BMWのバイクというと、水平対向の“ボクサー”エンジンを搭載した“旅バイク”をイメージする人が多いでしょう。近年はスーパースポーツの「S1000RR」のような4気筒スポーツマシンや、普通自動二輪免許で乗れる「G310R」のようなマシンもラインナップしていますが、今回紹介したいのは並列2気筒エンジンを搭載した「F900R」というモデル。
BMWのラインナップの中では地味めな存在ですが、先代の「F800R」の時代からバランスが良く、乗りやすいと定評のあるマシンです。筆者も初めて「F800R」に乗った際、街中でもワインディングでも意図した通りに操れて、その気になればかなりキビキビ走れる性能に驚いた記憶があります。
■リーズナブルな価格も魅力
価格も127万9000円〜と、200万超えが珍しくないBMWの中では手を出しやすいもの。後述しますが、電子制御など装備も充実しているので、コストパフォーマンスは国産車と比較してもかなり高いといえます。
いわゆるスポーツネイキッドに分類されるモデルですが、欧州で人気のストリートファイターっぽさは抑えられていて、アグレッシブ過ぎないデザインな点も好感が持てます。BMWのロゴも目立ちすぎない配置とされているので、さり気なく存在感を示すことができそうです。
ヘッドライトはLEDですが、いわゆる“昆虫顔”ではないので街中でも気恥ずかしさを感じる必要はなさそう。ラジエーターシュラウドも装備されていますが、目立たない配色とされています。選ぶカラーによってはバーエンドミラーとされている場合もありますが、今回乗ったマシンには通常のミラーが装備されていました。
エンジンは895ccという排気量の割にはコンパクトな水冷並列2気筒。105PSという最高出力と93Nmの最大トルクを発揮します。2025年モデルからはユーロ5+の排出ガス規制にも対応していますが、出力などは従来モデルと変わりがありません。
ユニークな形状のサイレンサーから排出されるエキゾーストノートは、2気筒らしい歯切れのいいものですが、音量はしっかりと抑えられているので、夜の住宅街に帰ってきても気を遣わずに済むレベルです。
2025年モデルでは、前後ホイールに約1.8kgも軽量なものを装備。これは同じスポーツネイキッドの「S1000R」に採用されていたもので、キレのあるハンドリングを実現します。フロントフォークもアップグレードされ、プリロードや減衰力を調整できるフルアジャスタブルタイプとなっています。
電子制御も進化していて、バンク角などに応じて制御されるダイナミックトラクションコントロールや、急なシフトダウンでの車体の不安定化を防ぐエンジンドラッグトルクコントロールが標準装備されています。試乗車には電子制御で走行中に減衰力やプリロードを切り替えるダイナミックESAと呼ばれるリアサスペンションも装備されていました。
■乗りやすくて速い!
乗ってみると、排気量の割に車体はコンパクト。シート高は815mmですが、シートの前方に向かって絞り込まれた形状によって足付き性は良好です。近年は欧州車でも、こういう部分に小柄なライダーへの配慮が感じられるようになっています。
タンクの前後長は短めで、その分横に張り出したようなデザインとなっています。前気味の位置に着座できるので、車体の重心に近い場所に乗ることができ、車体との一体感が高いライディングポジションです。
ハンドルはネイキッドマシンらしいバーハンドルですが、高さは抑えられていて前傾気味の乗車姿勢になります。スポーツネイキッドらしい乗車姿勢でフロントに荷重しやすいポジションですが、長時間のツーリングでは休憩を早めに取った方がいいかもしれません。
エンジンの出力は扱いやすく、それでいてパワフル。270°クランクを採用しているので、低回転域からトラクション性能が良く、しっかりと路面を掴んでいる感触を伝えながら車体を加速させてくれます。そのまま高回転域までフラットに伸びる特性なので、緊張感なく扱えますが、いつの間にか結構な速度に達していたりするので市街地などでは注意が必要なほどです。
サスペンションがアップグレードされ、軽量なホイールを装備したこともあって、ハンドリングは軽快。コンパクトでライダーとの一体感が高い車体もあり、交差点を曲がるだけでも上質なマシンであることが伝わってきます。ワインディングでは、車体が意図した通りに動いてくれるので、とても楽しいマシンに仕上がっています。ゆっくり流しても気持ち良く、少しずつペースを上げるとさらに楽しくなってくるという稀有なマシン。大型バイクに初めて乗るというビギナーから、スポーツライディングを楽しみたいベテランまで、幅広いライダーにライディングの楽しさを味わわせてくれます。若い頃にスポーツマシンに乗っていたというリターンライダーにはピッタリと言えるでしょう。
BMWの中では地味な存在と書きましたが、多くのライダーに一度は体験してもらいたいと思える完成度。乾燥重量は199kgという軽快な車体とハンドリングに、魅了されるファンは少なくないはずです。
■SPEC
BMW「F900R」
サイズ:2140×820×1130mm
重量:212kg
シート高:690mm
エンジン:895cc水冷2気筒DOHC
最高出力:105PS/8000rpm
最大トルク:93Nm/6750rpm
>> BMW「F900R」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/690857/
- Source:&GP
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