2024年秋には、闇バイト系の強盗事件に関する報道がスポットライトを浴び、改めて防犯意識を高めるきっかけとなりました。一方で、どんな対策を施せば、犯罪の被害にあうリスクを低減できるのかは把握しづらい部分です。新生活シーズンに新居へ移る予定の人にとっても、漠然とした不安が付きまとっているかもしれません。
そこで本稿では、「集合住宅」における防犯のポイントを押さえつつ、それぞれ個人の視点で取り入れやすいアイテムをチェックしていきます。
なお、防犯知識のポイントについては、一戸建てについて扱った前編の記事と同様に、旭化成ホームズのLONGLIFE総合研究所で防犯対策の研究をしている山田恭司さんに教えてもらいました。
▲旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所 主任研究員 山田恭司さん。一級建築士、防犯設備士
■集合住宅で特に意識したいのは「侵入窃盗」と「車両関連の盗難」
まずは集合住宅における犯罪の傾向を確認しておきましょう。大前提として、「一戸建て編」でも解説したとおり、“自家の防犯対策”を考えるうえで意識しておきたい犯罪としては、（1）窃盗のプロが合理的に動く「従来型の侵入窃盗」と、（2）いわゆる闇バイト系の犯罪として指示に従って実行犯が動く「匿名流動型の犯罪」の2種類があるということです。
ただし、昨年秋の闇バイト事件で集合住宅被害は報道されていないようなので、（1）従来型の侵入窃盗についてきちんと対策し、今後、犯罪傾向が変わった時のために、強盗に対する対策も考えましょう。
「傾向としては、2024年に話題になった匿名流動型の犯罪については、現在のところ集合住宅が被害にあった事例は見当たりませんでした。侵入窃盗の件数も、一軒家に比べれば少なくなりますが、油断はできません。一方で、実は駐車場をターゲットにした自転車盗難や、自動車の窃盗は、実は集合住宅での発生件数が多くなっています」（山田さん）
■対策すべきポイントは「玄関」と「窓」
続いて、集合住宅における侵入窃盗に関して、具体的に対策しておきたいポイントをチェックしましょう。山田さんによると、集合住宅で気を付けるべきは（1）玄関と（2）窓の2点がメインになるとのこと。
▲侵入経路は「玄関」と「窓」の2つ（図は筆者作成）
特に、集合住宅への侵入の多くは“玄関から”と報告されています。オートロックがあるとしても、居住者とともに侵入する「共連れ」という手法があるので、短時間の外出でも施錠の意識づけなどが大切です。
「特に数が多いのは、玄関の戸締りを忘れて侵入される“無施錠”によるもの。その次が、“合鍵”を作られてしまって玄関を開けて入ってこられてしまうというケースです。この2つに気を付けるだけでも、6割強の侵入犯罪を防止できるため、 防犯効果を期待できるでしょう。特に鍵については、鍵の表面に記された番号を知られてしまうと、合鍵を作成できてしまうと知っておくことが重要です。他人に見せない、あるいは写真にも撮られないようにシールを貼っておく、などの対策をしておくとよいでしょう」（山田さん）
ちなみに、玄関からの“押し入り”を行う強盗の被害も考えられるので、来客に対しては必ずインターフォンを使って非接触で応答することも重要とのこと。
また、窓からの侵入は、1階の部屋では特にリスクが高いものの、部屋によってはその他の階層でも油断できないといいます。
「もちろん、窓から侵入されることもあります。ターゲットになりやすい1階の部屋や、例えば雨どいなどの足場になる構造物が近くにある部屋などは注意が必要です。また、稀ではあるでしょうが、屋上などからロープを垂らして侵入という犯行もあるにはあるので、上層階でも油断はできません」
ただし、集合住宅の場合は、居住者が取れる対策が限られています。賃貸だと勝手に手を加えられないので、大家さんに相談するしかありません。現状復帰のコストも出てきます。購入したマンションも、通常は窓と玄関の周りは共用部とされるので同様です。管理側の許可がないと手を加えられません。そのため、条件を考えたうえで、効果的と思われる対策をとっていくしかないでしょう。
「まずは戸締りをしっかりする。インターフォンで非接触で応対する。女性なら単身女性が住んでいると気づかれないように洗濯物の干し方を工夫する。数週間家を空ける場合には、窓にシャッターがある場合には閉めておく——など、基本的な防犯対策を取っておくことが重要だと思います。そのうえで、補助錠やセンサーなどのアイテムを併用すると良いでしょう。例えば、開閉を知らせるセンサーの設置や防犯ブザーの所持などが考えられます」（山田さん）
【集合住宅で考えられる防犯対策の例】
・合鍵を作られないように鍵の番号を他人に見せない、シール等で隠しておく
・来客に対して戸を開けず、必ずインターフォン越しで応対する（宅配も同じ）
・居住者や生活サイクルを知られないよう洗濯物の干し方に気を付ける
・数日家を空ける際にはシャッターを閉める
・窓に補助錠（ネジ式ではないもの）を付けておく
・玄関を二重ロックにする
・窓の開閉を知らせるセンサーの設置や防犯ブザーの所持
など
■具体的なアイテム例をチェック
それでは、具体的に集合住宅の防犯対策で使えそうなアイテムの例をチェックしていきましょう。（※アイテムの選定は筆者によるものです）
1. 窓に設置する補助錠
窓に補助錠をつけることで、侵入にかかる時間が長くなるため、侵入されるリスクを少し下げられる可能性があります。こちらは一軒家編でも紹介した通り、ネジ留め式の補助錠は力づくで開いてしまうことがあるので、突起が出て引っ掛けるタイプの方がベターです。
▲画像はプラセスの「LEGLOCK(レグロック)」（画像出典：プラセス プレスリリース）
>> 手軽に設置、効果は強力！両面テープで付けられる二重ロック「LEGLOCK」で防犯対策
2. 玄関を二重ロックにするアイテム
玄関に後付けできる補助錠があると、玄関からの侵入リスクを低減できます。特に在宅時の侵入を予防する意味では、ドアの内側に設置するタイプの補助錠を検討してみましょう。
また、スマートロックの類を設置すれば、玄関をオートロック化して、鍵のかけ忘れを防止する効果もあるかもしれません。ただし、製品と鍵の形状がマッチしないと設置できないことも多いので、その点は要確認です。
▲画像はサムターンに設置するスマートロック「SADIOT LOCK」。2022年に後継機の「SADIOT LOCK2」が発売されているので、検討時にはそちらをチェック
>> サムターンに後付けでオートロック化！オプションでスマートキーにもできるぞ！
3. 窓などに設置する防犯アラーム
窓やドアの開閉や衝撃を感知してアラームを鳴らすデバイスがあることで、狙われにくくなるとともに、万が一の侵入窃盗を犯行時に撃退できる可能性も。防犯視点では、センサーで開閉を知らせるだけの製品ではなく、音がなるグッズも要チェックです。
▲例として「〈アイシン〉大音量130dB 窓＆ドア用防犯アラーム」（画像出典：東栄 プレスリリース）。電源をオンにした状態で、窓などの設置箇所に開閉や振動があると、130dBの大音量でアラームが鳴る
4. 鍵の複製を予防するシール
玄関の鍵に書いてある番号を盗み見られないように、それを覆うためのシールが販売されています。合鍵を作成されないための予防に。
▲サンワサプライ「鍵のナンバーキーパーセキュリティシール（1シート・5枚入り）『SL-5H-5』」。メーカー名と鍵番号を隠せる
＊ ＊ ＊
「防犯意識」とひと言で表現するのは簡単ですが、具体的には、前後編で解説したような前提知識を踏まえたうえで、基本的な防犯対策を行なっていくことが大切になるでしょう。一戸建て・集合住宅ともに、自身のコントロールできる範囲で、可能な対策を心がけてみてはいかがでしょうか。
＜取材・文／井上 晃＞
井上 晃｜スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。X
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/657097/
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