【“いまどき”アウトドアシューズ解体新書】
アウトドアフィールドだけでなく街中まで、今や人々の足元に欠かせない存在となったアウトドアシューズ。その中でも誰もが1度は目にしたことがあるであろう、Salomon(サロモン)「XA PRO 3D」、MERRELL(メレル)「JUNGLE MOC(ジャングル モック)」、KEEN(キーン)「JASPER(ジャスパー)」の3モデル。
次々と新しいテクノロジーを持ったシューズが登場する中、なぜこれらのモデルは長年にわたって愛され続けているのでしょうか。開発秘話やシューズ作りに込めた熱い思いから名作たちの人気の理由を紐解いていきます。
■ロングセラーモデルのルーツと開発背景
▲アメアスポーツジャパン・サロモン事業部 鰐渕さん
初代モデルが2002年に発売されたサロモンの定番「XA PRO 3D V9」(2万2000円)は、現在でこそ“アウトドアアクティビティシューズ”として広く認知されていますが、そのルーツは少し異なるそうです。アメアスポーツジャパン・サロモン事業部の鰐渕さんは開発当時をこう振り返ります。
「名前が『XA PRO 3D V9』ですけど、“XA”が“クロスアドベンチャー”という意味なんですよ。トレイルランニングやマウンテンランニングと呼ばれるようになりましたが、それは割と近年からの話です。なので当時のシューズは山を背景としたアクティビティシューズだったんです」
一昔前の登山の文脈の中で開発された同モデルはテクノロジーの兼ね合いもあり、当時は“オールラウンドシューズ”という立ち位置で作られていました。「今の認識としても登山系の方が多いと思います。でも、どちらかというとガチガチの登山シーンというよりも、動きやすさやクイックな反応が生きるトレイルが主戦場ですね」(鰐渕さん)。
▲丸紅コンシューマーリンク・メレル事業部 田中祐介さん
一方、全く異なるアプローチでカテゴリーを切り拓いたのがメレル。丸紅コンシューマーリンク・メレル事業部の田中祐介さんは「ジャングル モック」(1万5400円)の開発背景について、「カテゴリーでいうと“アフタースポーツシューズ”として開発されたアイテムで、“行動後に履くシューズ”ですね」と語る。
今でこそリカバリーや体を休めるといった意味合いが定着していますが、「ジャングル モック」が発売された1998年当時はその手のシューズが少なく、新しいカテゴリーとして切り開いていくために作った靴なのだと言います。 「アウトドアアクティビティ前のアプローチシューズとして愛用される人も多い印象です。当たり前ではありますが、使われ方は消費者に大きく委ねていた部分があって。足をすごくリラックスさせてあげる、もしくは解放する。こういうコンセプトで誕生したというのが『ジャングル モック』なんです」(田中さん)。
▲キーン・ジャパン合同会社 青木泰裕さん
キーン・ジャパン合同会社の青木泰裕さんは、「ジャスパー」(1万6280円)を始めとしたキーンの靴作りの根底には創業モデル「ニューポート」の存在があると話します。
「『サンダルはつま先を守ることができるだろうか』という疑問のもとに誕生した創業モデル『ニューポート』の存在があります。つま先をしっかり保護しつつ、かかとの高いフィット感を両立させたこのサンダルの快適な履き心地は、現在のキーンのシューズにも受け継がれるDNAとなっています」
その要素をあらゆるシーンへ展開し、アクティビティの前後やキャンプなどでも使用しやすいシューズを作ろうというコンセプトから2008年に生まれたのが「ジャスパー」です。本格的なクライミングシューズの顔つきと、リラックスして履けるキャンプモックの利便性を掛け合わせることで誕生したのだといいます。
■なぜ長く愛され、選ばれ続けるのか
▲サロモン「XA PRO 3D V9 GORE-TEX」
数あるシューズの中で、なぜ彼らは選ばれ続けるのでしょうか。サロモン「XA PRO 3D V9」の人気の理由について、鰐渕さんは意外なポイントを挙げます。
「選ばれる理由ってカラーリングだったりすることが多いんですよね。トレッキングシューズはカラフルだったりアースカラーベースでまとまったシューズがあまり多くはないと思います。そういう意味ではシンプルに足映えがするので、だから登山系でも選んで頂ける方が多いのかなと思っています」
機能面においてもクイックレースなどを取り入れており、履きやすさという強みがあります。さらに、大きな転機となったのはUL(ウルトラライト)のトレンドだったそうです。「ULがトレンドに入ったタイミングで全体的にアイテムの傾向や選ばれる物に変化が出てきたんです。シューズも例に漏れず、今までミッドカットの非常に硬いシューズを使われていたのが、もう少し柔らかいローカットが多くなって。ありがたいことに『XA PRO 3D V9』がその第一人者のようなポジンションとして使っていただくことが増えて、それは1番大きいかもしれませんね」(鰐渕さん)。
▲メレル「ジャングル モック」
メレルの田中さんは、「ジャングル モック」が選ばれる最大の理由を「1番はやっぱり履き心地」だと断言します。
「玄関から出ていく時に『どの靴を履こうかな』と、悩むヒマもないような時に、サッと履けてしまう、履いてしまう。そうさせてしまうような履き心地に尽きます」
ユーザーからは「足の裏に吸い付くような感覚」、「靴紐がないのに走れちゃう靴」と評価され、特に子供が小さいパパママ層から本当に大きな声をいただいているそうです。「履いた瞬間から靴ずれしたことない」という声が寄せられるほど馴染みやすいのは、他で考えると奇跡的だと田中さんは語ります。アッパーにスエードを使用した落ち着いたビジュアルや、履き始めからすんなりと履き回しができる点も推しポイントとのこと。
▼キーン「ジャスパー」
▲キーン「ジャスパー」
一方でキーンの「ジャスパー」には、少し意外なエピソードがあります。誕生した本国アメリカでは、わずか数年で1度廃盤になってしまった過去があるのです。しかし日本ではその独自の魅力が支持されて人気に火がつき、現在では“キーン=「ジャスパー」”になるほどの定番モデルへと成長したという経緯が。青木さんはその魅力を「『ニューポート』に通ずるリラックスして履けるラスト(木型)や脱ぎ履きのラクさと、ルックスのギャップが長く選ばれている理由ですね」と分析。さらにその独特の履き心地の秘密は独自のソール構造にあるといいます。
「『ジャスパー』はミッドソールがない分ミニマルな履き心地と思われるかもしれませんが、フットベッドという中敷きに厚みとクッション性をもたせることでミッドソール代わりにしています。この特殊な構造が柔らかすぎず、でも地面からの突き上げのないちょうどいい履き心地に繋がっているんです。その部分もご愛用いただいている理由の1つかなと感じています」(青木さん)
■変わらないものと、アップデートされる機能
▲サロモン「XA PRO」
長く愛される名作には、変わらない信念と時代に合わせた進化の共存があります。サロモンの鰐渕さんは、「テクノロジーはやはり進化していますよね」と語ります。
「デザインベースなどは継承しつつもアウトソールやラグのパターンを変えています。あとシャーシのデザインや形状を変えていたり。前の代のシューズを踏襲しながらも少しずつアップデートされて9代目ですが、変わらないのはセンシフィットと言われるサイドのライン。シューレースを締めると連動してアッパー全体を包み上げるというデザインとなっており、これがうちのアイコンテクノロジーの1つとなっています。」
初代からずっと続いているこのラインこそが、見た目が変わらないポイントなのです。

対照的に、メレルの「ジャングル モック」は1998年の発売時からデザインの型が全く変わっていません。カラーバリエーションの追加はあるものの、型自体の変更はなし。時代とともに製造工場を変えながらも、ただし、その“良さ”をキープする努力を惜しみません。
「製造工場などは時代とともに変えなきゃいけないこともあって何回か変えています。もちろん、基本的には工場自体もなるべく安定させてしっかりたくさん作ってその靴の良さをキープしていますが、どうしても細かい違いが出てしまうときもあります。すごいのが10年20年履いているお客様から『かかとの高さが少し違うのではないか?』と単品不良でご指摘いただくことがあって。すごく勉強になるんですけど、それだけご愛用いただいてるわけなので、改めてしっかり向き合っていくべきアイテムなんだなぁと実感しています」と田中さんは真摯に語ります。

キーンの青木さんによれば、「ジャスパー」のオリジナルモデルについても、優秀なラスト(木型)であるため発売から変更は加えていないとのこと。カラバリや素材、アッパーのアクセントでシーズンごとの変化を楽しませつつ、その代わりに“アウトドアスニーカー”の元祖である「ジャスパー」をベースに、他モデルとして多用途展開を行っています。
「例えば『ジャスパー ザイオニック』(2万900円)に関してはこの顔のまま本当に山(ハイキングなど)へ行きたいよねという人向けですね。スニーカーの要素も残しつつラギッドなアウトソールパターンやラバーのレシピ(配合)にしています」
また、形は似ていつつも顔に少し変化をつけた次世代モデル「ジャスパー スリー」(1万9800円)も登場。これまでアウトソール+インソールの構成だった「ジャスパー」にミッドソールを追加したもの。履き心地にも非常にこだわりを持って作ったものになっています。
* * *
今回紹介した3モデルのルーツや人気の理由を振り返ると、単なる流行りではなくユーザーの足元を支え続ける確固たる機能とコンセプトがあることがわかります。長く愛される名作には変わらない信念と、時代のニーズに合わせた着実なアップデートの両立がありました。次にアウトドアシューズを選ぶ際はこうした背景にあるストーリーにも思いを馳せながら、自分のライフスタイルに寄り添う1足を見つけてみてはいかがでしょうか。
<取材・文/山口健壱、円道秀和(GoodsPress Web編集部) 協力/サロモン・メレル・キーン>
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/729805/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web
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