内装もキレイに仕上げるのがカーモデラーの心意気!(ほぼ見えなくなるけど)【達人のプラモ術<ポルシェ911 GT3 RS(992)>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
「1/24 ポルシェ911 GT3 RS(992)」
04/06

第4回となる今回はインテリを製作していきます。インストの工程では⑩からのスタートです。(全6回の4回目/1回目2回目3回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

■そそられるフルバケットシート

GT3 RSのスペックを考えると、当然ながらスパルタンな印象のコクピットでありまして、特にCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)製のフルバケットシートが目に留まります。

ポルシェジャパンのサイトから同車のインテリアの仕様解説をみると「ブラックのレザー/Race-Texのインテリア、ブラックのデコレーティブステッチと「GT3 RS」のレタリング刺繍、カーボン織目仕上げ (サテン) のインレイを備えた装飾トリムが、標準仕様ながら他にはないエクスクルーシブな特徴を際立たせています」とのこと…。なんか凄いですな。

キットはこのフルバケットシートを3パーツで巧みに再現しており、ヘッドレストの刺繍や特徴的なシート中央部のパーフォレーション加工部分は、デカールで再現できるようになっています。

シートは塗り分けのためのマスキングをする手間がなく、シートを組んで指定色のセミグロスブラックで塗塗、デカールを貼ればリアルに仕上がります。よりこだわるのであれば、ヘッドレストまわリのカーボンの質感やレザー部分の赤いストレッチを再現するのも良いと思います。

もし自身がオ―ナーだったら(買えんけど)、音楽より4.0リッター高回転自然吸気エンジンのサウンドを楽しみたいですけどね。

▲キットはGT3のCFRP製フルバケットシートを3パーツで再現

▲パーフォレーション加工(素材の表面に小さな穴を規則的に開けることで、通気性や吸音性、滑り止めなどの機能をもたせたもの)を施したシート中央部分はデカールで再現される

▲シートはブラックレザーとのことなので、モデリングワックスで磨いて革のツヤを再現

 

■カラーオプションがあるロールケージ

実車ではクラブスポーツパッケージのオプションとなっているスチール製ロールケージをキットは再現しています。作例はセミグロスブラックで塗装していますが、黒の他に1974年モデルからあるポルシェを代表する赤、“ガーズレッド(Guards Red)”も選べるそうです。

▲いかにも剛性の高そうなスチール製ロールケージは3パーツで再現

 

■ダッシュボードの製作

ステアリングはパドルシフトを含めて3パーツで再現。サスペンションやトラクションコントロールを設定する4モードスイッチも正確に再現されています。

実車ではステアリングの12時部分にイエローでニュートラルマーカー(黄色い線)が入っているので再現したいところです。

ダッシュボードは2パーツで構成。カーボンパネルと下部分がサテンフィニッシュの質感の違いを塗り分けて再現します。ダッシュボード中央のアナログレブカウンターと5つのディスプレイメーターとスピーカーがデカールで再現されています。

▲組み立てと塗装、メーター類のデカール貼りが完了したダッシュボード。上面中央のメーターはアナログストップウオッチ

 

■ドア内側パネルの製作

キットのドアパネルは3パーツで構成されており、デカールと組み合わせることで、マスキングによる塗装の手間がかからず、サクサクと組み上げられます。

デカールを乾燥させたのち、デカールの保護とパネルとのツヤを合わせるため、つや消し黒で塗装した部分をマスキングしたのち、セミグロスクリアーで全体を塗装します。

▲塗装しデカールを貼った後、インテリア全体のトーンを整えるためセミグロスブラックでオーバーコート塗装(つや消し黒となる部分はマスキング)をして全体のトーンを整えている

▲シートのパーフォレーションとデザインを合わせた部分とスピーカーはデカールで再現されている。赤い部分(パーツA1)はドアオープナーのループ

 

■インテリアの完成

組み上げたコクピットフロア、シートとダッシュボード、センターコンソールやドア内側パネルを組み合わせてインテリアを組み上げていきます。コクピット自体は、カーモデルではよく見られる各パーツを箱型に組んでいく構成ですが、各パーツの嵌合性も良く、ダッシュボードもピタリと角度と位置が決まるのがタミヤスタンダードといったところです。

ちなみにGT3 RSは、8個のスピーカーが標準装備されていて、キットはデカールで再現されていますが、オプションの“BOSEサラウンド サウンドシステム”だと12個のスピーカーとなり、100Wのサブウーファーも組み合わされて合計570Wの出力で音楽を楽しめるそうです。

▲フロアにシートを取り付けた状態。ナビシートの足元に装備されている消火器がワンポイント

▲シートを取り付けた後、ダッシュボードとドア内側パネルを取り付ければインテリアの完成だ

 

■コクピットフロアの完成

コクピットフロアが完成しました。本キットはパーツ分割が巧みで、組み立てやすさを優先しながらGT3の特徴的なインテリアを上手く再現しており、カーモデルビギナーでもストレスなく組み上げることができるでしょう。

コクピットフロアのディテールは、ボディに収めてしまうと半ば見えなくなってしまうのが辛いところですが、キットはクリアパーツの透明度が高く歪みもないので、完成後に内部が良く見えるし、インテリアはカーモデルの見せ場のひとつでもあるので、しっかと仕上げたいところです。

完成したコクピットフロアを前回組み上げたアンダーパネルに取り付けて、GT3内装の完成です。

▲完成したインテリア。アクセルペダルやブレーキペダルはデカールでディテールが再現されているが、フロアを組み上げてしまうとほぼ見なくなってしまう(カーモデルあるある)

▲前後足回りを組んで完成させたアンダーパネルにコクピットフロア取り付ける

▲GT3内装の完成

 

■カーボン素材を再現したデカールを貼る

GT3 RSは軽量化のためにボンネットとルーフ、リアウイングに炭素繊維強化プラスチック (CFRP)素材が使われており、キットはデカールで再現されています。タミヤフェアで展示されていた実車のCFRPはかなりパターンが細かい感じでした。

あくまでも個人的な見解ですが、キット付属のデカールは、ややパターンが粗く感じたので、作例にはタミヤが発売しているカーボンスライドマーク(平織り・極細)を使用しました。どちらが良い悪いではなくカーボンの質感再現は好みになると思います。

タミヤ製カーボンスライドマーク(平織り・極細)はキットのボンネットとルーフのデカールにトレースしてカットしたものを使用しています。

▲GT3 RS実車ボンネットのCFRPはかなり目が細かいものが使われているのが分かる

▲タミヤフェアの会場で展示されていた完成モデルを見ると、CFRPの質感をより再現したデカールとなっているのが分かる

▲キット付属のデカールと別売されているカーボンスライドマーク(平織り・極細)の比較。目の細かさの違いが分かる

▲タミヤ「カーボンスライドマーク(平織り・極細)」(660円)カーボンの質感を表現できる汎用性の高いスライドマーク(カルトグラフ製)。パターンがチェッカーフラッグのような格子柄に見える平織りを再現しており、塗料の厚みにより黒とグレイの色調が立体的に見える。台紙サイズは130×190mm

▲キットのデカールをトレースして同サイズにカットしたカーボンスライドマーク

▲ルーフは面積が大きいのでゴミや気泡が入らないように注意。台紙をスライドさせて引き抜くようにスライドマークをボディ側に移すことで、気泡が入りにくくなる

▲ルーフは曲面なので、しわができやすい。貼り込んだカーボンスライドマークを内側から外側に伸ばすように綿棒など使って慎重に馴染ませていく。スライドマーク自体に柔軟性があるのでマークフィッターなどの柔軟剤を使用しなくても密着させられる

▲ボンネットに使用したカーボンスライドマークはやや大き目にカットしていたので、はみ出た部分はデカールがある程度乾いて、まだ柔軟性がある状態でデザインナイフでカットして仕上げる

▲ポルシェのエンブレムを忘れずにカーボンスライドマーク上に貼る

 

■デカールの乾燥には時間が必要

さてポルシェ911 GT3 RSの特徴でもあるカーボンスライドマークCFRPも貼り終えました。いやー良い感じです。

作業的にはこのあと、クリアーでオーバーコート塗装となるのですが、ルーフとボンネットに貼ったカーボンスライドマークは大判ということもあり、水分が完全に抜けるまでに最低でも2日程度は必要です。水分を残したままのクリアーコートはトラブルの原因になるので、ここは焦らずしっかりと乾燥させる必要があります。模型用の乾燥ブース使えば乾燥時間の短縮が可能です。

さて今回はここまで、次回はクリアー塗装と砥ぎ出し、ボディの外装パーツ等を取り付けていきます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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