バイクに乗る人なら「もっと上手く操れるようになりたい」と誰もが思うはず。筆者もバイクに乗り始めて30年以上になりますが、今でも「もっと上手くなりたい」と思い続けています。走る・曲がる・止まるといった基本的な技術はもちろんなのですが、できなかった新しい“技”ができるようになると、その達成感はまたひとしおのものがあります。
そんな“技”の代表例がウイリーではないでしょうか。フロントタイヤを浮かして走る姿に憧れたことがある人は少なくないはず。ただ、なかなか教わることのない技術ですし、練習する場所もないので、ウイリーの練習ができる「ウイリーキャンプ」に参加してきました。
■ウイリーはリアブレーキの操作が7割?
「ウイリーキャンプ」とは、レーサーでジャーナリストでもある丸山浩さんが会長を務めるWITH MEが開催するウイリーの練習会。丸山さんは、日本で初めてウイリーなどのスタントライディングの教則ビデオを出した人でもあり、ウイリーを練習する場所がないことから、この練習会を始めたとのことで、もう20年近くになるのだとか。千葉県にある袖ケ浦フォレストレースウェイというサーキットのスペースを利用して開催されています。
ただ練習するだけでなく、講師陣がウイリーのコツについてレクチャーしてくれます。講師をしてくれるのはスタントチーム「darlkest code(ダーケスト コード)」の青木寿満さんと五十嵐大祐さん、それとプロデューサーの山口銀次郎さんです。
まずは座学でウイリーの操作と注意点について学びます。操作の流れとしては、
①リアブレーキで前後のサスを縮ませると同時にクラッチを切る
②アクセルを開けて
③クラッチをスパッとつなぐ
④上がりすぎたらリアブレーキを踏んで落とす
という感じ。フロントブレーキやボディアクションを使う方法もありますが、操作をシンプルにするため、ここでは教えていないとか。実際にやってみると、これだけシンプルでもなかなかスムーズに行えませんでした。
青木さんによると「ウイリーはリアブレーキの操作が7割」というくらいリアブレーキが重要なのだとか。フロントが上がり過ぎた際にリアブレーキが踏めないとひっくり返ってしまうため、確実に踏めるように上げる前に踏んでおくことが大事なようです。
また、クラッチは1本指で操作すると上げやすいとのことでした。
■練習すると少しずつできるようになる
実際の練習はパイロンで仕切られたスペースで順番に行います。サーキット内なので舗装状態も良くて練習しやすい。ちなみに、一般の道路は水はけを良くするためにカマボコ状になっているため、フロントを上げてからバランスを崩しやすいのだとか。公道で練習するのがご法度なのはそういう理由もあるようです。
集まっているバイクは排気量も車種もさまざま。オフロード車からスーパースポーツまで車種も多様ですが、みんなウイリーをしてみたいという気持ちは同じです。すでに何度も参加している人もいて、いきなりフロントを上げられる人もいますが、毎回半数以上は初めての参加者とのことで、前輪を上げるのに苦労している感じです。ちなみに年齢層的には同世代かなと思う人が結構いて親近感を覚えました。
ちなみに筆者は原付二種のホンダ「XR100モタード」で参加。車体は軽くていいのですが、パワーはあまりありません。
同じく原付二種での参加者も結構いましたが、中には軽々とフロントを上げながら走っている人もいてうらやましい。
リアブレーキを踏んでクラッチを切って、アクセルを開けてクラッチを放す。文字にすると簡単なのですが、実際に走りながら行うとアクセルとクラッチ操作のタイミングが合わなかったりして、なかなか上がりません。ニーグリップがおろそかになると、フラついてしまうので、その辺も意識する必要があります。最初のうちはフロントが浮いたかな? という程度でした。
でも、丸山さんいわく、この「一瞬のうちに色々な操作を同時に行いながら、車体のバランスを取る」というのがバイクを操る上では重要なのだとか。ウイリーができても何かの役に立つわけではありませんが、こういう操作を繰り返すことはバイクを操る技術の向上には効果的なようです。
走行ごとに講師陣から「今のは良かった」とか「ヒザが開いていた」とかアドバイスをもらえるので、何を意識すればいいのかが明確になって効率的に練習できます。周りを見ても、どんどんフロントを上げられる人が増えていく感じ。休憩時間には、車種に合わせて気をつけるべきところなどもアドバイスしてもらえます。
ちなみに「XR100モタード」はパワーが少ないので高さを出そうとすると結構エンジンを回す必要があるとのことで、まずは高さよりも滞空時間を長くする方を優先したほうがいいかもしれないとアドバイスされました。
アドバイスをもとに練習していると、毎回確実にフロントが上げられるようになってきました。滞空時間も少しずつ長くなってきたかな? 高さが低いので、ウイリーならではのハンドルの横から前を見るような景色は見られませんが、リアタイヤだけで走る気持ち良さはちょっと味わえたような気がします。
ただ、少しずつできるようになってきたタイミングで雨が降り出してしまいました…。とりあえず雨宿りをしながら、講師陣のアドバイスに耳を傾けます。幸いなことに割とすぐに止んだのですが、路面は完全にウェットに…。滑りやすいのでパワーがあるバイクなどではリスクが高くなってしまいますが、それでも皆さん練習を続けています。やる気がすごい。
雨による中断もあったので、練習時間はだいたい2時間ちょっとくらいでしたが、ウイリーの基本操作はだいぶできるようになってきた気がします。最後には「ウイリー検定」も行われます。といっても、ウイリーができているかの検定ではなく、今日1日でどれだけ成長したかを見るとのこと。そして一番成長が大きかった人が「ウイリーキング」となります。
もちろん路面はウェットのままですが、皆さん思い切りよくチャレンジしています。本番に弱い筆者は、ちょっと浮いたかな? という程度でしたが…。この日のキングに選ばれたのは「KLX125」に乗る方でした。最後の最後にこの日一番の高さを出す勝負強さがスゴイ。
個人的にはウイリーができるようになったとはとても言えない状態ではありますが、フロントを浮かせて走る気持ち良さは少しだけ味わえました。せっかく少しコツが掴めてきたので、次回も参加したいと思い始めています。なにしろ練習する場所がほかにありませんから。どうせバイクに乗っているなら、ウイリーができないままより、できるようになったほうがバイク人生が楽しくなるような気がするので。
>> ウイリーキャンプ
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/671754/
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