陸運の効率化と安全性の両立は、日本だけでなく世界中で問題提起されている。
たとえば日本では、事業用トラックが第1当事者となる死亡事故件数*が令和6年8月時点で年間累計132件発生。過去さかのぼっても年間およそ200件もの死亡事故が起きており、国土交通省は事故件数及び死傷者数の減少が早急な課題となっていることを訴えている。
*警察庁「交通事故統計(令和6年8月末)」より
こうしたなか、インドネシアのMcEasyは、AIビデオ監視によって「運転中のドライバーの状態」まで判定することを可能にした陸運向けオペレーティングシステムを開発し、今年6月にベンチャーキャピタルからの出資も得ている。
ドライバーの疲労や眠気、危険な運転動作を検知
交通事故の原因には、ドライバーの意識障害に起因するケースも多くある。飲酒運転による悲しい事故も後を絶たず、これを阻止するテクノロジーが国内外で待ち望まれている。
McEasyの運送会社向けオペレーションプラットフォームは、リアルタイムの車両監視や燃料管理、配送注文プロセスをスピードアップするための配送ルートの最適化などを支援。特筆すべきは、運転中のドライバーの様子を監視するカメラも用意していることである。これはAIと連動し、ドライバーの様子から危険につながる動作を検知することができる仕組み。ドライバーの表情から疲労や眠気の状態、さらには車線からの逸脱、車間距離の異常な短縮などを検知して警告を発する。 “あくび”などのドライバーのしぐさや電話などの「ながら運転」、喫煙、シートベルト未着用などの危険動作も即座にAIが検知し、運送会社へ向けてリアルタイムにアラートされる。もしも事故が起こってしまった場合には、その瞬間と前後の様子を撮影した映像記録をプラットフォームにリアルタイム共有。「事故が起きてから数時間後にカメラのSDカードを取り出してから初めて様子を確認する」という従来の手法ではなく、即座に本社の運行オペレーターが現場の映像を確認できることで迅速な対応につなげる。
燃料や車両の盗難対策も
また同社のプラットフォームでは、トラックの燃料の減り具合までプラットフォーム上にリアルタイム表示される。これは燃料漏れといったトラックの故障を早期に発見するだけでなく、燃料の盗難を明らかにする効果も。
インドネシアでは燃料コストの高騰を背景に、トラックから燃料を盗み出す犯罪が増加している。なかには、駐車場に停めてある一般車の給油口を開けて燃料を抜き取る大胆な手口もあるほどだという。
McEasyのプラットフォームは、そうした犯罪の防止にも対応。遠隔操作でエンジン停止することまで可能とし、より安心で効果的な車両管理をサポートする。大手バス会社とも契約
なお、このプラットフォームはトラック輸送のみならず、バスや農業用車両にも適合することができるという。定期的整備が必要な車両の検出・通知も機能として実装しているため、整備不良による故障や事故の可能性も減らせるだろう。
ちなみに、McEasyの公式サイトではレンタカーにも同様のシステムを導入できるとしている。車両登録などの文書更新リマインドや、ドライバーによる喫煙や注意散漫などのアラートで受け取ることができ、適切な車両管理をサポートする。
McEasyは今年6月にシリーズA投資ラウンドでの資金調達を達成した。調達総額は1,100万ドル、主要投資家はGranite Asiam、East Venturesなど。特にEast Venturesは2021年からMcEasyを支援していて、今回のラウンドで出資額を2倍にしたという。
この資金調達を伝えるプレスリリースの中で、McEasyは過去18か月のうちに契約企業をそれまでの6倍、1,500社に増やしたそうだ。その中にはDAMRI、JNE Express、Pertamina、Pelindo、MGM Bosco、KMDI Logistik、Telkom、Tantoなどが名を連ねている。インドネシアを訪れたことのある人なら、DAMRIの空港バスを利用したという経験を持っているのではないか。スカルノ・ハッタ国際空港からジャカルタ市内への1時間半ほどの移動を担うのが、DAMRIの直通バスである。これらのバスにも、McEasyのシステムが導入されているという。
同社の発表では、インドネシアの物流業者の85%が未だ旧態依然とした手作業のオペレーションに頼っていることを指摘。McEasyがインドネシアの物流を一気に近代化し、単なるデジタル化だけでなく、さらなる安全性の向上に大きく貢献することも期待される。
参照:
McEasy
全日本トラック協会 トラックの重大事故にかかる統計データ
(文・澤田真一)
- Original:https://techable.jp/archives/245716
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:澤田真一
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