保険料を“わりかん”するP2P保険が日本で開始、中国ではアリババの相互宝が加入者1億人超え

インターネットを通じて保険の契約者同士がリスクをシェアし、誰かにもしものことが起こった際にはみんなでわりかんで支える——。グローバルではすでにいくつもサービス化されている「P2P保険」が、日本でもついに実現するようだ。

インシュアテック(保険テック)スタートアップのjustInCaseは1月28日、P2P型の「わりかん保険」の販売を始めることを明らかにした。同社では以下の8社と協業が決定したことを発表。自社およびパートナー企業にて順次取り扱いを開始するという。

なお数社はjustInCaseが昨年12月に発表した約10億円のシリーズAラウンドにも投資家として参加している。

  • アドバンスクリエイト
  • SBI日本少額短期保険
  • クラウドワークス
  • 新生銀行
  • チューリッヒ少額短期保険
  • ディー・エヌ・エー
  • 日本生命保険
  • LINE Financial

justInCaseが今回提供するわりかん保険は、20〜74歳が加入できる(被保険者)がん保険だ。過去5年以内にがん(悪性新生物、上皮内がん)と診察されたり、がんで入院したり、がんで手術を受けたりしたことがない人が対象。オンライン上で保険に申し込める。

各ユーザーは20〜39歳、40〜54歳、55〜74歳といったように年齢に応じてグループを形成し、誰かががんになった場合には他のメンバーで保険料をわりかんして支払う。

がん診断時の一時金は一律80万円。たとえば契約者数が1万人でがんと診断された人が2人いた場合、保険金の合計金額160万円にjustInCaseが受け取る管理費を加えた金額が保険料となり、残りの9998人でわりかんする。

justInCase代表の畑氏によると保険料に占める管理費の割合は加入者数によって変動するそう。1万人未満が35%、1万人以上2万人未満が30%、2万人以上が25%と多くの人が加入するほど管理費の割合が減る仕組み。先ほどの例の場合は保険金合計額の30%が管理費となり、保険料として1人あたり229円を負担することになる。

「160万円 ÷ 1.3 ÷(1万人 – 2人)= 229円」が保険料として事後請求される

justInCaseのわりかん保険は“あと払い”を採用しているため保険料は毎月変動する。みんなが健康で誰もがんにならなければ保険料はゼロだ。1ヶ月の保険料には上限金額が設定されているため、たまたま同じ時期に複数人ががんと診断されてしまった場合にも、上限額以上の負担を強いられることはない。

これらの仕組みによって既存のがん保険よりも低価格を実現できるのも利点の1つではあるが、畑氏は大きな特徴として「透明性」と「知らない人とも助け合いができる構造」を挙げる。

透明性に関しては収益の源泉(管理費)を毎月クリアにしている点が従来の保険と異なる部分。「保険会社だけがすごく儲かっているのでは?」と不信感を持っている人にとっては、その裏側が透明化されていることで少しは不安が和らぐだろう。

またわりかん保険では、先月がんになった人が何人いて、どういう人に自分たちのお金が使われたかも開示される。原則的に年齢や性別、病気の種類などごく一部の情報のみになる予定だが「保険料が誰かを助けることに使われたことが実感できる」体験が重要だという。この点はクラウドファンディングにも似た側面があるかもしれない。

冒頭でも触れた通り、P2P保険は海外ではすでにいくつもプレイヤーが出てきている状況。特に近年は中国が盛り上がってきていて、アリババ(アント・ファイナンシャル)の「相互宝」はリリース約1年で加入者数が1億人を突破している。

日本においては前例がなかったものの、justInCaseでは昨年7月に「規制のサンドボックス制度」の認定を取得。P2P保険をがん保険の領域から国内展開できるチャンスを得て、今回のローンチにこぎ着けた。

まずはパートナー企業ともタッグを組みながらがん保険の普及を目指すが、ゆくゆくはこのモデルを別の領域へ広げていくことも視野に入れている。

今回協業を発表した企業は金融系の大手企業からネット系ベンチャーまで幅広い。たとえばLINEと「LINE Score」を連携させた保険の仕組みを作ったり、クラウドワークスとフリーランス向けの保険商品を企画したりといったように、各社のサービス特性・事業アセットを踏まえた取り組みや新たな保険商品が生まれる可能性もありそうだ。


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