ハーレーダビッドソンの中でもフラッグシップに位置付けられる高性能モデルが「CVO(カスタム ビークル オペレーションズ)」シリーズです。通常ラインナップよりも大排気量のエンジンを搭載し、独立した専用ラインで製造されるプレミアムな仕上がりのシリーズですが、2026年モデルにはちょっと変わったマシンがラインナップされています。

それが「CVOロードグライドST」と「CVOストリートグライドST」の2台。同社が参戦する“キング・オブ・バガーズ”というレースからフィードバックされた技術を採用し、昔でいう“レーサーレプリカ”に仕上がっているのです。キング・オブ・バガーズとは、バガーと呼ばれる大型のフェアリングやパニアケースなどを装着したスタイルのマシンで競われるレース。MotoGPと併催されるなど、人気の高まっているカテゴリーです。
■レースからフィードバックされた本格装備

今回試乗したのは「CVOロードグライドST」。フレームマウントの大型フェアリングを装備し、快適にツーリングできるモデルとして人気の「ロードグライド」シリーズのフラッグシップに当たります。
「CVO」の名を冠したこのマシンは、既存の「ロードグライド」シリーズと比べても高い運動性能が与えられています。

パワートレインは「ミルウォーキーエイト121」と呼ばれる1977ccのV型2気筒エンジンを搭載。最高出力は126PS/5020rpmで最大トルクは193Nm/3750rpmと、低回転域から強大なトルクを発揮します。

むき出しのエアインテークや、スクリーミンイーグル製のチタンマフラーなどもレースシーンからフィードバックされた装備で、見た目にも迫力があります。

足回りに目を向けても、47mm径の倒立タイプのフロントフォークに、ブレンボのラジアルマウントキャリパー、ウェーブタイプのブレーキディスクなどレーシングスペックと呼ぶにふさわしい装備。7本スポークのアルミキャストホイールも軽量に作られています。

リアサスペンションはリザーバータンク付きで、フェンダーの上にタンクが露出していて減衰力の調整が可能。フロントフォークももちろんフルアジャスタブルです。

シートカウルやフロントフェンダー、コンソールなどには軽さと強度を両立した先端素材である鍛造カーボンが用いられています。金属製パーツのイメージが強いハーレーダビッドソンですが、軽さを重視したカーボンパーツが多用されている点からもこのマシンの素性が感じられます。
■ハーレーのイメージを覆す運動性能

レーシーなイメージの装備が目に付きますがシート高は720mmと低く、クルーザーモデルらしく足付き性は良好です。実際のレースモデルは車高が高められていますが、市販モデルでは不安を感じることはないでしょう。シートはお尻を包み込むような形状で、コシもあり確かなホールド感が伝わってきます。

ハンドルはアップタイプで、ライディングポジションもクルーザーらしいものです。大型液晶ディスプレイのメーターは、タコメーターとスピードメーターが大きく並んで表示されるデザインでレーシーな雰囲気。大型フェアリングの内側には大きなスピーカーも搭載しています。レーシングイメージとツーリングでの快適性を両立しているのが面白いところ。
実際に走り出すと、2L近い排気量からくる強大なトルクが380kgある車体を軽々と押し出します。

ここまでは既存のモデルと共通しますが、このマシンの特徴はここから。軽くアクセルを捻ると恐ろしい勢いでタコメーターの針が跳ね上がり、あっという間にレッドゾーン近くまで吹け切ってしまいます。このピックアップの鋭さは、従来のハーレーダビッドソンでは味わえなかったもの。特に走行モードをSPORTSに切り替えると、この傾向はさらに強くなり、矢継ぎ早にシフトアップしていく必要があります。

足回りのセットアップも同ブランドのモデルとしては硬めで、路面をしっかりと捉えてくれていることが体に伝わってきます。特にリアタイヤが地面を蹴るトラクション性能が素晴らしく、強大なトルクを180サイズの太いタイヤを介して路面に伝えてくれています。
そしてコーナリング性能も、いわゆるハーレーのイメージを覆すもの。重量級の車体ですがバンクさせる操作感は信じられないほど軽く、バンクしている間の接地感も豊かで安心感があります。これだけ大きなクルーザーマシンで、コーナリングが楽しめるとは思ってもみませんでした。
従来の「ロードグライド」シリーズに乗った際には、「こんなマシンでレースなんてできるのか?」と思ったものですが、今回「CVOロードグライドST」に乗ってみて「これならサーキットを走るのも面白いかも」と思うようになりました。とはいえ、車体が低く抑えられているためバンク角は限られるので、あまり調子に乗らないほうが良さそうです。
* * *

ハーレーダビッドソンのクルーザーモデルとレースのイメージはなかなか結び付かなかったのですが、実際に乗ってみると操作感の軽さは交差点を曲がる際にも感じられて、日本の狭い道で乗るにはメリットも大きそう。ピックアップの鋭さに戸惑う部分もありましたが、走行モードの切り替えで抑えられるので、ゆったり乗りたいときにはレインモードなどを使えばいいでしょう。レースイメージのデザインは個人的には好み。既存のハーレーダビッドソンと差別化されたマシンに乗りたい人には魅力となるでしょう。ハードルとなるのは、581万200円という価格でしょうか。
【SPEC】
全長×全幅:2410×925mm
ホイールベース:1625mm
シート高:720mm
車両重量:380kg
エンジン:1977cc空油冷V型2気筒
最高出力:126PS/5020rpm
最大トルク:193Nm/3750rpm
価格:581万200円
>> ハーレーダビッドソン「CVO Road Glide ST」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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