ホンダの「CR-V」といえば、都市型SUVの元祖とも言える存在として記憶している人も多いことでしょう。筆者も1995年の初代モデル登場時に、それまでのRV車のイメージを覆すスマートさに憧れを抱いた1人です。そんな「CR-V」も今や6代目。代を重ねるごとに車格がアップしていき、初代からはだいぶ大きくなっています。
▲1995年に登場した初代「CR-V」
日本国内では販売されていない期間もありましたが、グローバルでは累計1500万台を売り上げる人気車種。特に北米では最も売れているホンダ車で、年間販売台数は40万台を超えるほどです。世界で支持されている理由はどこにあるのか? 最新の「CR-V」に試乗して確かめてきました。
■車体は大きいのにコンパクトに感じる
現行の「CR-V」、北米では2022年から導入が始まっていましたが、国内販売が開始されたのは2026年2月。このタイミングで国内に導入されたのは、ホンダの最上級SUVを求める声が国内でも高まってきたためだといいます。車体サイズは全長4700mm、全幅1865mmと、同じホンダの「ZR-V」(全長4570mm、全幅1840mm)と比べても一回り大きく、現車を目の前にすると迫力を感じます。

先代モデルよりもさらにサイズアップしており、「ZR-V」よりワンランク上の車格となったことから国内に導入が決まったとか。SUVらしいスポーティさを感じさせるデザインで、メッキ加飾などでゴテゴテしていないフロントフェイスも個人的には好印象でした。北米では多くのユーザーに“足”として使い倒されているため、豪華過ぎない外観デザインが好まれているようです。
実際に乗り込んで運転してみると、サイズの数値や外観で持っていたイメージよりもコンパクトに感じます。車内は広く感じるのに、運転している感覚としては小さく感じるという何とも不思議な印象。試乗後に車体設計の担当者に確認したところ「狙い通り」という言葉が返ってきました。

インテリアは水平基調の部分を多くして広がりを感じるデザインとし、車体は見切りのいい作りとすることと、意のままに操れるハンドリングとすることでコンパクトに感じさせる狙いなのだとか。実際に市街地や道の細いワインディングも走行しましたが、大きいクルマを運転しているという緊張感はほぼゼロで、リラックスしてドライブを楽しめました。

細い峠道では特にハンドリングの良さを実感します。雨天で路面はウェットな状況でしたが、狙ったラインをきれいにトレースできました。驚いたのは回り込んだカーブでもハンドルを持ち替えることなく曲がりきれたこと。可変レシオとされた電動パワーステアリングによってハンドルの切り始めは反応が穏やかですが、切り込むと舵角が大きく付くため、1回の操作でタイトなコーナーも曲がれます。試乗したのは4WDモデルでしたが、走行シーンに合わせて駆動力を前後に配分する新採用の機構も効果を発揮しているようです。
■操っている感覚が伝わってくるハイブリッドシステム
搭載されるパワートレインは2.0Lの直噴アトキンソンサイクルエンジンと、2モーターの電気式CVTを組み合わせた「e:HEV」と呼ばれるハイブリッドシステム。これはエンジンを主に発電機として使い、駆動はモーターで行うシステムです。モーターの最高出力は135kW(約183PS)と従来モデルと変わりませんが、最大トルクは315Nmから335Nmへとアップしています。

高速走行ではエンジンと駆動輪をクラッチで直結(ロックアップ)して、エンジンで走行するシステム。これによって、発進や加速が得意なモーターと、高速での一定走行が得意なエンジンのそれぞれのメリットを活かして低燃費かつ静粛な走行を可能としています。特にハイブリッド車が不得意とする高速走行時の燃費に優れることが北米で評価されているポイントです。
さらに新型「CR-V」では、高速域に加えて低速での緩い加速や登坂時にもクラッチ直結でエンジンを駆動に用いる「ロックアップLow」機構が追加されています。実際に走行している際も、低速域で何度かロックアップ状態を示す歯車マークが表示されていました。ただ、この機構は北米などで普及しているキャンピングトレーラーなどを牽引する際に、エンジンの力を使うためなのだとか。国内ではあまり普及はしていませんが、トレーラーを引く用途を考えているドライバーにとってはまたとない選択肢となりそうです。

ドライブしていて感じたのはハイブリッド車特有の静粛性は確保しながら、エンジンが動いていることが伝わってくること。これはエンジン音がシフトアップをしているようにリズミカルに耳に届く「リニアシフトコントロール」という機構が搭載されていることが効いています。特にドライブモードを「スポーツ」に切り替えると、クロスミッションを変速しているような音が刻まれ、エンジン音がスピーカーで増幅されるので、さらに気持ちがアガります。家族でのドライブでは静粛なモードで、1人でハンドルを握る際は「スポーツ」モードで気分を高めながら運転を楽しめます。

SUVらしくラゲッジスペースも広大。セカンドシートを畳まない状態でもゴルフバッグが4つ、キャリーケースも3つ収納することができます。分割式のセカンドシートを畳めばサーフボードやロードバイクといった長さのある物も収納が可能。ただ、セカンドシートの部分にやや段差があるため、車中泊をするには厚めのマットなどを敷く必要がありそうです。

新型「CR-V」のコンセプトは“究極のオールラウンダー”。スポーティな外観と室内の広さ、高い環境性能と走る楽しさなど、相反すると思われる魅力を両立していて仕上がりも上質でした。「CR-V」というブランドは、ホンダのSUVラインナップの長兄として憧れの存在となり続けてくれそうです。
【SPEC】
価格:512万2700円〜(4WDは539万2200円〜)
サイズ:4700×1865×1690mm
重量:1750kg(4WDは1800kg)
エンジン:1993cc4気筒+2モーター
最高出力(エンジン):148PS/6100rpm
最大トルク(エンジン):183Nm/4500rpm
最高出力(モーター):135PS/5000~8000rpm
最大トルク(モーター):335Nm/0~2000rpm
料消費率(WLTCモード):19.8km/L(4WDは18.2km/L)
>> ホンダ「CR-V」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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