11年間待ってたぞ! ダイハツ7代目「ムーヴ」誕生で気づいた「ムーヴ」についての3つの「なぜ?」

キャッチコピーは「もう一度、心が動き出す。MOVE ON.」。2014年登場の6代目から実に11年。ブランド史上初となるスライドドアの採用など令和仕様にブラッシュアップされた7代目「ムーヴ」誕生で改めて気づいた、ムーヴについての3つの「なぜ」を解き明かそう。

「「ムーヴ」は1995年の初代発売以来30年にわたってダイハツを代表する基幹車種としてお客様に愛されてきました。スタンダードとカスタムの「ツーフェイス」の先駆けでもあり、スズキさんのワゴンRと共に軽ハイトワゴン市場をけん引してまいりました」。

そう話すのは今回の7代目「ムーヴ」でチーフエンジニア(以下C.E.)の重責を担う戸倉宏征さん。すこし胸を張って誇らしげに見えるのは、ダイハツの屋台骨というべき「7thムーヴ」をついに世に送り出せた親心(?)からだろう。

▲ダイハツ「ムーヴ」チーフエンジニア戸倉宏征さん

その戸倉さんが「しかし」と続ける。

「2003年発売の「タント」がスーパーハイトワゴン市場をつくり爆発的な人気を博しました。現在では軽乗用車タイプの販売比率1位はスーパーハイトワゴンとなっており、ハイトワゴンはそれに次ぐ存在となっています」。

タント、スペーシア、それにNBOX。街中で目にする背高のっぽの多さを見れば、軽乗用車=スーパーハイトワゴンと言って過言ではないだろう。

■7代目発売に「なぜ」11年を要したのか

そこで一つ目の「なぜ」だ。そんな軽戦国時代において、なぜ「ムーヴ」は11年も間が空いてしまったのか?

ここで、戸倉C.E.ともどもムーヴ開発に尽力してきたダイハツ製品企画部の松山幸弘さんに話を向けよう。

「「ムーヴ」は歴代、4~6年周期でフルモデルチェンジを実施してきました。この慣例でいけば7代目は遅くても2020年頃には出ておかしくないタイミングだったのです」と松山さん。

▲歴代「ムーヴ」ずら~り。君はどこから覚えてる?

2020年と言えばコロナ下であり、それに伴って「新しい日常」が声高に叫ばれた時期。仕事にも遊びにもオンラインが導入され、人の移動そのものが大きく変化したタイミングだ。またその後はダイハツ自身の不正問題も発生しリリースなども一時停止。結果として7代目「ムーヴ」は11年目のフルモデルチェンジとなったが、もとより2023年発売が目標だったというから、ダイハツにとってもユーザーにとっても「待望の」ニューカーに違いない。

「タントなどスーパーハイトワゴンが市場のメインであるなら、【ムーヴはもう止めてもいいか】という話にはならなかったのですか?」とちょっと意地悪く尋ねると、

▲ダイハツ製品企画部の松山幸弘さん(右)と、商品企画部くるまVC室国内部用品グループの有馬優希さん。「最上位のRSは名前こそRSですが、クルマの性格としてはGTなので、週末ドライブなど思う存分お楽しみいただけます!」

「いえいえ、そんな話は全然ありません! 市場の変化はあっても「ムーヴ」はダイハツの基幹車種です。街中でスーパーハイトワゴンが目立つのでそう思われるのかも知れませんが、「ムーヴ」は乗り継ぎユーザーの多い車種で、「お待たせし過ぎて申し訳ありません!」と反省しきりなのです」(松山さん)

ついトガった方に目を奪われがちだが、ハイトワゴンでなければならないユーザー、逆に言えばスーパーハイトワゴンでなくて構わないユーザーはいる。それも、かなりの数いるということだ。

▲ムーヴRS 2WD/ブラックマイカメタリック×シャイニングホワイトパール

■「ムーヴ」でなければならないのは「なぜ」

ここでふたつ目の「なぜ」。なぜユーザーは「ムーヴ」でなければならないのか?

発売から30年と聞けば「もう30年! 早いなあ」と感じることだろう。いま50~60代の人ならそのデビュー当時を思い起こせるだろうし、「ムーヴとワゴンRどっちにしようか?」と迷った人も少なくないはず。当時のオーナーは若い世代が中心、つまり「ムーヴ」は絶好のファミリーカーとして受け入れられた。それから30年を経た7代目のメインターゲットは、ダイハツ命名するところの「メリハリ堅実層」。バブル景気を経験して消費やモノ選びにこだわりをもつかつての新人類世代(団塊ジュニア)。こだわりと合理的な選択がキーワードだ。

▲ムーヴRS 2WD/価格189万7500円(税込)~

「現在ファミリーカーの役割はより車内が広いスーパーハイトワゴンが担っています。「どうせなら広いほうがいい」という選択ですね。しかし車体設計側からすると車の背が高いことは、走行安定性の面で不利にはたらく場合があります。と言って、例えば「ミライース」だと着座位置が低くて乗り降りがしんどいし、積載も限られる。そこで人にも荷物にもちょうどいい選択肢として根強いニーズがあるのが「ムーヴ」等のハイトワゴンなのです」。

▲運転して、積んで、くつろいでと多様に使えるシートアレンジ

なるほど! スリーサイズの決まっている軽自動車であるなら大きい方=スーパーハイトワゴンの方が誰にとってもいいに決まってる、と思い込んでいたが、ハイトワゴンの「三方よし」の丁度よさって、実はクルマ作りの正攻法。そしてこの「丁度よさ」は言葉にするのは簡単だけど、ベストバランスが難しい!

▲「ムーヴ」初となる両側スライドドア。RSグレードのみ両側パワースライドを標準装備

実際、先の戸倉C.E.もこう語る。

「「ムーヴ」らしさとは? と検討すると、軽快な走り、手ごろな価格、スタイリッシュなデザイン、運転のしやすさ、便利で快適な機能等が浮かんだのですが、これを全部バランスよくって難しい、というか無理(笑) キャッチコピーは「もう一度、心が動き出す。MOVE ON.」としましたが、歴代乗っていただいている方、お初の方はもちろん、初代、二代目が出たあの頃乗っていた「メリハリ堅実層」にも「もう一度」乗っていただいて、移動やドライブを楽しんでいただきたいです。そういう用途にしっかり応えられるよう仕上げました!」。

▲ムーヴX 2WD/価格149万0500円(税込)~

■「MOVE CUSTOM」は「どこ」へ行った?

冒頭記したように、派生車種としてのカスタム併売は「ムーヴ」が先駆けだ。その伝家の宝刀というべきツーフェイス展開を止めたのも7代目のトピックとなる。

松山さんは言う。
「最初の頃はユーザーの若さもあり、元気のいい顔つきや走りを好む人がおられました。しかし「ムーヴ」が代を重ね、7代目では「メリハリ堅実層」をメインとすることで、カスタムではなく、どのグレードに対しても選ぶことができる「アナザースタイル」を提案することとなったのです」。

▲「アナザースタイル」の「ダンディスポーツスタイル」

この変更には大きなメリットがある。というのも7代目には手頃なグレードからL、X、G(以上、自然吸気)、RS(以上、ターボ)があるが、このうちG、RSのいずれのボディカラーに対しても「アナザースタイル」を適用できるのだ。

▲「アナザースタイル」の「ノーブルシックスタイル」

「「ダンディスポーツスタイル」「ノーブルシックスタイル」はメーカーオプションとディーラーオプションを組み合わせたパッケージ提案で、黒系でまとめた「ダンディ~」はかつてカスタムをお選びいただいた方にもオススメです!」と「アナザースタイル」担当の有馬さんが言えば、松山さんが、

「個人的にはレッドボディにダンディスポーツスタイルプラスにしますとね、赤+黒のコントラストが往年のシャレードデトマソとかミラXXなんかを連想しましてオススメ(笑)なんですよ!」とダイハツ愛を告白する一幕も。

▲松山さんおすすめのダンディスポーツスタイル

▲HPの「アクセサリーシュミレーター」で遊んでみよう!

>> ダイハツ アクセサリーシュミレーター

■迷いどころは「L、X、G/自然吸気」か「RS/ターボ」か?

現行「タント」に始まるダイハツの共通プラットフォームDNGAを採用した「ムーヴ」だが、エンジンは自然吸気(L、X、G)とターボ(RS)を用意(それぞれ2WDと4WDが選択可)。街中中心で日常の移動には前者、デイリー+ドライブなど「走り」や「旅」を積極的に楽しむなら後者と言えば判りやすい。ゆえにクルマ好き、アウトドア好きを自称する『&GP』読者ならRS一択だろう。RSはターボエンジン、15インチ大径ホイール、高性能ショックアブソーバー等を採用し、その走りは一目瞭然、ならぬ一“乗”瞭然。言葉にすれば月並みだが「NAで充分。だけどターボはもっといい!」となる。

▲RSのインテリア。タコメーターはRSだけの特別装備だ

「そう言っていただけるととても嬉しいです」と松山さん。続けて、「「ムーヴ」初となるスライドドアの採用や燃費の10%向上(先代比)などもトピックですが、山下達郎さん書下ろしの楽曲「MOVE ON」と永井博さんのイラストによる世界観込みで、「ムーヴ」でもう一度ドライブを楽しんでいただけたら、開発陣一同、嬉しく思います!」

『&GP』読者よ、さあ「MOVE ON」!

>> ダイハツ ムーブ

<取材・文/前田賢紀>

前田賢紀|モノ情報誌『モノ・マガジン』元編集長の経験を活かし、知られざる傑作品を紹介すべく、フリー編集者として活動。好きな乗り物はオートバイ。好きなバンドはYMO。好きな飲み物はビール

 

 

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