【趣味カメラの世界 #9】
100年以上の歴史を持ち、数々のフォトジャーナリストや写真家に愛され続けるカメラブランドといえば、Leica(ライカ)ではないでしょうか。本連載の第1回目ではXiaomi(シャオミ)のスマホにライカの技術を搭載した「シャオミライカ」を取り上げましたが、今回はいよいよその本丸であるライカのカメラを紹介します。人はなぜライカに惹かれるのか、その理由を探ります。
執筆者:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている
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今回ご紹介するのは、ライカのレンズ一体型シリーズ「ライカQ」の最新機種、「ライカQ3 43」です。クラシックな佇まいに現代のテクノロジーが組み合わさり、まさに現代のライカのエッセンスが凝縮された1台といえるでしょう。
結論から言うと…これ、かなり良いです!
■手に取った瞬間に感じる、他とは一線を画す重厚感
ライカQ3はジャンルとしてはコンパクトカメラに分類されますが、実物は少々大きめ。バッテリー込みで約793gあり、手に持つと金属製のカメラボディならではのずっしりとした重みが伝わってきます。
コンパクトで軽量とは言えないものの、カメラボディの質感が非常に高く、工業製品としての「良いモノ感」が所有欲を満たしてくれます。
ネジ込み式のレンズフードは、ネジ切りの精度の高さからくる着脱時の気持ち良さが格別。また、カメラをグリップしたときの剛性感も抜群で、実際に触れてみると作りの良さがひしひしと伝わってきます。
写真では伝わりづらいのですが、背面液晶とファインダーの見え方が自然で美しいです。ほぼミラーレスカメラしか使用しなくなって数年が経ちますが、これまでに見たファインダーの中でもトップレベルの見やすさだと思います。
感覚的な部分なので、ぜひ実機で確認してほしいところですが、ファインダーやモニターの解像度などのスペックだけでは表現しきれない部分もあると感じました。この気持ち良いファインダーの見え具合が、写真撮影をさらに楽しいものにしてくれます。
背面モニターはチルト式で、ウエストレベルでの撮影もスムーズに行えます。個人的に、スチール撮影ではバリアングルよりもチルト式の液晶のほうが扱いやすいと感じるので、地味にうれしいポイント。
触ったときの質感やボタンの感触、細部の操作性など、すべてが心地良く、使うたびに道具としての完成度の高さを実感し、写真を撮る楽しさが増していきます。
■その場の空気感まで“映す”「ライカ アポ・ズミクロン F2/43mm ASPH.」の高い表現力
作りの良さからくる満足感もありますが、もちろんカメラとしての性能も素晴らしいです。特にレンズには非常に満足しています。
搭載されているレンズは、特別に設計された最高峰の光学性能を誇る「ライカ アポ・ズミクロン f2/43mm ASPH.」です。
人間の視野に近い43mmの標準焦点距離を持ち、風景からポートレートまで多様なシーンで活躍します。
▲シャッタースピード1/125秒、F2.0、ISO50、LEICAQ3 43、Capture Oneで現像
レンズは開放からシャープで、抜群の解像感を誇ります。自然なボケが写真に立体感を与え、歪みもなく発色も美しい仕上がりです。
▲ シャッタースピード1/1250秒、F2.0、ISO100、LEICAQ3 43、Capture Oneで現像
開放F値は2.0と、単焦点レンズとしてはやや控えめですが、撮り方次第で十分なボケ味を得られます。
滑らかなボケが被写体を印象的に浮かび上がらせ、オートフォーカスも人物の瞳をしっかりと認識。歩きながらの撮影でもきっちりとピントが合いました。
▲シャッタースピード1/1600秒、F2.8、ISO100、LEICA Q3 43、Capture Oneで現像
歪みがなく、高いシャープネスと色再現性でその場の空気感をリアルに描き出してくれます。高解像センサーとの相性も抜群で、レンズの性能が最大限に発揮されています。
また、単焦点レンズでありながら、43mm〜150mmのズームレンズのような感覚で使うことも可能です。
6000万画素の高解像度センサーを活かし、撮影後のトリミングによってさまざまな焦点距離での表現が可能です。
デジタルズームを使用する際にはフレームが表示されますが、150mm相当のズーム時にはフレームが画面に対して非常に小さく、AF枠などが重なると被写体がほとんど見えなくなることもあります。
JPEGでの撮影ではトリミングされた状態で記録されますが、RAWでは全体が記録されています。また、RAW現像ソフトによっては撮影時のトリミング情報が記録されており、現像時にその情報を活用することも可能です。
RAWで撮影する場合、後からトリミングしても同じ結果が得られるため、正直なところ、撮影時にトリミング設定を行う必要はないかもしれません。ただ、撮影時に画角のイメージをつかみやすいのはメリットといえるでしょう。
マクロ撮影にも対応していますが、マクロモードで撮影するにはレンズの根元にあるモードを切り替える必要があります。通常モードでは最短撮影距離が60cmのため、被写体にあまり寄ることができません。
▲シャッタースピード1/80秒、F2.8、ISO1600、LEICAQ3 43、Capture Oneで現像
マクロモードでは最短撮影距離が26.5cmと、かなり寄っての撮影が可能です。近接撮影でも解像性能が落ちることなく、シャープな描写を実現します。被写体にかなり近づくため、多少の歪みが出ることはあります。
寄りが利くため、テーブルフォトなどにも活用できますが、マクロモードで撮影した後にノーマルモードに戻し忘れ、次の撮影時に「あれ?」となることが多々ありました。慣れの問題ではありますが、マクロ撮影には独特の操作感が必要です。
本機専用に設計された「ライカ アポ・ズミクロン F2/43mm ASPH.」は、高い描写性能を誇るレンズです。
Mマウントの「ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.」が130万円を超えることを考えると、アポレンズとフルサイズセンサーが一体となった「ライカQ3 43」の価格が税込みで110万円というのは、実は結構なバリュープライスなのかもしれません。
■光学性能×高解像度センサーが生み出す、極上のRAWクオリティ
高い光学性能と、43mmという汎用性の高い画角により、スタジオ撮影からスナップ撮影まで幅広いシーンで活躍します。
▲ こんな感じで撮影してます
▲ シャッタースピード1/125秒、F5.6、ISO100、LEICAQ3 43、Capture Oneで現像
ライティングを施してスタジオで撮影した写真は、発色や色再現性が良く、RAWデータの素の良さを実感しました。
絞り開放からシャープな描写を見せますが、少し絞るとさらに繊細なディテールを描き出してくれます。
▲ シャッタースピード1/400秒、F4、ISO100、LEICAQ3 43、Capture Oneで現像
もちろん、屋外スナップとも相性は抜群です。自然な視野に近い43mmの画角と滑らかで自然なボケ味が、主題を印象的に浮かび上がらせてくれます。
シャドウからハイライトまで豊かな階調性により、朝の爽やかな空気感までも映し出しているようです。
■レンズ一体型の「ライカQ3 43」は“ファーストライカ”にうってつけ
「ライカQ3 43」は、100万円という価格を聞くと一瞬ひるむかもしれませんが、意外にもバリュープライスに感じました。基本的なスペックはもちろん素晴らしく、高性能なレンズや6000万画素の高解像度センサーが驚くほど美しい描写を生み出します。
しかし、このカメラの本当の魅力は、スペックだけでは語りきれない部分にあります。手に持ったときの重厚感や、操作するたびに感じる精密な作り、ファインダー越しに世界がより鮮やかに映る感覚。写真を撮るたびに「ああ、これがライカか」と実感させる特別な体験が待っています。ファーストライカとして、これ一台で完結するレンズ一体型の「ライカQ3 43」はベストチョイスかもしれません。
>> ライカカメラ
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<取材・文/田中利幸 モデル/久木田帆乃香(@honoka_kukita) 取材協力/ライカカメラ>
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