個別モーターで360度回転可能!? メルセデス・ベンツの新型GクラスEV「G580 with EQ Technology」の驚がく性能

メルセデス・ベンツGクラスにバッテリー駆動のEV版「G580 with EQ Technology」が登場。2023年10月に発売されたこのクルマを、高速道路やワインディングロードで乗る機会に恵まれました。びっくりの性能ぶりです。

■4輪個別モーターの駆動性は昔のGクラスと別物

Gクラスといえば、1979年に初代が市販されて以来、ラダーフレームを持つシャシーの基本設計はそのまま、現在にいたる長寿モデル。日本でも“ゲレンデバーゲン”とか“ゲレンデ”と呼ばれてきました。

そもそも、オーストリアのシュタイヤ=ダイムラー=プフが軍用・多目的車として開発した出自を持っていて、1980年代までは市販車とはいえ、一般道よりオフロードを得意としてきました。すべてが重く、エンジンも高回転型でなく低回転時のトルクで走らせるタイプ。

▲ICEではスペアタイヤだけれど充電用ケーブルなどが入れられる格納ケースを背負っている

私もグラーツにあるシュ社を訪問したことがあります。そこからシェックルという山の斜面の、道なき道を駆け上がるのがGクラスのためのテストコースと聞いていたとおり、「速めのペースで走ってみてください」と言われ、高い木の間を縫いつつ駆け上がりました。

Gクラスはいろいろな道で走ったことがありましたが、生まれ故郷のテストコースでの体験は格別…ではあったものの、木立を抜けると一般車が走っているワインディングロードに飛び出します。そこからまた木立の中へ。この繰り返しのため、事故を起こしたら大変と、精神的には疲れました。

なんてことを一瞬思い出しましたが、G580 with EQ Technology(G580)は昔のGクラスとは別もの。バッテリー駆動のモーターで駆動するという設計です。スムーズな加速性と、数々の電子技術を活用してのさらに高い走破性に、乗ると驚かされます。

一番驚かされるのは、4輪に個別のモーターが備わっていること。4つのモーターの駆動力を制御して、いままでエンジニアがやりたかったことを、見事に実現しているのです。

■その場で360度回転可能⁉

注目は「Gステアリング」と「Gターン」という機能。モーターの逆回転まで採り入れて、狭いオフロードに迷いこんだ場合でも小回りを効かせます。とくにGターンはその場所で360度回転ができるという機能です。一般道での使用は不可。それに、コンクリートやアスファルト路面上ではあっというまにタイヤが摩耗してしまうようです。

▲ICEモデルではデフロックスイッチが並ぶ位置に設けられた「Gターン」スイッチ(ローレンジスイッチの右)と「Gステアリング」スイッチ

本格的オフロード車にとって”マスト”である、はしご型のラダーフレームや、固定式リアサスペンションは、従来のICE(エンジン車)と同様。ラダーフレームの内側に入れた駆動用バッテリーは、オフロードでの破損や水の浸入を防ぐため強固に守られています。すごいのは、渡河能力がICEより上がっていることです。

▲荷室容量は620リッターが確保されている

今回はオンロードでのテストドライブでした。こちらも、昨今、洗練度が増しているICEのGクラス(G450dとメルセデスAMGのG63)に匹敵します。加速はどこまでもスムーズで、乗り心地も快適。カーブを曲がるときの動きも、重さなんてまったく感じさせず、軽めの乗用車みたいな身のこなしなのです。

▲エディション1は左ハンドル仕様のみの導入

▲G400dより20mm持ち上がりグラウンドクリアランスは250mm

今回乗ったのは、「G580 with EQ Technology Edition 1(エディションワン)」という限定車です。AMGラインパッケージ(フロントスポイラーやサイドスカートや本革張りシート)、専用20インチ径ロードホイール、ブルーブレーキキャリパーや、ダーク仕様の灯火類の「ナイトパッケージ」などを備えています。日本では当面、このエディション1のみの販売になるとのことです。

【Specifications】
Mercedes-Benz G580 with EQ Technology
全長×全幅×全高:4730×1965×1990mm
ホイールベース:2890mm
動力:電気モーター×4
駆動:全輪駆動
駆動用バッテリー容量:116kWh
最高出力:432kW
最大トルク:1164Nm
一充電走行距離:530km(WLTC)
乗車定員:5名
価格:2635万円

>> メルセデス・ベンツ日本

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

【関連記事】
◆久しぶりの日本登場!新設計の6代目三菱「トライトン」はオフロードだけでなく通勤でも使える快適性を目指して開発された
◆「ランクル40」のダブルキャブ!? 謎だらけの激レア車、一体どこから日本へ?
◆ドイツで行われた「IAA」は電気自動車のオンパレード! 注目したいVW、BMW、ミニ、メルセデス、ルノーのこれから


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA