犬と人の幸せ。犬と人の幸せな暮らしを追求する『パウリブプラス』代表理事・小野さん。グリーフケアの専門家・阿部先生と共に、そのヒントを探る対談を行った。
【DOG LOVER】
小野千恵子
『パウリブプラス』代表理事/犬と飼い主のためのアパレルブランド『LAUW』オーナー兼ディレクター/モデル 21歳のときにサッカー日本代表・小野伸二と結婚し、オランダへ移住。孤独な異国での生活を犬に支えられた経験から、ファッションブランド『LAUW』を立ち上げ、収益の一部は動物保護施設などへ寄付。2025年より『パウリブプラス』を設立し、“犬と人が共生するまち”の実現を目指して活動中。
@lauweroom_gram
@lauw_tokyo @pawliveplus
阿部美奈子先生
『合同会社Always』代表/獣医師/動物医療グリーフケアアドバイザー
グリーフ(大切な対象を失うことで生じる悲嘆)に寄り添う援助をと専門とする。臨床で多くの看取りに向き合う中で、グリーフケアの重要性を実感。生前からペットロスまで幅広いカウンセリング、講演、執筆を通
じ、人と動物が穏やかに過ごせる安全基地づくりを提唱。著書に『犬と私の交換日記』がある。家族と犬1頭と猫3匹とマレーシアで暮らす。
@alwayswithpe
小野:今日は、犬と人が幸せに生きるために大切なことをお伺いしたい
です。よろしくお願いします。
阿部先生:はい。まず出発点になるのは、目の前のこのコを知ることで
す。しつけ本や一般論はあくまで平均であって、自分の犬そのものではありません。犬は1頭ごとに個性があって、それぞれ適切な接し方も違います。こうあるべきに当てはめるのではなく、このコはどう感じ、どう反応しているのかを見ていくこと。この視点に立つと、いわゆる問題行動の見え方も変わります。吠える、噛む、落ち着かないといった行動は、人間の都合で問題と呼ばれているだけで、犬にとっては不安や違和感を伝えるサインです。理由のない行動はなく、安心できる状態になれば自然と必要なくなっていきます。例えば噛むコは、過去に何か危険な目に遭ってトラウマを抱えていることが多い。常に警戒しているので、神経も疲れているはずなんです。“不安を取り除く”ことが、関係づくりの第一歩になります。
小野:しつけの前に、関係性が重要になるんですね。
阿部先生:信頼関係ができていない段階で「あれはダメ、これはダメ」と制限を増やしても、犬には伝わりません。それどころか不信感につながることもあります。関係が整ってはじめてコミュニケーションが成立し、その結果として行動も変わっていきます。無理にコントロールするのはダメ。そもそも犬は、親や兄弟から離されて、突然ひとりぼっちになって、飼い主の元へやって来る。新しい世界に放り込まれるわけです。だから安心感が全然足りていない。問題を起こすのは、ただ不安と恐怖と戦っているだけで。それでお腹を壊したりして、ゴハンに薬を混ぜてあげると、それをペッと吐き出して飲んでくれなかったり。これもわがままではなく、本能的な反応です。信頼していない相手から知らないものを出されたら怖くて当然ですよね。このコにはどう見えているのかと想像することで、対応の仕方は大きく変わってきます。
▲それぞれの生活スタイルや関係性があるので周りの評価をあまり気にしなくていいんじゃないかな。頑張りすぎずに、気楽に犬と暮らしを楽しみましょう。
小野:犬の視点で考えることが大切ですね。先生のカウンセリングにい
らっしゃるのは、ペットロスではなく、こういう日常の悩みで来られる
方も多いんですか?
阿部先生:ペットロスといっても、その原因は後悔や罪悪感、自責であることが大半で、生きているときの後悔は、亡くなってからはやり直せ
ない。だから、生前の関わりを見つめ直すグリーフケアを行っています。
今を生きる動物と人の心がすれ違わないようにアドバイスしています。
小野:なるほど。病気に関する相談もありますか?
阿部先生:多いですね。いろいろとお話を聞いていると、犬が病気になると、みんな治療や安静を優先して、いろいろな制限を設けがちだなと感
じます。病気だから外出を我慢させよう、他の犬と遊ばせるのをやめておこう、そのように自由を奪うことによって、そのコらしさや笑顔が失われてしまうこともあります。本来は愛犬のための行動でも、気づけば自分の安心や都合のための行動になっていないかと、問い直す必要があると思います。それと、日本人は真面目な人が多いから、介護を頑張りすぎてしまう傾向がありますね。最近はインスタでもっと頑張って介護している人の様子を見て、自分を追い込んでしまうこともあるようです。
▲まずは犬を安心させてあげましょう。そしてそれぞれの個性を理解し、犬の目線になって考えてみる。あとは笑顔で一緒に楽しく過ごしてあげるだけでOK!
小野:確かに日本人は真面目でちゃんとしなきゃとか、他人の評価を気にしすぎるところがありますよね。毎日朝晩、きちんと散歩に行かなければという強迫観念に囚われている飼い主さんも多い。行っていないと虐待だと思われるんじゃないかとか、不安になって、雨の日も同じ時間、同じ距離を守ろうとする。でも自分の体調のこともありますよね。つらい状態での散歩が、犬にとって本当に嬉しいかというと疑問です。だから私はルーティンをあまり設けないスタイルを推奨しています。そうすることで、あらゆる状況に柔軟に対応できるコに成長すると思いますし。あと、他人からの評価というところだと、共働きで長時間犬を留守番させるなら飼うべきではないという批判の声も結構ありますよね。でも、一緒にいる時間が短くても、密度の濃い時間を過ごしていれば、全然いいんじゃないかなと思うのですけど、先生はどうお考えですか?
阿部先生:一緒に過ごす時間の質が高ければ、いい関係が築けると思います。みんなそれぞれ違いますし、世間一般の“こうあるべき”という理想に縛られて無理をすると、人も犬も負担が大きくなってしまいます。散歩も同じで、回数や距離を守ることが目的になると、本来の楽しさが失われてしまうことがあります。
小野:人の評価でなく、むしろ自分の犬と向き合うべきですよね。
阿部先生:はい。そしてもう一つ大切なのは時間の捉え方です。人は死の教育を受けているけど、犬は自分が死ぬとは思っていない。人と違って、時間をカウントしていない。つまり今を生きているということ。だからこそ、その瞬間をどう輝かせるかが重要なんです。もしも治療が難しい病気になった場合は、飼い主は先の不安を抱えてしまいますが、その暗い空気は犬にも伝わって、何か怖いことがあるのではと感じさせる最期の時間になってしまうわけです。それを避けるために、できるだけ笑顔でいて欲しいし、犬のプライドを満たすように褒めてあげてほしい。「いいコだね」「かわいいね」とか、そのやさしい響きの言葉は、飼い主さんの幸せな気持ちと一緒に伝わって、犬を安心させてくれます。結局、心が元気であることが大切で、今日もいいことがあった、明日もきっと楽しいことがある、明日もおいしいものが出てくる、そんなワクワクする気持ちが増えると、寿命が延びることだってあります。
小野:そうですよね、余命をガンガン超えていくこともありますよね。
阿部先生:愛犬が喜ぶことは、振り返ると当たり前の日常の中にいっぱいあります。治療も大切ですが、病気のコを制限し過ぎずに、このコは何が好きだったかを思い返して、それを一緒にやってあげてほしい。そうすればきっと活力が湧いてくるから。犬は歳をとっても永遠の3歳児のような存在。純粋でとてもシンプル。笑顔で一緒に過ごすこと、それが犬にとって何よりも幸せなんです。
阿部先生と対談をして気づけたこと!

犬が重病になると、みんなよくなって欲しいと思うから、安静にと制限を増やしがち。でも、犬のためにやっているということが、実は自分の安心のためにやっている、そんなことも結構多いと思います。果たして自分の行動や生活スタイルが犬の幸せになっているか? 看病もそうですし、しつけや散歩の仕方もそうですけど、犬目線で一度考えてみるのが大切ですね。
小野千恵子
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<写真=岡崎健志/構成=小出健太郎/文=松尾一博>
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- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web
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