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多様な人材に投資する
テック業界全般でダイバーシティが欠如しているもう1つの原因として、レプリゼンテーションが不足している創業者に提供される資金の不足という問題がある。2018年、米国のベンチャーキャピタル資金のうち女性の創業者に提供されたのはわずか2.2%にすぎない。米国のVC企業の意思決定者のうち女性が占める割合は10%に満たないことは、何の説明にもならない。
「資金が不足しているだけではない。女性は扱いが異なることも問題なのだという点も指摘しておきたい」とWomen Who Tech(ウィメン・フー・テック)の創業者Allyson Kapin(アリソン・カピン)氏はTechCrunchに語っている。
カピン氏は、ウィメン・フー・テックが2017年に実施したアンケート調査で、嫌がらせを受けたと報告した44%の女性のうち、77%が創業者としてセクシャルハラスメントを経験したと答えた、という事実を指摘する。さらに、そのうちの65%が出資の見返りとして性的な誘いを受けたと回答したという。
「公平な競争の場は存在すらしていない。他の創業者は驚くほどの注目を集められるかもしれないが、女性創業者によるスタートアップは、さまざまな批判を受けるという点で障害に直面している。そして今は、まったく別次元の性差別、性的嫌がらせ、出資の見返りとしてのあからさまな性的誘いにも直面している」とカピン氏は言う。
残念なことに、黒人女性創業者にとって、現実はさらに厳しい。100万ドル(約1億734万円)を超える資金調達を達成した黒人女性の数は、増えているとはいえ依然として少ない。digitalundivided(デジタルアンディバイディッド)の新しいProjectDianeレポートによると、2015年に100万ドルを超える資金を集めた黒人女性はわずか12人だったという。ちなみに2017年は34人だった。
それでも、黒人女性が調達した資金の平均額は0ドルだと言える。なぜなら、黒人女性によって創業されたスタートアップの大半はまったく資金を調達できていないからだ。ファンドから調達した資金が100万ドル(約1億734万円)未満だった黒人女性の平均調達額は4万2000ドル(約450万円)である。デジタルアンディバイディッドによると、2009年に黒人女性が調達した出資額は、同年にテック企業が調達したベンチャー出資合計額のうち、わずか0.0006%にすぎなかった。
「黒人創業者はVCに見切りをつけ始めている。何度もトライし、頼み込み、丁重に出資をお願いしたのにVCは乗ってこない。私はまだやる気が残っていて、このような機関投資家やLPの扉を叩き続ける気持ちがあるが、まもなく彼らに見切りをつけるだろう。そうしたら彼らは天を仰いで『なぜこの投資話に入れてくれなかったんだ』などというのだろう。私は4年前も、『黒人も起業するんですよ』と叫んでいたが、今も同じことをすることになるだろう。もうたくさんだ」と、Backstage Capital Founding(バックステージ・キャピタル・ファンディング)のパートナーArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏はTechCrunchに語る。
黒人創業者限定で出資するために設立されたバックステージ・キャピタルは、2016年末頃に500万ドル(約5億3000万円)の初回資金調達を完了した。ハミルトン氏は現在、有色人種への投資を続けるために3600万ドル(約38億5000万円)の第2回資金調達を完了しようとしている。同氏は有色人種への投資をあきらめたという報道もあったが、それは誤報だったようだ。
「資金の調達を止めたことは一度もない。止めようと考えたことも一度もない。今でも資金を募っている真っ最中だ。思ったよりも時間がかかっている。問題は、大海の一滴のようなわずかな資金を調達するのになぜこんなに時間がかかるのかという点だ。なぜ皆、あきらめてしまうのか。なぜ進歩しようとしないのか」とハミルトン氏は言う。
バックステージ・キャピタルは創業当時から、過小評価されている創業者が率いるスタートアップに投資してきた。その数は60社を超える。同氏を最初に駆り立てたのは、「ばかげた理由で見過ごされている人たちがいる。他の人が見過ごしているところにこそビジネスチャンスがある」という事実だった。
「何か破壊的な力がなくては、このようなやり方を続けていくことはできなかったと思う。そして実際に破壊が起きた。良い意味での破壊、いわば良き破壊だ。黒や茶色の肌の創業者や性的マイノリティーの人たちがこれまでの通例を覆したというニュースを毎日のように目にする」と同氏は言う。
ハミルトン氏は例として、自分の会社Partpic(パートピック)をアマゾンに売却したJewel Burks(ジュエル・バークス)氏や、客観的に見ても非常に成功しているメディア企業Blavity(ブラビティ)の創業者Morgan DeBaun(モーガン・デボーン)氏などのサクセスストーリーを挙げる。
「まさに論より証拠で、こうした事例は私の直感が正しいこと、私の言ったことが現実になっていることを示している。ここ数年の出来事を見れば、私が今言っていることが今後もある程度は現実になると信じざるを得ないだろう」とハミルトン氏と語る。
ハミルトン氏は、バックステージ・キャピタルのポートフォリオの中から、今後18か月ほどの間に驚くべき収益を達成し、巨額の資金調達に成功する創業者が出てくるだろう、と予測する。機関投資家からの支援がなくても、ハミルトン氏が成功を大いに期待できる理由はたくさんある。
National Venture Capital Association(全米ベンチャーキャピタル協会)によると、黒人とラテン系の投資家は非常に少ない。VC企業の投資チームのメンバーのうち、黒人はわずか2%、ラテン系は1%にすぎない。
しかし、黒人や有色人種の女性が運営するファンドがいくつか登場している、とハミルトン氏は言う。また、GVでパートナーだったことがあるLo Toney(ロー・トニー)氏は最近、Plexo Capital(プレクソ・キャピタル)を介して多様な投資家に出資するために3500万ドル(約37億4000万円)を調達した。
それでも、業界には多様なバックグランドを持つ人たちに必ず出資する投資家がまだまだ不足している。
「機関投資家(VC)がこの点で迅速に行動するとは思えない」とハミルトン氏は言う。
また、これには生まれつき持つ経済的特権も関わっている。民族間の貧富の格差は巨大で、それが起業を目指す有色人種の創業者に確実に影響を与えている。Institute for Policy Studies(政策研究所)によると、米国の白人中流世帯が持つ財産は、黒人中流世帯の41倍、ラテン系中流世帯の22倍にもなる。
白人の創業者は、創業初期に裕福な両親や祖父母から支援を受けることが可能だが、有色人種の創業者は同じ方法で親を当てにできるとは限らない。それでも、望みはある。米大統領選の民主党候補指名争いに名を連ねるElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員だ。ウォーレン氏は2019年6月、多様な人種の創業者を破綻させたとしてベンチャーキャピタルを非難し、有色人種の創業者を支援する計画を発表した。
On average, Black, Latinx, Native American, and other minority households have significantly less wealth than white households. So they have less to put into their small businesses, and less collateral to get outside credit.
— Elizabeth Warren (@ewarren) June 14, 2019
この計画は、白人の創業者のように親や祖父母の財産を当てにできない有色人種の創業者に資金を提供するというものだ。
日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。
[原文へ]
(翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/06/25/2019-06-17-the-future-of-diversity-and-inclusion-in-tech-3/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Megan Rose Dickey
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