AR(拡張現実)ヘッドセットメーカーのMagic Leap(マジック・リープ)は、物理法則と格闘し商品の展開に失敗した。そしていま、 身売り先を探しているが、Bloomberg(ブルームバーグ)のEd Hammond(エド・ハモンド)氏の記事によると、Facebook(フェイスブック)そしてJohnson&Johnson(ジョンソン&ジョンソン)との話し合いは実を結ばなかった。
Magic Leapはこれまでに20億ドル(約2100億円)を調達し、バリュエーションは一時60億〜80億ドル(約6300〜8400億円)あったが、「もし商品の発売を追求したら100億ドル(約1兆円)超のバリュエーションになっていたかもしれない」とハモンド氏は買いている。この額は馬鹿げている。プライドの高い企業が、たとえ実際の買収額がこれより低いものになるとしても、買収への関心を引き寄せるという望みをかけて戦略的にリークしたのかもしれないというような数字だ。
スタートアップは上場する時に、バリュエーションを“細切れ”にされる。そして経済全体がコロナウイルスっで弱っている。ARは公共の場を避ける人々にとってVRよりもそう面白くは映っていないようだ。中古のARヘッドセットをデモで人々の顔に装着してもらうのは、未来が見通せない中で難しいことだろう。
高価で、装着するのが奇妙なガジェットであるARアイウェアの、消費者を引きつけるような使用方法を誰も考えついていない。スマホですでにARを利用でき、しかもスマホではARヘッドセットができないセルフィー撮影やビデオチャットができる。私は昨年サンダンス映画祭でMagic Leapを試したが、かさばるハードウェアにぼんやりとした投影、狭い視野と、笑えるほどにひどい体験だった。
Apple(アップル)とFacebookがiPhone販売とNews Feedの売上を、より良いコンシューマーヘッドセット開発につぎ込んでいる。ARヘッドセットが広く受け入れられるようになるまで10年かかるとSnapchat(スナップチャット)のCEO、Evan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)氏は考え、同社はそれまでのつなぎとなるメガネをつくった。Microsoft(マイクロソフト)のようなARライバルの製品ではより良いエンタープライズ体験ができ、接続もよく、流通も良い。企業向けARスタートアップのDaqriは廃業した。
Magic LeapのCEOは初年に2300ドル(約24万円)のヘッドセットを100万台売ろうと考えていたが、その後に販売予想を10万台に修正した。しかしThe InformationのAlex Heath(アレックス・ヒース)氏の記事によると、最初の6カ月で売れたのはたったの6000台だった。2014年のMagic Leapの1400万ドルの資金調達をGoogleがリードしたにもかかわらず、AlphabetのCEO、Sundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏はMagic Leapの役員を降りた。Business InsiderのSteven Tweedie(スティーブン・トゥウィーディー)氏とKevin Webb(ケビン・ウェブ)氏は、CFOのScott Henry(スコット・ヘンリー)氏とクリエイティブ戦略のSVP、John Gaeta(ジョン・ガエタ)氏がMagic Leapを去ったと報道した。そして同社は従業員を何十人も解雇した。同社はまた昨年Microsoftとの5億ドル(約530億円)の契約も失った。Apple、Google、そしてFacebookのCEOたちは買収について話し合うために2016年にMagic Leapの本部に足を運んだが、いずれも交渉には至らなかった。
ARアイウェアは未来の一部なのだろうか? おそらくそうだろう。そしてMagic Leapは価値があるのか? おそらく、幾分そうだろう。効率に執着するマーケットに何億ドルもの金をつぎ込むというのは同社にとって早すぎた。そして額としては少なすぎた。100億ドルという売却価格をつけるには、遠い将来の成功につながる、他社が真似できないような才能とテクノロジーをMagic Leapが持っていると、世界でも有数の大企業に確信させる必要がある。
巨額の買収になじみのあるFacebookがMagic Leapを買収しようとはしなかったという事実は何かを物語っている。これは何億ものユーザーのためのプロダクトでもなければ、急速に売上高を押し上げるものでもない。サイコロ博打のようなビジョンとタイミングによるギャンブルだ。Magic Leapが人々に使ってみたいと思わせるような、飛んでいるクジラや部屋の中の恐竜といったレンダリングをいつ現実のものにできるのかは不透明だ。
金額的なもの、そしてARヘッドセット実現のための幅広い需要が出てくるまでにまだ時間があることから、人材の獲得や開発時間の短縮を目的とした買収が考えられる。もし誰かがMagic Leapをかなりの額で買収するなら、すぐ帳消しにするかもしれない。
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(翻訳:Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/03/13/2020-03-11-magic-steep/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Josh Constine
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