「ランクル40」のダブルキャブ!? 謎だらけの激レア車、一体どこから日本へ?

【オートモビルカウンシルで見つけた変わったクルマ】

“Classic Meets Modern and Future”をテーマに、ヘリテージカーだけでなく最新モデルも展示し、さらにアートや音楽、美食など、クルマという枠を超えた“カルチャー”の提案を行うことで、クルマがある豊かな暮らしを紹介している「オートモビルカウンシル」。出展されるヘリテージカーの多くは、見るだけでなく実際に購入できることも、このショーの特徴です。

2025年も4月11~13日に幕張メッセにて開催。フェラーリやポルシェ、メルセデス・ベンツなどの希少なヘリテージモデルが多数並び、カーデザインの巨匠であるジョルジェット・ジウジアーロ氏が来日してトークショーを行うなど、多くの話題がありました。

しかしそれらの話題は他のWebサイトに任せて(笑)、&GPでは会場で見つけた変わったクルマやバイクを紹介。まずは日本に1台しかない(販売店調べ)というランドクルーザー40のピックアップ(ダブルキャブ)です。

 

■偶然見かけて、その場で交渉して売ってもらった

筆者と&GP編集部E氏が会場内を談笑しながら面白いクルマを探していた時、実はブースの前を一度通り過ぎました。でもふと足が止まり、元の道を引き返して「なんだ、これ」と驚いたのがこのランドクルーザーです。

ぱっと見た感じは、ただの古いクルマ。40系ランドクルーザーは今や希少ではありますが、存在に違和感を覚えるものではありません。

でもこの黒いランドクルーザーには何か違和感があります。よく見ると、バンではなくピックアップトラックなんですね。しかもリアシートが備わるダブルキャプ。輸出用としてランクル40のピックアップが製造されていたのは知っていましたが、確か2人乗りのシングルキャブだったはず…。

2人で難しい顔をしながらクルマを眺めていると、ショップの方が声をかけてくれました。この「謎のランクル」を展示していた株式会社ダブラスの名倉さんです。

▲株式会社ダブラスの名倉さん

「私の本業は貿易です。昨年6月に仕事でパキスタンの山岳地帯であるムザファラバードに行った時に、たまたま走っていたこのクルマを見て、おふたりと同じように驚きまして(笑)。その場でクルマを止めて、『これ、売ってくれ』と。私の相棒は身長が2mくらいあるスキンヘッドの男なので、クルマのオーナーを相当ビビらせてしまいました(笑)」

街を普通に走って、突然巨漢の外国人から「クルマを寄こせ」と言われたら、ビビらないはずがありません(笑)。でもこちらの素性を伝え、おもしろいクルマだと話したらすぐに打ち解け、商談も成立。食事をしながら、オーナーからいろいろな話を伺ったそうです。

「このクルマはもともと軍隊で使われていたそうで、その払い下げ品をオーナーが買ったそうです。FJ40のダブルキャブというのが謎なんですよ。日本だと自衛隊の備品は正規の入札を行って納入先を決めますが、パキスタンはかつて雑な部分もあったみたいです。その関係で正規の仕様とは違う形のものが納入されたのかもしれません」

実は我々がオートモビルカウンシル会場でこのクルマを目にした時、ランクル70に見えなくもないと感じました。名倉さんも同じように思い、パキスタンで車検証を確認したそう。そこには初年度登録が1970年と書かれていたので、ランクル70(1984年デビュー)ではないとのこと。

さらに後から車体を伸ばしたのかと思い、クルマの下に潜ってみたそうですが、フレームに溶接跡がない。つまり最初からこの状態で製造されたものであるということです。

「ムザファラバードに住むオーナーからクルマを買った後、首都であるイスラマバードまで走り、次に私の拠点があるラホールまでクルマを運びました。オーナーから買い取った時は内装がかなり傷んでいたので、革製品の街であるシアールコートにクルマを運んで内装を張り替えてもらおうと思ったんです。職人に相談したら『クルマ屋の知り合いもいるから一緒にやるよ』と言ってくれたのですが、使った革がクルマ用のものではなかったのでちょっと日焼けしてしまったんですよね」

そんなランクルFJ40ダブルキャブを名倉さんが購入したのが2024年6月。そこから内装の修理を終えて船に載せ、日本に到着したのが2024年末のこと。オートモビルカウンシルの開催までに4ヵ月ありましたが、残念ながらまだ登録できる状態にはなっていないそうです。

「何せ存在すら知らなかったダブルキャブ。どこの国向けに生産されたものかもわかりません。我々でホイールベースを測ってみましたが、40でこのホイールベースは存在しないんですよ。さて、どうやってナンバープレートを取得しようか。それを考えています。新規登録となると事前審査が必要になるので、その書類を作るために、今は世界中の文献を集めているところです」

名倉さんはこのクルマ以外にも本業で訪れた国で見つけた面白いクルマや珍しいクルマを日本に輸入しています。これまで、B110型ダットサン サニーやKE30型トヨタ カローラなどを輸入し、主にBtoBで販売してきました。

「貿易を生業としているので輸入と書類仕事は得意です。ただ、専業のクルマ屋ではないので、我々は車検が取れる手前まで整備してクルマ屋さんに渡しています。そして『欲しい』と言ってくださる個人の方には車検を取るところまで行ってクルマを渡します。そこから先はショップのお客さんたちの趣味嗜好もありますから、お店で自由にやっていただいたほうがいいと考えています」

難題を抱えたランクルFJ40ダブルキャブ。でもきっとなんとかしてくれるに違いない。名倉さんと話していて、そんな頼もしさを感じました。街で同じものと絶対にすれ違わない激レアなランクル。いかがですか?

>> オートモビルカウンシル

<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)

高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。

 

 

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