【達人のプラモ術】
BANDAI SPIRITS
「ゴジラ(2024) from「ゴジラxコング 新たなる帝国」」
02/04
映画『ゴジラ(2024)From「ゴジラ×コング新たなる帝国」』モンスター・ヴァース版ゴジラの製作第2回です。今回は塗装ではなく素材の質感を活かしつつ、前回完成させたゴジラの骨格、そして完成させた外皮を生物的なリアルに質感に仕上げていきます。(全4回の2回目/1回目)
(C)2024 Legendary. All Rights Reserved. GODZILLA TM & TOHO CO., LTD. MONSTERVERSE TM & Legendary
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■Mr.ウエザリングカラーを使用して骨格を仕上げる
前回にも書きましたが、キットの素材はかなりABSが使われており、パーツに柔軟性を持たせることで、接着剤を使用しないでも組み上げられるスナップキットとなっています。骨格、外皮それぞれも色プラで成形されているので、基本、塗装をしなくてもリアルなモンスター・ヴァース版の迫力あるゴジラを完成させられます。
もちろん、こだわりまくってガチ塗装するのもアリですが、今回はインストに記載されている「造形を活かした塗装にチャレンジしてみよう」を実践。骨格、外皮ともに成型色を活かしつつ、Mr、ウエザリングカラーを使ってのウォッシング(※)でリアルな仕上げを目指します。
▲Mr.ウエザリングカラーを使って素材色を活かしつつ骨格モデルをリアルに塗装する
▲インストに解説されているMr.ウエザリングカラーを使ったウォッシング塗装
※ウォッシング
ウォッシングとはその名の通り、薄い茶色やグレー系色といった専用塗料を使い、組み上げたキットの全体を洗うようなイメージで塗料をオーバーペイン。さらに拭き取ることでディテールの陰影を強調すると同時に、使い込まれたウエザリングを表現する塗装テクニックを言います。
■骨の色に悩む
まずは前回組み上げた骨格にウォッシングを施していくのですが、ここで悩んだのが「どんな色を使えばいいんだ?」です。
キットの骨格は淡いややベージュがかったホワイトで成形されています。骨格は化石ではないので、暗いダークブラウン系ではないよなぁ…、いわば生体骨格標本みたいなモンか。ということで、インストのウォッシングで指定されているMr.ウエザリングカラーの「グレイッシュブラウン」を使ってみました。
本来はAFVモデルのウエザリングの際に、湿り気のある土や泥を表現するために使用する色で、ミルクティー色の明るいブラウンといった色味を表現できます。これが骨格のベージュがかったホワイトに実に良く合います。
▲塗装をしていない素材色のままの骨格。これはこれで良いのだが、もう一味ディテールを際立てて、リアル<な骨格標本としたい
■組み上げた骨格はバラしてウォッシング
ウォッシングに際しては、頭や腕、足、背びれといった具合にパーツを取り外した方が塗装しやすくなります。分割が工夫されているのでパーティングラインもほとんど気になりません。
▲前回組み上げた頭部をいったん外して(スナップキットなので接着剤は使用していない)、Mr.ウェザリングカラーのグレイッシュブラウンを使ってウォッシング塗装を施していく
▲ウエザリングカラーは半乾燥状態で表面を拭き取り、凹部分を影色として残すように仕上げていく
▲首と手足、背びれを外した胴体、尻尾をウォッシング。背骨の凹部分にはグレイッシュブラウンにグランドブラウンを加えて調色した暗めの色を落とし込んでいる
▲塗装が完了した胴体と尻尾に頭を取り付けた状態
▲太く強靭なイメージのある脚を塗装。右が素材色の状態、左がウォッシングを施した状態。立体感が強調されているのがよくわかる
▲5分程度常温で乾燥させたあと、ウエスで表面のMr.ウェザリングカラー拭き取っていく
▲先に仕上げた胴体と脚を組み合わせて、ウォッシングの色調が合わっているかを確認。バランスが悪ければ追加で塗装を施していく
▲胴体と脚を組み上げた状態。この時点でも無塗装の素組みから大きく存在感がアップしているが分かる
▲同様に仕上げた両腕。モンスター・ヴァース版のゴジラは腕が太く大きくたくましいのが特徴
▲背びれはバラバラしてしまうと、再組み立てが大変なのでブロックごとに取りはずしての塗装をオススメする
▲ウォッシング塗装が完了した背びれ
■コツはやや薄めに塗布すること
Mr.ウェザリングカラーは、かなりシャバシャバな塗料です。使用に際しては攪拌が必要で、塗料ビンの中には攪拌のための小さな金属ボールも入っておりガッツリと攪拌するとかなり濃い色になります。なので使用に際しては軽く攪拌する程度に抑え、上澄みを使用することで今回の骨格のような明るい成型色では良い感じなります。
塗布したあと、綿棒などでウェザリングカラーを吹き取りながら仕上がりの色調を調整できるので、濃い状態で使用しても問題はありません。またMr.ウェザリングカラーには筆が付属していないので、自前の筆を用意する必要があります。筆の毛先は柔らかいものが適しており、塗装に際しては細目の平筆と面相筆の2本を使用しています。
塗装に際しては、骨格のつなぎ目等にグレイッシュブラウンを落とし込む感じで、骨の表面はサラッと薄めに塗布して後から拭き取ることで、仕上がりがくどくならないようにしています。
■全体に塗布後綿棒で拭き取る
Mr.ウェザリングカラーをパーツ全体に筆で塗布。半渇きの状態(5〜10分度乾燥)でパーツ表面の凸部分などのウェザリングカラーを綿棒やクロスで拭き取ることで、ディテールの陰影が強調され、立体感のある仕上がりを得られます。
完全に乾いてしまった後でも、専用の薄め液を綿棒に含ませて使えば拭き取ることもできます。
Mr.ウェザリングカラーは乾燥後は艶消しの仕上がりとなってくれるので、いや〜かなり良い感じになりました。博物館などで展示されいる骨格標本的なイメージです。
▲ウォッシング塗装が完了した骨格モデル。動きのあるポーズと相まってリアルな骨格のディテールが強調され独特な存在が溢れてくる
▲大きく張り出した背びれと長くうねる尻尾のディテールが秀逸
■Mr.ウェザリングカラー
塗装したプラモデルに汚れを追加して、よりリアリティのある風合いにするための油彩をベースにした塗料。スミ入れやウォッシングなどで使用できます。
単色だけではなく、他のMr.ウエザリングカラー塗料と混色して使用することもできます。塗装していないスチロール樹脂などへ直接使用しても、エナメル塗料ベースのスミ入れ塗料と比較してスチロール樹脂を劣化(ひび割れなど)させにくく、希釈する場合は専用の薄め液を使用します。
発売:ミスターホビー
全12色
価格:各528円
▼今回使用したMr.ウェザリングカラー
▲「WC07 グレイッシュブラウン」湿り気のある土や泥を表現したミルクティー色のブラウン。骨格全体のウォッシング塗装に使用
▲「WC02 グランドブラウン」土汚れ、焦茶色のサビをイメージした濃茶色。骨付つなぎ目など暗い影となる部分にグレイッシュブラウンに混ぜて使用
▲「WC01 マルチブラック」影やススをイメージした汎用性の高い黒。外皮の塗装で手足の爪や外皮の重なった部分等の影色として使用
▲「Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液(大/250ml)」(1210円)
■外皮の製作
キットは、骨格に外皮を被せられるのがセールスポイントになっています。着ぐるみではなくマッシブなゴジラの存在感と内部の骨格といった印象があり、外皮は骨格と並べて楽しむこともできます。
『ゴジラ×コング新たなる帝国』のゴジラはCGで製作されていますが、ゴジラのデザインを手がけた西川伸司氏は「直立歩行するモンスター・ヴァースの骨格は、極論すれば着ぐるみの中の人間と同じようなものになるはずで、それはメタ的な視点であると同時に外せない本質であります」とインスト内でも語っていますが、それでいて圧倒的な存在感と迫力あるポーズをキットの外観パーツは見事に再現しています。
外観パーツは、骨格モデルを収めることを考慮しつつ、パーツの合わせ目が極力目立たないように工夫されているため、分割が特徴的で、プラモデルの組み立てというよりもパズルの印象があります。それでも生物的な質感はさすがバンダイと言った感じです。
■外観を組み立てる
外観はまず、骨格を収めないで状態で組んでいきます。パーツの精度が高く、組み合わせもピタリと決まりますが、ゲートの跡が残っていたりすると隙間が生じてしまうので、切り出しの際にはゲートの処理を丁重に行います。製作は腕→胴体(背びれ含む)→脚→頭部の順番で進めます。
黒に近いグレーで成形された外皮パーツの切り出しから外皮の完成までは約1時間(塗装はしていない)といったところでしょうか。骨格同様にサクサクと組み立てられます。
面白いのは頭部のみ頭蓋骨?を入れて製作するようになっている点で、これは咆哮するゴジラの口内も再現しているためです。口内は色プラで舌も再現されています。
▲外皮は腕から組み立てをスタート
▲パーツを切り出した際のゲート処理は丁重に行いたい
▲背びれは一体成型の左右合わせとなっている
▲3つのブロックで組み上げた背びれを背中にハメ込んでいく
▲背びれを組み付けた背中側と腕を組みつけた胴体前半分を組み合わせていく
▲まるでパズルのようだ
▲尻尾は内部に骨格が入るため複雑なパーツ構成となっており、9パーツを組み合わせていく
▲胴体と組み上げた尻尾を合体した状態。尻尾の巨大さがよく分かる
▲両足を組み上げて胴体と組み合わせる
▲口腔内は3パーツで構成。舌パーツも微妙にトーンの違う赤で成型されており、塗装しなくてもリアルだ
▲頭部は4パーツで構成
▲頭蓋骨に外皮パーツ4点を組み合わせて頭部が完成する
▲完成した頭部。目は塗装したいところ
▲首に頭部を取り付ければ外皮が完成となる
▲完成したゴジラの外皮
▲咆哮ポーズは迫力満点。黒に近いグレー一色の体の中にあって口腔内の赤が良いアクセントとなっている
■外皮もMr.ウェザリングカラーでウォッシングして質感を表現
完成したゴジラの外皮ですが、重量感ありありの皮膚の質感とか非常に良い感じです。ただそのままではやはりプラスチックな光沢なので、骨格同様にMr.ウェザリングカラーでウォッシングして質感を整えます。
▲無塗装でも良い感じなのだが、質感がプラスチックなのが辛いところ。全面塗装ではなくウォッシングを施すことで、皮膚の質感もキング・オブ・モンスター ゴジラらしい雰囲気が強調される
▲骨格モデルとは異なり、外皮は組んだ状態でウォッシングを入れていく。使用したのは骨格モデルと同じグレイッシュブラウン。手足の爪と背びれはグランドブラウンを塗装している。また背びれの付け根や皮膚の重なっている部分は影色としてマルチブラックを薄く使用した
▲頭部も繊細なディテールを活かすようにグレイッシュブラウンを塗装。綿棒で凸麺を拭きとり、質感に変化をつけている
■モンスター・ヴァース版ゴジラの外皮が完成!
キットの外皮ディテールがしっかりしていることもあり、ウォッシングを施したことでグッとモンスター・ヴァース版ゴジラの筋肉の塊みたいなマッシブなフォルムが強調されたと思います。グレイッシュブラウンと外皮の黒に近いグレーとのバランスもいい感じです。
というわけで今回はここまで、次回は外皮内部に骨を収めてみます。またせっかくのゴジラですからディスプレにもこだわってみたいと思います。お楽しみに!
▲骨格モデルとのツーショット。迫力のある咆哮するゴジラが見事に再現されている
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
【関連記事】
◆『紅の豚』“アジトのポルコ”のヴィネットを筆塗りで製作!【達人のプラモ術<アジトのポルコ>】
◆夏といったら恐竜でしょ!恐竜骨格模型をジオラマで製作!【達人のプラモ術<恐竜骨格模型>】
◆科学×プラモ=男のロマン!? バンダイ「1/48 しんかい6500」をジオラマ化!【達人のプラモ術<しんかい6500>】
- Original:https://www.goodspress.jp/howto/655080/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...