立てと塗装の順番
今回キットは、シリンダーブロックがむき出しのブリストル・ジュピターV2F単列9気筒空冷星型エンジンのディテールが細部までよく再現されているのですが、エンジン本体を機体に組んだ後、シリンダー(9気筒)を取り付けないといけません。
つまるところ、胴体と主翼(下翼)を組んだのちに機体を塗装。さらに塗装したエンジン本体を胴体に取り付けたのち、個々に塗装したシリンダーを取り付ける。上翼は単体で塗装、張線を考慮しつつ、胴体と合体という手順となります。
▲前回コクピットを挟み込んで組み上げた胴体に水平尾翼を取り付ける
▲インストでは水平尾翼と同時に垂直尾翼とラダー(方向舵)も接着するように指示されているが、取り付けてしまうと胴体の塗装でマスキングが必要になってしまうため後づけにした
▲垂直尾翼とラダーを仮組みした状態。パーツの合いは良いのであと付けでも問題ない
▲垂直尾翼だけではなく、機首の照準器なども機体塗装後に個別塗装して取り付ける
▲インストの工程50からがエンジンの組み立てとなる。1/48スケールということもあって、エンジンは組み上げても直径約3cmと小さいが、9気筒のシリンダーが別パーツかされるなど、特徴的なジュピターエンジンのディテールが精密再現されている
▲製作中のエンジンパーツ。シリンダーはパーツが小さいので紛失注意。実際作業中にピンセットで挟んだパーツを飛ばしてしまい、危なくパーツロストを起こしそうになった
▲長さ1cmに満たないシリンダーは前後合わせ。ジュピターエンジンは9気筒なので、18個のパーツを組んでいく。またそのうち2気筒のみヘッドの形状が違い、取り付け位置が指定されているので要注意
■主翼の穴あけ指定にミスがあるので注意!
主翼は上下を接着する前に、指定の箇所にピンバイスを使い直径1mmの穴を開けろと指示されています。しかし明らかに直径1mmは大きすぎます。張り線を取り付けるための穴なので、直径0.2mmの穴で充分です。
▲主翼(上翼)は前縁2か所に穴あけの指示がされているが、開口サイズが直径1mmでは大きすぎる
■主翼の後縁を薄くシャープに加工する
キットの主翼は上翼、下翼ともに上下2枚合わせとなっています。そのためどうしても後縁部分が厚くなってしまい、実感を損ねています。なので後縁を薄く削って薄く加工することをオススメします。
ただしブリストル・ブルドックの主翼は木製の桁に羽布張り構造で、後縁も桁の部分がなだらかに凸状盛り上がっているので、このディテールを潰さないように研磨してください。
▲見て分かるくらい主翼の後縁がぶ厚くダルいので、ここは薄く削ってシャープに仕上げる必要がある
▲羽布張り構造を再現したディテール(桁の上に貼られた羽布がなだらかに盛り上がって後縁まで繋がっている)を削り落とさぬように注意して、後縁を薄く削って仕上げる
▲デザインナイフで削りことで薄く仕上げた上翼の後縁部分
▲組み上げた胴体と主翼を合体。水平尾翼付け根のパーツに僅かに隙間が生じたので溶きパテを流し込んで修正している
▲胴体に主翼(下翼)を取り付けた状態。1/48スケールだが、第二次大戦機と比べて機体はかなり小さい
▲胴体と下翼を合体させたのち、サーフェイサーで下地塗装をする
▲今回ブリストル・ブルドックは銀塗装(機首周りは無塗装)となるので、研磨キズ等を残さないように下地仕上げは丁重にやっておく
▲上翼が付くといかにも複葉機(あたり前)。この時点で翼間支柱などの取り付け位置をチェック。塗装の手順もシミュレーションしておく
▲サフでの下地塗装ののち、エアブラシを使いセミグラスブラックで下地となるシェード塗装の黒を入れておく
■ブリストル・ジュピターV2F単列9気筒空冷星型エンジン
ジュピターは第一次世界大戦中にコスモス・エンジニアリングのロイ・フェデン技士により設計されたエンジンで、1918年から1930年まで生産が続けられ、同社がブリストルに買収されのちも改良を加えられながら生産が続き、当時の航空機業界で最も信頼の高いエンジンとして名を馳せました。
ブリストル・ブルドックでは、冷却のためにエンジンカウリングがなく、鉄製のシリンダーライナをアルミニウム合金で鋳包んで冷却フィンが刻まれたたシリンダーとシリンダーヘッドがむき出しになっているのが外観上の特徴です。
キットは組んでみると9気筒のシリンダーを別パーツ化するなど、細部までエンジンのディテールにこだわっているのが分かります。
▲現存するブリストル・ジュピターエンジン
▲ブルドックに搭載されたジュピターエンジンは一般的な星型エンジン搭載の飛行機に見られるカウリングがなく、胴体内に埋め込まれており、冷却のためシリンダーと排気管がむき出しになっている
■複葉機で避けては通れぬ張り線を、どうやって再現?
今回、胴体と主翼などメインのパーツが組み上げたことで、飛行機らしいカタチなってきました。単葉機ならばさぁ塗装!となるのですが複葉機の場合、塗装もお楽しみではあるものの、同時に張り線のこと考えないといけません。
張り線の取り付け位置に関しては詳しく指示されているので良いのですが、さて張り線には何(どんな素材)を使えばよいのでしょうか。古くは木綿糸とかテグス(釣り糸)などが良く使われており、細くてしなやかということで、線に髪の毛を使ったという例もありました(髪の毛は湿度が高いと伸びて弛んでしまいますが)。
木綿糸は毛羽立ち、あまり細いものは望めません、また釣り糸はクセが強く、やや扱いづらいといった感じです。
あと割と使われているのが、伸ばしランナーといったところでしょうか。プラモ製作で使用しないランナーをカットして、火であぶり溶け出したところで引っ張ると、細いプラ線がつくれるアレです。引っ張るスピードで太さを任意でコントロールできる、素材がプラなので接着剤との相性もよく塗装もやりやすい、といったメリットがあります。ただ細くすると切れやすい弱点も。
■オススメはストレッチリギング
昨今、張り線の素材としてイチオシは、モデルカステンから発売されているストレッチリギングでしょう。伸縮性あるナイロン素材でできており、模型用に作られているので細さも1/48の複葉機ならば0.13mmといったものが発売されています。
取り付けは瞬間接着剤を使用します。伸縮性があるので、取り付け後に温度変化などで弛んでしまうことはありません。他の素材に比べてやや高価なのは否めませんが、使い勝手の良さはピカイチです。
また同じようなアイテムとしては、極細の金属線が使われているメタルリギングがあります。これは艦船モデルの張り線で使用されており、より細いものが揃っています。また金属線なので極細でも強度が高く切れにくいといった特徴があります。
▲ライターなどでランナーを溶けるまで加熱し、左右に引っ張るだけで作れる伸ばしランナー張り線。自由に太さが調節出来て、本来不要なランナーを使用するのでコストゼロ
■個人的に愛用の極細ピアノ線
ストレッチリギングはイチオシなのですが、今回個人的には極細(0.2mmのピアノ線)を使用するつもりです。
ピアノ線を張り線の長さに合わせてカットして貼るのではなく、取り付け位置にはめ込んで瞬間接着剤で固定します。なぜピアノを使うかと言えば、真ちゅう線や洋白線に比べて強度が高く折り曲がりにくいのと、ピアノ線ははじめから黒染めされているので塗装の手間がかからないからです。
▲モデルカステンから発売されている「ストレッチリギング(飛行機模型用伸縮性張り線)0.6号(0.13mm×25m入)」(1980円)。1/48スケールの複葉機に最適
▲モデルカステン「ストレッチリギング(飛行機模型用伸縮性張り線)1.5号(0.2mm×25m)」(1980円)。やや太めの1.5号は1/32の複葉機に適している
▲直径0.2mmのピアノ線。長さ30センチ、10本入りで価格は900円前後。 ピアノ線はとても硬いので切断には金属用のニッパーが必要になる
▲モデルカステン「メタルリギング艦船模型用極細金属張り線 0.1号(0.06mm×5m)」(1970円)。1/700艦船モデルの張り線に適した黒染め極細の金属線。強度が高く切れにくい。太さも各種あり複葉機の張り線にも使用できる
* * *
次回第3回はいよいよ機体塗装とピアノ線を使った張線の実践を解説していきます! 乞うご期待!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/620593/
- Source:&GP
- Author:&GP
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