成功の原点はToutia、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その1)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第2部第3部も併せてチェックしてほしい。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNS企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

過去4年間で世界で最も勢いがあるアプリ「TikTok」。AirPodsやMeme(ミーム)文化が爆発的に伸びていた流れに乗っかったのは確かだが、それ以外にも自社のUI判断やグロース戦略でここまで成長できた。そして何よりもソーシャルグラフが必要のないSNS、コンテンツベースのアルゴリズムを作ったのは過去に存在しなかったこと。そんなTikTokの裏で、運営元であるByteDance(バイトダンス)の最初のサービスであるToutiaoから実際にTikTokのインフラが作られていた。

今ではByteDanceの時価総額が1000億〜1400億ドルになっていると言われている。

2017年11月にBytedanceは当時米国で次世代SNSだったMusical.lyを10億ドルで買収。2018年8月にMusical.lyとTikTokを1つのアプリとして統合。そのすぐ後に30億ドル調達して時価総額が750億ドルまで上がった。当時はほとんどの人から高すぎる時価総額と言われていたが、いま見ると間違ってはなかった。

ByteDanceの2019年の数字を見ると160億〜200億ドルの売上で、2018年から2倍になっている。そして中国のデジタル広告市場のシェアが22%(2017年にはたったの5%)。

引用:Technode

しかもこの160億~200億ドルの売上の5%しかTikTokから来ていない。TikTokはこれから広告プラットフォームとして伸びるので、今後の成長率が加速する可能性もある。今年で創業8年目のByteDanceはTencent(テンセント)、Twitter、Facebook、Snap、Googleの8年目よりも圧倒的に売上が伸びている。

それでは、ByteDanceの凄さの始まりであるToutiao、TikTokなどの他社サービスへの拡大、Musical.lyを買収して米国市場へ参入、そして今後の展望について紹介していこう。

今回の記事の多くはGelt VCで働くTurner Novak(ターナー・ノバック)氏のブログ「The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance」から引用している。興味がある読者はぜひ彼のメルマガや記事をチェックしてほしい。もちろん本記事は、ノバック氏から許諾を得たうえで翻訳・公開している

ByteDanceの初プロダクトはToutiao(今日頭条)

ByteDanceが作った最初のプロダクトは2012年8月にリリースしたJinri Toutiao(ジンリー・トウティァオ)。類似サービスとしては、Facebookの友達のコンテンツがないニュースフィードが一番近いかもしれない。同社はJinri Toutiaoでハイパーターゲティングしたコンテンツや広告をユーザーに提供していた。2018年中旬の2億人DAUがピークで、1ユーザーは1日平均74分使っていた。これはFacebook、Instagram、Snapchatの約2倍の利用時間だ。

引用:Y Combinator

ローンチと初期グロース
創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏は2008年にアイデアを思いついたらしい。当時はMeituan創業者である王興(Wang Xing)氏と一緒にSNSサイトHainei.comを運用していた。Hainei後も張氏はいくつかの会社を作った。彼の経歴を見ると、OTAサイトのKuxanのCTO、Twitter類似サービスfanfouのCEO、不動産リスティングポートあるサイトの99FangのCEOなど。そして大学生時代でもエンタープライズ向けソフトウェアを作り、その後にMicrosoft Chinaで勤務していた。

Toutaioローンチ時の中国のスマホニュース市場は、国がコントロールしていたSinaやSohuなどのメディアやポータルサイトしかなく、デスクトップ向けの長めのテキストコンテンツが多かった。Toutiaoの初期プロダクトは中国のウェブメディアのひたすらクローリングしてスマホ用にフォーマットし直してコンテンツを提供していた。一時期コンテンツの広告も自社広告に変更するまでのこともやっていたらしい。

初期のToutiaoのグロースは、中国版TwitterであるWeiboのインフルエンサーが広げてくれた。Toutiao自体はかなりアグレッシブなプッシュ通知やユーザーにコンテンツ共有を勧めたりした。その結果、90日で1000万ユーザーまで成長できた。新規ユーザーがSinaもしくはWeiboアカウントでログインした際にはまずToutiaoはそのユーザーの趣味・興味あるものや友達の情報をスクレーピングした。そしてユーザーの利用データ(どうタップやスワイプをしたのか、どのタイミングで戸惑ったのか、記事のかける時間、コメント、場所、時間など)をトラッキングして、そのデータを基にユーザーに合わせたコンテンツを提供。これは今のTikTokにも存在する手法だ。

そしてコンテンツのタイトル、カバー写真、記事の長さまでかえるようにした。さまざまな変更をした結果、80%と恐るべし読了率を得られて、それがユーザーの生涯のリテンションレート(Lifetime Retention Rate)を45%という圧倒的に高い数字を初期に達成できた。しかも編集チームを使わず、完全自動化していたため、コストを抑えながら良いプロダクトを作ることができた。

批判とサービスの進化
もちろん多くの大手メディア企業はToutiaoが嫌いでToutiaoを常に訴訟バトルの間に入っていた。TikTokでも起きているが、Toutaio記事の引用元がわからなかったケースが多々あった。さらに記事のフォーマットをToutiaoが変更した時にアプリがクラッシュした。最終的にはToutiaoはユーザーに他社サイトへの誘導を許したが、多くのメディアのほとんどのトラフィックがToutiaoから来ていたのは間違いない。2014年にWeiboのトラフィックが落ち始めた際に、Toutiaoの1億ドルのシリーズCラウンドに参加してトラフィックを流してもらうように約束した。

そしてToutiaoは出版社やキュレーターに直接Toutiaoアプリでコンテンツ制作を依頼して、代わりレベニューシェアを渡した。うまく行き始めた瞬間にToutiaoはすぐにパートナー制作記事へシフトし始めた。2017年には120万人の外部クリエイターと提携していた。最終的にTencent、Alibaba、Baidu、その他スタートアップは中国で似たニュースプロダクトをリリースするが、Toutiaoでうまくマネタイズできていたクリエイターがほかのプラットフォームへ変更する意味がなかった。実際にToutiaoのビジネスモデルはかなりハイマージンで、2015年では2億2000万ドルの売上で黒字化できていたと言われている。

そして徐々にToutiaoは、記事にコメント機能、フィードに写真や就職情報、フィットネス・音楽・ポッドキャストアプリを開けられるボタン、生配信番組、インタラクティブなQ&Aチャネル、そしてNetflix類似の映画視聴プラットフォームXiguaを追加。2018年には他の中国テック企業と同じようにミニプログラムをリリース。第三者にToutiao上でアプリを開発してリリースできるようにした。レストラン、スーパー、薬局のデリバリーアプリが開発された。Toutiao内でも常に新しいアプリを開発して市場のリアクションを試していた。2カ月以内でパフォーマンスがなければシャットダウンするようにしていた。

そしてToutiaoはアプリ内に動画を入れるように注力していた。Facebookと同じように動画フィードの広告を入れられるようになった。初期はスマホ広告に投資し始めていた大手ブランドと交渉していた。ブランド側としては、BaiduやTencentよりToutiaoの広告プロダクトの方がハイパーターゲティングができるため、主要客により簡単いリーチできると思い締結した。そのターゲティングのパフォーマンスが高かったからこそ、2019年7月時点のMeituanの広告費用の85%はByteDanceサービス(Toutiao、Douyin)で使っていた。

Toutiaoはアルゴリズムとディトリビューション基盤とした新規サービス
Toutiaoのフォロワーを使わず、ユーザーの行動をベースにコンテンツ・広告をレコメンドするエンジン、そしてToutiaoによって多くの中国人へリーチできる配信プラットフォームを活用して2016年9月にDouyin(初期はA.meと呼ばれていた)、2017年にはTikTokの2つのショートフォーム動画アプリをリリース。動画アプリをリリースすることによってToutiaoの動画広告在庫が増えるのと、ユーザー層が男性に偏っていたのを変えて女性ユーザーへリーチできるだけでなく、EC要素を入れられるアプリとなった。

それ以外に重要点としては2018年にToutiaoがピークに達していたことをByteDance側も理解していたこと。今後の成長のためには、別のプロダクトから来なければいけないことを理解していた。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019(TikTok)
Songs Are Becoming Hits on TikTok Before They’re Even Released(Rolling Stone)
Why Fintech May Be the Future of Ridehailing for Grab, Uber(Fortune)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
ByteDance’s move into gaming is already paying off(Abacus)
四处挖人,字节跳动横扫教育圈(36Kr)
・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
TikTok’s Videos Are Goofy. Its Strategy to Dominate Social Media Is Serious(The Wall Street Journal)
TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)


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