静止から時速100kmまで3秒で加速する一方、乗り心地がよくオールマイティ。全方位的によく出来ているのが、2024年7月に試乗した「マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー」です。
スポーツにクルマで出かける人もいれば、クルマに乗ること自体がスポーツという人もいるのでは。アルトゥーラ・スパイダーをドライブすると、実際、スカッと爽快な気分が味わえるのは間違いない、と太鼓判を捺せる出来映えです。
■マクラーレン初のプラグインハイブリッド採用
▲日本のナンバープレートの形状と大きさはデザイナーの敵、と言われていることがよくわかる
クルマ好きなら、オレンジ色のボディを見た瞬間に「マクラーレン」と当てられるぐらい。ここまで車体色と色のイメージが強く結びついたクルマもないでしょう。
60年代からのF1マシンやカンナム(カナディアンーアメリカン・チャレンジカップ)で優秀な成績を収めたマクラーレン車のプラスチック模型を作ったことがある、なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな思い出があるひとには、アルトゥーラ・スパイダーにもオレンジが用意されている事実が、嬉しいかもしれませんね。
創設者であるニュージーランド人のレーシングドライバー、ブルース・マクラーレンは、オレンジ色にこだわりつづけました。で、実際、オレンジ色ってきれいなんです。2月に発表されたアルトゥーラ・スパイダーでも同じことを感じました。
▲試乗会が開かれた安比高原のリゾートに並んだ車両
もちろん、話題は車体色にとどまっていません。3リッターV6エンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドを、マクラーレンとしては初採用(アルトゥーラ・クーペも同様)。515kW(700ps)のハイパワーで、最高速は時速300kmに達するとされています。
マクラーレンの出自はレースカーで、F1や耐久レースで活躍してきました。なので、パワーアップだけがすべてではありません。車体を軽量化し、電子制御サスペンションシステムの反応をより高め、ブレーキングパワーを強力にし、変速機のシフトスピードを引き上げています。
▲オレンジのパネルとブラックの機能部分とのコントラストが美しい
▲マクラーレン車の特徴であるディヒドラルドアをそなえる
ボディは、おなじみの、といっていいかどうかわかりませんが、有機的なマクラーレンスタイルです。ただし今回は、フロントとドア背後の巨大な空気取り入れ孔が目立ちます。
▲オプションのエレクトロクロミック・ルーフパネルはオープンさながらの開放感
▲キャビン背後のフライングバットレスには斜め後方の視界確保のため透明パーツを埋め込むなど細かい心配り
▲エンジンの熱気抜きのための孔はまさにレースカー的
欧州の大きな教会建築で建物の支えを意味するフライングバットレスと呼ばれる、キャビン背後のオープントップ用の構造材を持つスタイルは従来のマクラーレンのオープンモデルと同様。11秒で開閉します。
オプションで「エレクトロクロミック・ルーフパネル」を選べば、室内のダイヤルで、ハードトップにガラスパネルをはめこみ、その透明度をダイヤルでほぼ真っ暗からほぼ透明まで無段階で変えていけます。トップを閉めていても、オープンのような開放感が味わえます。
■足のちょっとした動きで加減速対応するクルマとの一体感
▲デザインは進化しても基本コンセプトは継承し、すぐにマクラーレンとわかるリアビュー
▲フルオープンだが風の巻き込みは少ない
とにかく、痛快なドライブ感覚です。エンジンはモーターの力もあって発進時からトルクたっぷり。どこまでも加速していく感覚です。
ドライブモードでスポーツモードあるいはトラックモードを選ぶと、右足のちょっとした動きですかさず加速。またブレーキも同様、ペダルを踏む足の微妙な力のいれぐあいに対応して減速します。ドライブしている自分とクルマの一体感にはすばらしいものがあります。
▲人工スエード張りのシートは滑らず快適
▲ナビゲーションなど多く機能をもつインフォテイメントシステムはアップルウォッチのようなグッドデザイン
ステアリングもやはり繊細。2023年に発売した「750S」から目立ってマクラーレン車の操作性は向上しています。アルトゥーラ・スパイダーは、モーターによる微妙な加減速ができることも手伝って、運転するひとの身体感覚に忠実なスポーツ性をしっかりそなえているのです。そこがすごい。
ちなみにフル充電の状態で約33kmのバッテリー走行が可能です。ドライブモードでトラックモードを使えば、走行中にも充電できます。スポーツカーも新しい時代へと進んでいるのだという感ひとしおでした。
▲ミドシップの利点を活かしドライバーの乗車位置はほぼクルマの中央
▲ハードトップを上げるとクーペのような流麗な美しさ
【Specifications】
McLaren Artura Spider
全長×全幅×全長:4539×1976×1193mm
ホイールベース:2730mm
車重:1457kg
エンジン:2993cc V型6気筒プラグインハイブリッド
駆動:ミドシップ後輪駆動
トータル最高出力:445kW、最大トルク:720Nm
加速性能: 0-100kph 3.0秒
最高速:330kph
EV航続距離:33km
価格:3650万円
<取材・文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/621478/
- Source:&GP
- Author:&GP
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