【趣味カメラの世界 #29】
前回はNikon「Zf」(29万9200円※ボディのみ)の外観や操作性を中心に紹介しました。今回は実際に撮影した作例を通して、「Zf」と「40mm f/2(SE)」(4万700円)の組み合わせが見せる描写力を、フォトグラファーの田中さんに掘り下げてもらいます。
監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。
* * *
■色も気分も思いのまま。“ピクチャーコントロール”で広がる表現の世界
本機の魅力のひとつは、ピクチャーコントロールの豊かさにあります。ベーシックな「スタンダード」「ポートレート」「風景」などに加えて、より表現の幅を広げてくれる「クリエイティブピクチャーコントロール」も選べます。
それぞれの効果の強さや色合いを自分好みに調整できるので、撮って出しでも“作品っぽい”雰囲気に仕上げられるのが楽しいところ。
今回いろいろ試してみたなかでは、「ピュア」や「モーニング」といった、少し彩度を抑えたフィルムライクなトーンがとても気に入りました。
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/3200秒、F3.5、ISO400、ピクチャコントロール:モーニング
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/1600秒、F5、ISO320、ピクチャコントロール:ピュア
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/3200秒、F2.5、ISO100、ピクチャコントロール:ゾンバ−
一方で、コントラストの高い「ゾンバー」などは都市の風景や金属の質感を強調できて、まったく違う表情を見せてくれました。
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/320秒、F2、ISO160、ピクチャコントロール:トイ
ちょっと癖のある「トイ」なども、使い方次第で面白い写真になりそう。それぞれのピクチャーコントロールを細かく調整できるので、同じシーンでもまったく違う“気分の写り”を楽しめます。
さらに、人気の「イメージングレシピ」にも対応しており、さまざまなクリエイターが作った色味をそのまま使えるのも魅力です。
■光と影の中で「Zf」が見せるレトロな情景
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/1600秒、F5、ISO180、ピクチャコントロール:ポップ
街を歩きながら、気の向くままにシャッターを切る。その瞬間、フィルムカメラを使っていた頃の感覚が、ふとよみがえってきました。
そう感じられたのは、40mmという画角が広すぎず狭すぎず、目に映る景色をそのまま写すような自然さを持っているからかもしれません。
それに、フルサイズらしい豊かな階調が、路地裏の光や影の濃淡を丁寧に描き出し、写真の中に空気の手触りのようなものを残してくれます。
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/2000秒、F4.5、ISO140、ピクチャコントロール:ピュア
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/2000秒、F4.5、ISO220、ピクチャコントロール:ドリーム
見た目がクラシカルだからか、このカメラを手にしていると、つい古い町並みを歩きたくなります。
そんなときには、「ピュア」や「ドリーム」といったピクチャーコントロールがうってつけ。古い建物の壁や街角の陰影が、よりレトロな雰囲気を帯びて映し出されます。
■「40mm f/2」が生む、自然なボケ味と距離感
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/640秒、F2、ISO100、ピクチャコントロール:ピュア
午後の光がやわらかく差し込む時間。開放で撮ると、人物の肌はなめらかで、瞳や髪の解像もほどよく残ります。
少し距離をとっても背景が自然にとけ、立体感がしっかりと出る。40mmという画角が、被写体との距離をちょうどよく保ってくれます。
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/640秒、F3.5、ISO220、ピクチャコントロール:トイ
「Zf」と「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」の組み合わせは、AFの反応も正確。歩きながら軽く振り返ってもらっても、瞳にしっかりピントが合います。
レトロなデザインに気持ちはゆるむけれど、撮影そのものは最新の機能に支えられていて、安心してシャッターを切れます。
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/320秒、F3.5、ISO1100、ピクチャコントロール:ピュア
▲Nikon Zf+NIKKOR Z 40mm f/2(SE)、シャッタースピード1/320秒、F2、ISO250、ピクチャコントロール:ピュア
40mmは、少し狭い室内でも取り回しがしやすく、被写体との距離感も心地よいです。絞りを開けても描写が安定しているので、感度を上げすぎずに撮影できます。
少し絞れば、輪郭が引き締まり、光の抜けもいっそう良くなります。本機のフルサイズセンサーは高感度でも破綻せず、ノイズが穏やかで、空気の透明感まで写し取ってくれます。
■心地よいシャッター音が、“撮る”という行為の楽しさを後押しする
このカメラは、撮っているうちに「写真を撮る楽しさ」に自然と集中できるカメラだと感じました。豊富なピクチャーコントロールは、ファインダーをのぞくいつもの景色を少しだけ特別なものにしてくれます。
また、背面モニターを閉じて、ダイヤルを回しながら設定を変えていくと、まるでフィルムカメラで撮っていた頃のような感覚がよみがえります。
こうした“撮る体験の心地よさ”があるからこそ、たとえ見た目のかっこよさで選んだとしても、後悔することはないと思います。
そして、使っていて印象的だったのがシャッター音の心地よさです。最近のカメラは静音化が進んでいますが、このカメラにはしっかりとした音が残っています。
最初は少し驚きましたが、撮影を重ねるうちにその音が癖になっていきました。ぜひ、実際に「Zf」を手に取って、そのシャッターフィーリングを味わってみてほしいと思います。
■フィルムの記憶を今に写す、趣味カメラの理想形
改めて、Nikon「Zf」と「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」の組み合わせは、当然“見た目だけクラシカル”では終わりません。写し出される写真は本格的で、スナップからポートレートまで、40mmという絶妙な画角が幅広いシーンに対応します。なにより、撮る行為そのものが心地よく、撮影体験が楽しくなるカメラです。
そして、フルサイズセンサーを搭載した現代的なカメラでありながら、このデザイン性の高さは他にない魅力があります。
フィルムカメラに憧れる人も、最新のデジタル機で安心して撮りたい人も、どちらの想いも満たしてくれる。その“二つの顔”こそが、本機の最大の魅力だと感じました。
>> Nikon
>> 趣味カメラの世界
<取材・文・写真/田中利幸 モデル/田淵瑚都(@tako_ism) 取材協力/Nikon>
【関連記事】
◆アナログとデジタルの“ちょうどいい間”を楽しめるFUJIFILM「X half」の魅力
◆“1億200万画素”で切り取る。富士フイルム「GFX100RF」が引き出す東京の新たな表情とは
◆このひと手間が楽しい。「PENTAX 17」と過ごす、フィルムカメラのある日常
- Original:https://www.goodspress.jp/columns/703623/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...