本当に着る意味あるの?「リカバリーウェア」の元祖・ベネクスが語る“休養のメカニズム”とは

【“休む”を知る】#5

ここ数年、「リカバリーウェア」という言葉を目にする機会が一気に増えた。と同時に、「リカバリーウェアって、つまり何?」「本当に意味あるの?」と思っている人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、リカバリーウェアのパイオニアと言われるVENEX(ベネクス)に取材を敢行。一体、リカバリーウェアはどこから生まれて、何をしてくれるものなのか。ベネクス代表取締役社長・中村さんに聞いた。

▲中村太一(なかむら・たいち)/ベネクス代表取締役社長。「世界のリカバリー市場を創る」を掲げ、“休養をあたりまえの習慣にすること”をミッションに、日常使いできる休養ウェアづくりを進めている

■リカバリーウェアはアスリート発ではなく“介護現場”から生まれた

リカバリーウェアと聞くと、まずはトップアスリートのためのハイテクなモノを思い浮かべるかもしれない。だが、中村さんは最初にこう言った。

「うちのスタート地点はまったくスポーツじゃないんです」

ベネクスが最初に向き合ったのは、介護の現場だったという。

「介護の仕事って本当に負担が大きいんです。体も心もどんどん削られて、疲れすぎて“もう続けられない”って辞めてしまう人も多い。そこをなんとかできないか、というところから始まっているんです」

いちばんしんどい現場で、「着るだけでもう少しラクにできないか?」という発想から、原型となる“ケアウェア”が生まれた。

「当時は『現場の人に少しでも休んでほしい』がすべてでした。“明日も現場に戻ってこられる状態をどうつくるか”っていう考え方だったんです」

この考え方は、のちにスポーツの側から注目されることになる。2000年代後半以降、トップアスリートの間で「トレーニング」「栄養」に続く3つ目の柱として「休養」が本気で語られ始めた。「どう休んで、どう戻すか」も競技の一部だという考え方が徐々に広がっていった時期だ。

「そのときに“これはリカバリーにも使える”って評価されたんです。『試合や合宿のあと、体が休まる』『翌朝すっきり起きられる』という声が選手側から上がって、そこから一気にスポーツの世界にも広がりました」

■そもそも「リカバリー」って何? ベネクスが線を引いているところ

いま「リカバリー」という言葉は、さまざまな場面で使われている。運動後の回復、睡眠の質アップ、メンタルの切り替え…なんでも“リカバリー”と言えてしまうようにも見える。だからこそ聞いてみた。「ベネクスが言うリカバリーって、どこからどこまでなんですか?」

「僕らが考えるリカバリーはすごくシンプルなんです。動いて、疲れて、休んで、また動く。このサイクルの中で“次の活力をちゃんと取り戻すこと”をリカバリーと呼んでいます」

中村さんは続ける。

「よく勘違いされるんですけど、“治療します”とか“治します”みたいな話ではないんですよ。病気を治すとか、ケガを治すとか、医療行為を置き換えるものではまったくありません。僕らがやろうとしているのは、日常でたまっていく疲れに対して『もう一回ちゃんと動ける状態に戻すお手伝い』なんです」

では、その「お手伝い」とはなんなのか。

「ずっと同じ姿勢でこわばった体をゆるめたり、めぐりを良くしたり。そういう物理的なところをサポートすることで、“明日また普通に動ける”、“本来持つ力を引き出す”というところまでもっていくイメージです」さらに中村さんは続けて言う。

「毎日クタクタで家に帰るって、別に“病気です”って診断される状態じゃないですよね。でも、そのしんどさを放置していると、気づかないうちにどんどんパフォーマンスが落ちていく。そこを立て直すのもリカバリーなんです」

つまり、ベネクスがターゲットにしているのは「病院に行くほどじゃないけど、このまま削られ続けると確実にしんどい」という領域。医療と日常のあいだで、より健康な状態へ近づけるためのサポートをするものとして、リカバリーウェアは設計されているのだ。

■「なんとなくラク」じゃない。ベネクスが語る“着て休養”の根幹とは

では、ベネクスのリカバリーウェアを着ると何が起きるのか。中村さんは「ちゃんと理由はあるんです」と説明する。

ベネクスのリカバリーウェアには「PHT」という独自の繊維が使われている。ナノプラチナなどの特殊な成分を糸にする段階から練り込んでおり、素材作りの段階からこだわっているのが同社の強みでもある。

この繊維に練り込まれている鉱物素材から発せられる遠赤外線の働きによって、血のめぐりをサポートしたり、こわばった筋肉をゆるめたりする方向に体を促す、というのがベネクスの説明だ(※)。

※一般医療機器届出商品『スタンダードドライ+』、『リカバリーデイズ』の一部商品、『リカバリームーヴ』

「『疲労回復』とか『血行促進』みたいな表現を使う以上、うちは一般医療機器として求められる基準の中でちゃんと説明しなきゃいけません。そこはルールに沿ってきちんと管理しています(※)」と中村さん。

そのうえでいちばん大事なのは、ドラマチックな即効性ではなく、続けやすさだと強調する。

※写真『リカバリームーヴ エンボスロゴTシャツ【一般医療機器】』

「帰ったらまず羽織るとか、移動中にも着ておけるとか、それくらいハードルが低くないと続かないんですよね。ピンと張りっぱなしになった体や神経をリラックスすることで、明日もう一回ちゃんと動けるところに戻す。そのお手伝いをするのが、ベネクスのリカバリーウェアなんです」

つまり「着た瞬間に完全復活!」ではなく、毎日の中に“ちょっと休めるタイミングを手軽に取り入れられるようにするのが目的なのだ。

■最初の一着はこれ。リカバリーウェア入門ガイド

「最初の一枚はどれを選べばいいのか分からない」という人のために、中村さんに“はじめてのリカバリーウェア”として勧めたい3タイプを聞いた。キーワードは「特別な儀式にしないこと」。日常にさりげなく差し込めるかで選ぶのがコツだという。

【おすすめ1】サラッと着て、そのまま眠れる「帰宅後の一着」

「スタンダードドライ+ 【一般医療機器】 ロングスリーブクルーネック」(1万7600円)
「スタンダードドライ+ 【一般医療機器】 ジョガーパンツ」(1万8700円)

▲写真はレディースモデル

ベネクスの定番シリーズ「STANDARD DRY」をベースに、シルエットやディテールを今っぽく更新したモデル。ロングスリーブ×ジョガーパンツのセットで、同系色ロゴや袖口・裾の処理など、見え方にも気を配っている。

どちらもよく伸びる素材感で、座る・寝転ぶ・立ち上がるといった何気ない動きでもつっぱりにくく、長時間リラックスできる設計だ。

後ろ襟テープの汗の消臭機能などの細かい工夫も入っていて、“いかにもパジャマ”で終わらせないデザイン性もポイントだ。

中村さんいわく「正直いちばんいいのは寝るときなんですけど、“隙あらば使う”がコツなんです」。ストレッチやマッサージみたいに“さあ今からケアします”と時間をとらなくても、部屋に戻った瞬間にとりあえず着て休むだけで良い、という考え方だ。

【おすすめ2】パジャマ見えしない“日常着ベース”のリカバリー

写真左:「リカバリーデイズ 【一般医療機器】 ショートスリーブ ポケットT」(1万4300円)
写真右:「リカバリーデイズ 【一般医療機器】 ジョガーパンツ」(1万7600円)

「リカバリーデイズ」は、いわゆる“休む服”を、日常の延長で着られるように設計したシリーズ。コットンベースの生地で、肌ざわりも見た目もカットソーに近く、自然なリラックス感が魅力だ。Tシャツはジャケットのインナーにも合わせやすく、仕事帰りの移動中や出張先のホテルでも、そのままオフに切り替えられる一枚になっている。

ジョガーパンツはTシャツと同素材で、ゆるさはありつつもだらっと見えないテーパードシルエットが特徴。ナチュラルなカラーバリエーションで展開しており、上下でそろえて着るとトーンや質感が統一されて、ほどよく品のあるまとまり方になる。

【おすすめ3】「一枚だけ買ってみる」派にちょうど良い、移動用ロゴT

「リカバリームーヴ 【一般医療機器】 エンボスロゴTシャツ」(1万5400円)

「移動中すらちゃんと休みたい」という発想から生まれたのが「リカバリームーヴ」。見た目にはしっかりした厚みがありながら、手に取ると意外なほど軽い。

首元には汗に対応する消臭テープ、両サイドには通気性を高めるメッシュ素材を採用するなど、移動シーンでの快適さを細部まで追求している。

背面にはアクセントとなる差し色のテープがあしらわれており、いわゆる“機能インナーです”という雰囲気ではなく、普段着として着られる表情に仕上がっている。

*  *  *

先述の通り、リカバリーウェアは、着た瞬間にすべてを解決してくれる“魔法の服”ではない。中村さん自身も「過信しすぎず、あくまで日常の休養サイクルを助ける道具として使ってほしい」と繰り返していた。

ただ、毎日忙しくて、ストレッチする気力すら残っていない日もある。「帰ったらとりあえず羽織る」「移動のときに着ておく」「寝る前だけ変える」くらいの小さなクセで、本来持っているパフォーマンスを最大限出せるようになるなら、それはもう立派な休養だ。

>> VENEX

>> 特集:“休む”を知る

<取材・文/若澤 創(&GP) 写真/田中利幸>

 

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